No.12 寡黙な人
「まだこれだけしかいないの?」
そう言いながらは入ってくる。
風花に続いてもう一人、入ってくる人がいた。
背が高く、真っ白な髪に澄んだ水色の目がよく映える人だった。
「もうちょっとで来るんじゃない?」
「そう?まあ三十分前だしなぁ。」
「俺らが早ぇんだよ。」
文句のようにそう言った海斗は風花の後から入って来た人に近寄った。
そして、若干その人を物理的に見下ろすようにして話しかけた。
「でかくなったな。元気だったか?」
「はい。」
「まだ俺の方が上だけどな。」
「そろそろ抜きます。」
「可愛くねーなぁ。」
そう言って海斗は頭を掻いた。
どうやら二人は知り合いだったらしい。
海斗に呼ばれて、彼方は海斗の側についた。
「笹原彼方。俺の部下だ。仲良くしてやってくれ。」
「彼方です。よろしく。」
そう言って彼方は手を差し出した。
その人はじっと彼方の方を見た後、そしてそっと彼方の手をとった。
「・・・華見白夜。よろしく。」
そう言って彼はそっと手を離した。
白夜とは、またずいぶんと珍しい名前である。
凛斗に声を掛けられ、白夜はそちらの方で話し始めた。
白夜はかなり募黙らしく、凛斗と真との会話のほとんどを「はい。」「どうも」「あぁ。」で完結させていて、彼方はその様子を三人から少し離れたところで見ていた。
「冷たい子ってわけじゃないんだけどね。」
「風花さん。こんにちは。」
「こんにちは。ありがとうね。来てくれて。」
そう言いながら風花は彼方の隣に立つ。
その視線は白夜の方を向いていた。
風花の白夜を見る目は、まるで親が我が子に向けるような、優しく見守るような目であった。
「単に口数が少ないだけなんだよ。」
「そうなんですね。」
「彼方も似たようなもんだろ?口数の少なさに関しては。」
「そうですか?」
海斗に言われて彼方は若干首をひねる。
いや、口数が少ないと言っても、流石に白夜ほど酷くはないと思うのだが。
海斗は彼方の疑念に気が付いていないようで、軽く彼方の頭を撫でながら笑った。
「仲良くなったら増えるだろ。こいつみたいにさ。」
「そうかなぁ?」
「まぁ、増えなくたっていいんじゃないか?」
「そうだね。無理に仲良くさせる必要もないわけだし。」
そんな親のような会話を黙って聞いていると、向こうでの話が終わったらしい。
真が機嫌がよさそうにこちらへやって来た。
「彼方!今日さ、一緒に飯いこーぜ?白夜も来るって!」
意外な言葉に白夜の方を見る。
白夜は彼方が見ているのに気が付いて頷いた。
次に海斗の顔を見上げる。
海斗は嬉しそうな顔をして彼方を見下ろした。
「いいんじゃないか?行ってこい。」
「・・・。じゃあ行く。」
その返答に、真は大きくガッツポーズをした。
ご飯に誘われるという経験が少なく、ましてやそれが今日初めてあった人というのが彼方にとってはとても意外だった。
それでも心の中で喜んでいると、その横で風花が酷く驚いたように声を上げた。
「え、早くない?白夜も行くの?」
「こいつが彼方も誘うって言ってた。」
「そう・・・。行ってらっしゃい。」
白夜の言い分はよくわからなかったが、そんなことはどうでもいい。
白夜がこんなにも早く他の人と関わろうとすることに風花は呆気に取られていた。




