No.4 受付
「海斗さん!」
「おかえり。俺も今帰ってきたとこなんだけどさ。」
「職場ですか?」
「そ、事務作業と打ち合わせ終わらせてきた。あと、今日連れてくるって言ってきた。」
そう言いながら、海斗は持っている合鍵でドアを開けた。
「着替えてすぐ出れるか?昼ご飯はどっかで食おう。」
「はい。ラフな格好の方がいいですかね。」
「そうだな。いつもの格好がいいんじゃないか?」
「わかりました。」
彼方は自室に行き、いつものパーカーとズボンに着替えた。
財布しか入っていないバッグを掴み、その中にスマホを入れながら下に降りる。
海斗はそれを見て彼方に聞いた。
「鞄ってスマホの他になにか入ってる?」
「財布だけです。」
「要らない要らない。財布は置いてきな。」
「バッグは。」
「そっちは持っといて。」
そう言われ、財布を置いて家を出た。
Talentの事務所までは歩いて行くらしい。
海斗曰く、四十分と少し遠いそうだ。
一度、なぜ歩きなのかと聞いたことがある。
車だと色々面倒だし、血の匂いがするかもしれないのにバスなんて使えるわけがない。
そう海斗は言っていた。
適当な所で昼ご飯を食べ、またしばらく歩き、ついたのは町中によくあるような少し小さめのマンションのような建物だった。
思っていたような建物とはだいぶイメージが異なり、彼方は戸惑いながらもただ海斗の後を追って中に入った。
中に入ってすぐ受付のカウンターともう一つの扉があり、カウンターの中にいた人がこちらを見る。
茶い髪に深い緑色の目をしたその人はこちらを見るなり微笑んだ。
「海斗さん。お戻りですか。」
「あぁ。・・・はい、社員証。」
そう言いながら海斗はその人に一枚のカードを渡した。
どうやら入るときに必要らしい。
その人は社員証をあまり見ずに、海斗の方を見て質問した。
「それでは、名前と年齢をお願いします。」
「赤羽海斗。二十五。」
「・・・はい、大丈夫です。ありがとうございました。」
その人はやはり社員証をあまり見ないまま、海斗に社員証を返却した。
そして、次に彼方の方を見て言った。
「笹原彼方さんですね。お待ちしていましたよ。」
「はい。」
「なんだ。もう知ってんのか。」
「えぇ。風花さんから。」
そう言った受付の人は海斗を見ながら眉をひそめた。
「風花さん、文句言ってましたよ。急すぎるって。」
「今回のは別にいいだろ。前から話は出してたし、何か用意しなきゃいけないわけでもねーんだから。」
「風花さんに余計な迷惑をかけるなと言ってるんですよ。」
「それは悪かった。後で謝っとくよ。」
そう言って海斗はバツが悪そうな顔をした。
たぶん、彼方を連れてくる話のことなのだろう。
確かに午前そんな話をしてきたと言っていた。
彼方も昨日言われたばかりだったので、その気持ちはわかる。
海斗に同情する理由はないだろう。
受付のその人は深くため息を吐き、再び彼方の方を見た。




