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雪と恋と約束と・・・

作者: 藍猫

初めての恋愛系小説です。。。






とある雪山には女が居る。


それは白い着物を身に纏い、白い髪をたなびかせ”白”の中を彷徨う。


吹雪を起こすのも雪崩も起こすのも女の自由。


全ての”白”が女に従い踊り狂う。


白から生まれ、白へと還る女―――




                雪女







* * *



人間を見つけた。



初めて見た子供の人間はゴーグルをつけ、ニットを深く被っており、雪に・・・埋もれていた。

苦しそうに眉を顰めており、ピクリとも動かない。


「・・・大丈夫?」


返事はない。


・・・助けるべきかな・・・?


何時もなら思わない様な事を思う。

人間を助けようとしているなんて・・・馬鹿げてる。

なのに私はその人間を助けていた。

雪から引っ張り出し、自分の家へと連れて行く。

人間は6歳くらいで、私と同じような白い肌をしていた。


「・・・人間なのに・・・珍しい・・・。」


私は子供の帽子を取り、ゴーグルも取る。


「・・・あ。」


頬が紅く染められるのを感じた。

子供は普通に横たわっているだけなのに、私には煌めいている様に感じた。


私の心を子供は奪った・・・


それが私の・・・

切なく、儚い恋と約束の始まりでした・・・。






* * *



少年を拾い一週間が経った。


少年を拾った少女は白い着物を着、腰までの長い黒髪(・・)、そして輝く蒼い瞳の美しい6歳くらいの少女だった。

誰もが振り向く様なその美貌は人並み外れていた。まるでこの世界から外れた存在の様に。


一方、拾われた少年も6歳くらいの美しい子どもだった。


少女の名は『紗羅(しゃら)』。この雪山の唯一の『雪女(・・)』だ。

希少価値である雪女は人間とされず、殆どが殺され、売られている。

紗羅は唯一のこの山での生き残り。

長命族である雪女には血の繋がり、家族は存在しない。

雪女は雪から生まれ、雪へと還る種族だからだ。つまり、紗羅を除く他の雪女達は既に殺され雪に還ったか、もしくは売られたかのどちらかになる。


だから雪から生まれ、雪に還る雪女は伝説に残るように全てが白い。

肌も、服も、()も。


だが、紗羅の髪は黒い。


その理由は謎だ。ただ問題が一つあった。

雪女には固まって移動しながら生活する習性があるが、違う種族を嫌悪する大きな問題があるのだ。

髪の色の違う紗羅は当然嫌悪され、4歳までは世話をされたが4歳になると同時に捨てられた。


たった一人、人間の近寄れないような所で留まった事で人間に害されなかったのは良かったことなのかも知れない。それでも紗羅はまだ子どもだった。まともな生活が出来るようになるまでに半月、使える様な捨てられた家を見つけるのにもう半年を費やした。


雪女の頭脳の成長速度は人間の遥か数倍。紗羅は他の雪女の子どもよりもその成長が速く、4歳のときには既に高校生並みの考えが出来るようになるほどになっていた。


だから紗羅は捨てられた事も、何故捨てられたのか、どう生きていけばいいのか という事を全て理解していた。


そして・・・雪女は気高く美しく、全てが白い生き物だが、中身までは真っ白ではないということも。


その雪女達が相当に嫌がっていた人間も穢れている、と。



だが、始めて見た少年は綺麗だった。

見ただけで、外見だけでなく中身も綺麗だと分るほどに。


そして、その少年なしでは私はきっと生きていけないという事も私は気付いていた・・・。


「・・・私を一人に、しないで・・・。」


その願いは誰にも聞かれることなく消えていく。


「・・・でも、あなたは人間・・・帰る場所がある・・・。」


そう。少年は人間。雪女とは違い、血の繋がりがある家族(なかま)がいる。

私が縛っていい存在じゃない。


分かってる・・・。


分かっているのに・・・。


ポツリ


床に涙が落ちる。


だが、溢れ出てくるその涙は止まらない。


ポタ・・・ポタ・・・ポタ



「・・・ないてるの?」


「!」


細く目を開いた少年が優しく頬を撫でた。


「・・・大丈夫だよ・・・。ぼくがここにいるよ・・・?」


暖かい手を掴み私は更に涙を流す。


少年は暖かく微笑み、私を見つめる。



あぁ・・・私はこの人と会うために生まれたんだ。


この(ぬく)もりを、知るために・・・。


紗羅は無意識に凍らせていた心の氷が溶けていくのを感じた。



「・・・ねぇ・・・いつか、私の傍に来てくれる・・・?」


あなたを()、縛ることは出来ない。


いつか・・・自分の意思で決めて欲しい。


でも、今は約束させて? 私の心を支えるために・・・。


「・・・うん。きっと・・・来てあげる。だから、君も・・・ぼくの・・・そばに、いて?」


まだ寒さのせいで上手く微笑めないのか少年はぎこちなく笑う。


「・・・いつか・・・きっと・・・!」






それは約束。





人間の少年と雪女の少女の間に出来た小さな出会いの約束。





たとえ叶わない恋でも、その約束を胸に少女と少年は生きる。






そして二人は再び出会う――――



約束を胸に、雪山の主と恐れられる様になる紗羅と、記憶を失い、冒険者として生きる少年・・・。



二人の未来の行く末を知るのは誰もいない・・・。






























読んでくださってありがとうございました!


初めての恋愛系でしたが・・・どうでしたか?

感想などお待ちしてます!




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― 新着の感想 ―
[良い点] 世界観が美しいな~ あと表現の仕方がひねってあって好き~ [一言] 続編ないの~?? ラブファンタジー的な感じで 男の子が勇者?になって雪女に出会って いつしか記憶取り戻してハッピーエン…
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