No.7 推薦
「海斗の代わりにこっちで説明するよ。」
「ありがとうございます。」
彼方がそう返すと、風花は優しそうな笑顔をして見せた。
そしてすぐにその優しそうな顔は真面目そうな顔に変わった。
「まず確認だけど、無理やり連れてこられたんじゃないんだよね?」
「はい。そこは大丈夫です。」
「よかった。じゃあTalentでの仕事については知ってる?」
「よく海斗さんが話しているので。」
「うん。じゃあその仕事内容に同意のもと海斗についてきたってことでいいかな?」
「はい。」
その返事に、風花は安堵の表情を見せた。
きっとこの人は人情に篤い、いいトップなのだろう。
風花対して彼方はそんな印象を抱いた。
風花はまた優しそうな顔を見せ、そのまま話を続けた。
「ならいいや。来てくれてありがとう。」
「いえ、海斗さんの仕事に前から興味があっただけです。」
彼方がそういうと風花は酷く驚いたような顔をした。
「じゃあ、即決したの?」
「はい。」
「・・・へぇ。」
風花の表情はまた優しそうな表情に戻っている。
それなのに、彼方は風花が鋭い視線でこちらを見ているのを感じた。
責めるような感じではない。
どちらかというと、見極めるような、そんなイメージの視線だった。
風花が再度話し始めたときにはもう、そのような視線はなくなっていた。
「とりあえず、これからの流れから話せばいいかな?」
「いいんじゃないか?」
予想通り、海斗はすぐに持ち直したようで、彼方の真横の椅子に乱暴に腰を下ろした。
風花はそれを見て若干呆れながらもまた彼方の方を見て話し始めた。
「じゃあ、今後のことについて話すんだけど、まず彼方くんは海斗の推薦で入ることになってるんだ。」
「推薦ですか?」
「そう。それが面接をしない理由。海斗の信頼があるってことで。個人情報の裏取りも海斗にきっちりしてもらってるし。」
風花のその言葉に横目で海斗を見る。
海斗はその視線に気が付き、目を伏せた。
彼方は昨日の夜に、海斗の勧誘を受け、それに承諾した。
そこから裏取りを始めていたにしても、どうにも仕事が早すぎる。
考えられるのは、彼方の承諾を受けるずっと前から、その作業をしていたということだ。
そしてそれが意味するのは、海斗が前々から彼方をTalentに入れるつもりだったということである。
「あんまり海斗を責めないであげて。もし誘うならって、こっちが頼んだことだから。」
「責めてはいません。」
事実、責めてはいなかった。
ただ、前から考えていたのであれば、もっと前にその話を聞きたかったものである。
海斗としては、何か悩むことがあったのかもしれないが。
責めるにしても、先ほど風花がやっていたのでこちらからやることはないだろう。
「それで、海斗の直属の部下っていう立ち位置になる予定。ここまでで何か質問ある?」
何しろ大した説明もなくここに来ているため、知らないことが多い。
聞きたいことはたくさんあったが、とりあえずは風花の話を待とうと思い、特にはないと返した。




