No.17 部屋を移動して
「皆さんご存知だとは思われますが。私は鳥月風花。このTalentの社長を務めさせていただいております。どうぞよろしくお願い致します。」
そう言って風花は頭を下げた。
これが形式上の挨拶ということだろう。
顔を上げた風花は、先ほどのかしこまったものとは打って変わって、いつもの調子で話し始めた。
「この部屋は初層部の皆が自由に使える休憩部屋。見ての通り何にもないから自由にしていいよ。」
そう言いながら風花は出口へ向かっていった。
「さて、部屋移動するからついておいで。」
そう言われて、凛斗に急かされるように順番に部屋から出る。
次に案内されたのは先ほどの部屋とは対角にある部屋だった。
ドアの横には、「207」という標識が付いている。
風花に続いて部屋に入ると、先ほど部屋から出て行った五人がいた。
部屋の中央には会議に使われるような長机が二つくっつけて置かれており、八個の椅子が並べられている。
机の上には椅子のある所にお茶のペットボトルが置かれていた。
「ここが初層部の事務室。書類整理とか、何か事務作業する部屋だよ。」
そう軽い紹介をして、風花は先にいた五人のいる方に近寄った。
海斗と金髪の人にお礼を言って、風花は長髪の彼に声を掛けた。
「そろそろ起こす?寝かせとく?」
「いや、起こすよ。」
そう言って長髪の人は身体を大きく揺さぶった。
背負われていた少年は小さいうめき声をあげて、彼の淡い朱色の目がゆっくりと開かれる。
すぐに頭が冴えたらしく、その少年は長髪の人にはっきりとした声を掛けた。
「すみません。ありがとうございます。」
「うん。もう体調大丈夫そうか?」
「はい。もう大丈夫です。降ろしていただけますか?」
そう言われて長髪の人は少年を丁寧に降ろした。
少年は再度お礼を言い、風花の方を向いて軽く頭を下げた。
「ご挨拶が遅れてしまい、申し訳ございません。」
「大丈夫だよ。咳き込んじゃったんだって?」
「はい。お恥ずかしながら。今は良くなりましたので、お気になさらないでください。」
「わかった。とりあえず座りなよ。」
「ありがとうございます。本日からよろしくお願いいたします。」
そう言って風花にお辞儀をして席に座った。
薄い茶色の髪で毛先が切ったことが分かるようにぱっつんになっており、どこか品性を感じる。
見た目は桃色の人と同じくらい幼く見えるというのに、話し方はさながら大人のようであった。
「ほら、みんなも自由に座って。」
風花に促され、とりあえず角の席に座る。
目の前には光が、左隣には白夜が腰を下ろした。
風花は机の傍に会った大きなホワイトボードの前に立つ。
全員が座ったのを確認して風花は頷いた。
「じゃあ初めていこうか。」
そう風花は手を叩き、可愛らしい笑顔で話を始めた。




