No.5 鬼灯言葉
「お待たせしました。笹原彼方さん、でお間違いないですか?」
「はい。彼方です。」
「すみません。顔をよく見せてください。」
そう言って受付の人はカウンターから身を乗り出し、彼方の顔をじっくりと見始めた。
そして、何やらメモを取り、身を引いた。
「はい。ありがとうございました。」
「何か問題がありましたか?」
「いえ、私が彼方さんの顔を覚えるためのものですので、お気になさらず。」
そう言ってその人は手元のメモを閉じた。
今は機械で顔の判別ができるというのに、人の目というのは随分古臭いやり方である。
セキュリティ的に疑問を感じていると、その人は思い出したかのように彼方の方に向いた。
「すみません。名乗るのが遅れましたね。私はこのTalentの受付を担当しております。鬼灯言葉と申します。是非、下の名前で呼んでくださいね。」
「言葉さんですね。笹原彼方です。よろしくお願いします。」
「えぇ、よろしくお願いします。」
そう言って言葉は彼方に微笑んで見せた。
そのやり取りを見ていた海斗は一通りのやり取りが終わったのを見て、言葉に声を掛けた。
「なぁ、もう入っていいか?」
「はい。今開けますので。」
そう言って言葉が手元にあるボタンを押すと、自動ドアのように扉が開いた。
どうやら一つ目の扉とは違って、勝手に入ることができないようだ。
言葉にお礼を言って中に入っていった海斗の後に続き、彼方は海斗の後に続いて、お礼を言ってから中に入った。
中に入っても、外観同様にマンションと同じような造りになっていた。
海斗と彼方は真っすぐ、隅の方にあるエレベーターの方へ向かう。
エレベーターに乗り込み、海斗は最上階から一つ下の四階のボタンを押した。
「四階ですか?」
「おん。上層部のフロアなんだよ。」
「上層部?」
「後で話す。」
そう言った海斗は四階につくと左の突き当りにあるドアを、ノックもせずに開けた。
驚きつつ、海斗の後を追って靴のまま中に入る。
部屋の中は外観とは違い、プリンターやデスクトップ、そして大量なまでのファイルが収納されている本棚があり、少しおしゃれなオフィスになっていた。
その部屋には一人おり、その部屋の右奥にあるデスクにいたその人は、ドアの開く音に気が付いて彼方たちのいる方を見た。
「風花。戻ったぞ。」
「おかえり。早かったじゃん。」
海斗にそう話しかけながら、その人は席を立った。
白色の髪の毛に毛先が若緑色で、それと同じような色の瞳をしている。
どこか中性的で優しそうな見た目をしたその人は、彼方を見て温かく笑いかけた。
「話は海斗から聞いているよ。初めまして。」
「初めまして。笹原彼方といいます。」
「鳥月風花。Talentの・・・社長?リーダー?をやらせてもらってます。どうぞよろしく。」
その言葉に驚き固まる彼方に、風花は笑いながら手を差し出した。




