No.19 相棒とは
風花は図を使いながら、メモを取っている人たちのペースを見ながら話をした。
風花の言っていたことをまとめると、今日から一か月は訓練期間。
道具の使い方を学んだり、簡単な仕事に同行したりして、Talentに慣れていくための期間である。
また、初層部同士の中を深めるための期間でもあるらしい。
本格的に仕事を始めるのはその後になるそうだ。
順調にいけば、の話になるが。
この期間も、一応準備期間としてお給料が出るそうだ。
一か月の様子を見て、それぞれに適した仕事が上層部の方から振り分けられる。
最初の方は、その仕事に直属の上司が同行するらしい。
彼方なら海斗が、真なら凛斗が同行するということだ。
そして仕事に慣れてきたら、自分たちだけで仕事に行くことになる。
大体、三から六か月はかかると風花は言っていた。
「これが大雑把な流れ。大丈夫そうかな?」
その問いに、質問は出なかった。
それを見て風花はホワイトボードの図をいったん消した。
「じゃあ次。この三日間で絶対にやってほしいことがあるんだ。」
そう言って風花はホワイトボードに『相棒』という字を書いて丸く囲んだ。
「この三日間で、皆には相棒を決めてもらいたい。」
「相棒、ですか?」
「そう。相棒。」
日和が若干困惑した声を出すと、風花は図に描き入れながら説明し始めた。
「相棒っていうのは、今後仕事を一緒にやっていくためのペアみたいなもの。バディって言い方もできるかな。Talentでは特別な事情がない限り、必ず相棒を作ってもらってる。基本任務には、相棒とセットで行ってもらうようにしてるんだ。」
「それはなんでですか?」
「こんな危ない仕事だからね。異常事態があったとき、一人にさせないようにしたいんだ。こっちが仕事の管理をしやすいっていうのもあるんだけど。」
そう言って、風花はペンを置いた。
「相棒は今後の仕事で大事になってくる。今後、止む負えない事情がない限り、相棒の変更はしない。三日間しかないけど、きっちり決めてね。質問ある?」
風花がそう言ったとき、はじめがすっと手を上げた。
「あの、相棒は何を基準に決めたらいいんでしょうか。」
「そこは自由にしていいよ。信頼できる、相性がいい、守りたい、勘。なんでもいい。相手も同意してくれるならね。でも、こいつとならやっていけそうだって思えないと難しいと思う。」
そう言うと風花は真剣な顔を緩めてにっこりと笑った。
「とは言っても、まだ会ったばっかりなわけだし、時間上げるから一旦みんなで話してみなよ。上層部は三十分くらい外出てるからさ。」
そう言って風花は本当に他の上層部の人たちと部屋を出て行った。
部屋に取り残された八人の間には、気まずさとは別の沈黙の時間が流れていた。




