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学校のマドンナ


「……う〜ん」


目を覚ます。


昨日は確か、帰ってきて夕飯を食べ、風呂に入って、そのまま倒れるように寝たはずだ。


枕元のスマホを手に取り、時間を確認する。


8時45分。


――まずい。


一限は9時からだ。完全に寝坊している。


俺は跳ね起き、そのまま一階のリビングへ駆け下りた。


机の上には、父が作ってくれた昼の弁当が置いてある。


ありがたいが、今は立ち止まってる暇はない。


トースターにパンを突っ込み、その間に寝癖を無理やり直す。

焼き上がったパンを口にくわえ、弁当をひっつかんで家を飛び出した。


歯磨きは……学校でいい。


全力で走り出して一分ほど経ったところで、ふと気づく。


――あれ?


瞬間移動、使えばよくないか?


だが、絶対に人目につくわけにはいかない。


どこか……バレない場所は――。


思い出した。


もうすぐ取り壊される旧校舎。

その中のトイレは、ほとんど誰も使わない。


人影のない路地に入り、旧校舎を強く思い浮かべる。


次の瞬間、景色が切り替わった。


成功。


旧校舎から裏手へ回り、塀を越えて外に出る。

そこから正門のほうへ遠回りし、何食わぬ顔で登校した。


……間に合った。


心の中で、サンタさんにそっと感謝する。


トイレで歯を磨き、窓際の自分の席に座る。


俺はクラスでぼっちだ。

転校が多すぎて、友達の作り方なんてとっくに忘れてしまった。


いつも通り、外をぼんやり眺めていると――。


「ねぇねぇ」


突然、耳元で囁かれる。


びくっと肩が跳ね、慌てて振り向いた。


そこに立っていたのは――

才色兼備という言葉が一番似合う、この高校のマドンナ・高梨聖。


いや、高校どころじゃない。

高校生ながらグラビアで表紙を飾り、モデルとしても注目されている芸能人だ。


クラスがざわつかないのが不思議なくらいの存在。


後光が差しているように見えて、思わず目を逸らす。


「な、なんですか? どうしましたか?」


言葉遣いは変じゃないか。

失礼じゃないか。

頭の中が一気にパニックになる。


「後で、話があるの。放課後、旧校舎の裏に来てくれない?」


「え……あ、はい。わかりました」


告白か?

それとも恐喝か?


不安と期待が入り混じったまま、授業はまったく頭に入らず、気づけば放課後になっていた。


少し早足で、旧校舎の裏へ向かう。


そこには、高梨さんが一人で立っていた。


「早速なんだけど……」


彼女が口を開いた瞬間、心臓が跳ねる。


――来た。告白か?


「中村くんって、空、飛べるの?」


「……え?」


思考が止まる。


「な、なんで……何で知ってるんだ?」


否定も誤魔化しもできず、言葉がそのまま漏れていた。


「やっぱり。昨日の、夢じゃなかったんだ」


大きな瞳を見開き、彼女は本気で感動している。


――終わった。


クラスメイトに、しかも一軍の人気者に。


俺の“能力が使える”という秘密は、完全にバレてしまった。


「おーい、大丈夫?」


高梨さんは、にこっと笑いながら放心状態の俺に話しかけてくる。


「これ、誰にも言わないから」


その言葉に、背筋が凍る。


――その代わり、何を要求されるのだろうか。



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