No.15 蛍の兄
真と水色の人が親しげに話しているのをただ黙って聞いていると、黒髪の人が眼鏡の人の後ろに隠れたまま、何やら彼方の方をじっと見ていた。
「どうしました?」
そう声を掛けると、彼はびっくりしたように肩を震わせた。
できるだけ優しく声を掛けたつもりだったのだが、大した効果はなかったようだ。
黒髪の人は、少し目を泳がせた後、その小さな口を開いた。
「あ、あの・・・。もしかして、笹原彼方くん・・・ですか?」
「はい。彼方です。」
おずおずと聞いた彼にそう返すと、彼の表情がパッと明るくなった。
そしてそっと眼鏡の人の後ろから出てきて、嬉しそうに彼方に話しかけ始めた。
「その、蛍って友達いますよね?」
「はい。幼馴染です。」
「・・・よかったぁ。自分、寿光って名前で。その、蛍の、兄、です。」
後半になるにつれて、自信なさげに段々と声が小さくなっていく。
そして彼は最後に小さく、ごめんなさいと付け加えた。
彼方は、蛍の顔を思い浮かべながら光を見る。
どこか面影はあるが、言われてようやく気が付くほど。
蛍の自信満々な性格も相まって、あまり似ていないなと感じた。
ただ、光の目。
その真っ赤な目は、蛍と光、似ているどころかまるでそっくりであった。
「その、蛍がお世話になっています。」
「こちらこそ。」
そう言えば、兄も予定が空いていないと、文句を言っていたのを思い出した。
まさかこんな巡り合わせなるとはと思っていると、水色の人と話していた真が不思議そうに話しかけてきた。
「知り合い?」
「いや、知り合いのお兄ちゃん。」
「そーなの?よろしく!俺、神楽真。真でいーよ!」
そう言って真が手を差し出すと、光はびっくりしてまた眼鏡の人の後ろに隠れてしまった。
首を傾げた真に、眼鏡の人は苦笑いをして光をかばうように話した。
「ごめんね。光くん、人見知りなんだ。」
「ふーん。そっか。俺、仲良くできると思うんだけどなぁ。」
「まぁ、光くんのペースがあるから。」
そう真をなだめながら、眼鏡の人は自己紹介を始めた。
「えーっと、僕は月崎はじめ。光くんと一緒に来ました。よろしくね。」
手を差し出したはじめに対して、真はいかにも不機嫌そうな声を漏らして、仕方ないとでもいうようにその手を取った。
どうやら、光との話ができなかったことにご不満らしい。
はじめはその様子に苦笑いをしつつ、彼方の斜め後ろにいた白夜を見た。
白夜はそれに気が付き、ただ一言。
「・・・華見白夜。」
とだけ言った。
それ以外は喋らないという彼の態度に、はじめは再度苦笑いをすることになった。




