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26脳内攻略法

おい。

戻ってきた答案用紙の点数がおかしい。

私の机の上に重要科目が置いてある。

国語51点

算数88点

理科90点

社会78点

英語45点


嘘だろ。

一番得意な国語が51点。

これはわかる。だって捨てたんだもん。

しかもおまけ三角に助けられてる。

赤ペンで、原作ではなくて教科書の文章から答えを導いてくださいと。


うむ。これは本当。すいません。


……英語は何も言うな。


違うのよ。

算数、理科、社会よ。


これ全部ナナちゃんにやり方教わったやつ。


割合は『クリティカル率と会心ダメージ倍率を想像して?』って言われてからスッと入ってきたのだ。20%引きは「ダメージ80%カット」って言われてあぁ。そうゆう意味ね?って思った。


約分って何に使うのよって思った。でもナナちゃんは、『スキル重複を削除して最強ビルドにするって考えて?』って言われて約分し忘れると「無駄スキルでステータス下がる!」って危機感が出ると。


ほーそうゆう時に使うのねみたいな。


数字だけだとあんまり想像できないことを全部ゲームに落とし込んだのだ。

分数も光の派閥(分母6)と闇の派閥(分母4)が同盟組んだ!的な考えだ。


この問題もそうだ。


「120円のりんごと80円のみかんで方程式」

→ 「攻撃力120の炎の剣と防御力80の聖盾を合計10個装備して総戦闘力1040にしたとき、炎の剣何本??」

「ステ振り問題キターー!!」と妄想

120x + 80(10−x) = 1040 → 即座に解ける


いや。いいのか?私。


理科もそんなところの延長だ。


社会は歴史と地理。

ここが出そうだね?重要かもねって言われたところだけ覚えたら全部出てきた。


ふ。


情け無いなんて言葉は私には存在しない。

無知は罪ではない。誰からも教えを乞う謙虚な人間性。これが一番大切なのだと。


誰かの本に書いてあったな。

いや。もっと難しい言葉だった気がする。

うん。自分で納得して実践できれば良いのだっ!これぞ!アイデンティティっ!!


やべぇー。アイデンティティって発音カッコよっ!



アイデンティティ。


手話ってあんのかな。

これを機にエビデンスっ!とかイノベーションとかコンセンサスとかも調べよ。


……意味知らんけど。


そうやってカタカナ語を頭の中で転がしながら、私は自分の答案用紙を見下ろした。

机の上には、返却されたテストがずらっと並んでいる。赤ペンの数字が、いつもよりやけに眩しく感じる。


さて。とんでもない成績を残せたって事で。

人生初の追試から逃れた。


そう。去年は全部追試。

中学生なのに、小学生の問題で全て追試って……


思い出しただけで背中がブルっとする。

うん。今は喜ぼう。夏休み、全部遊べるのだ。

どうせ来季はまた追試だろうけど、未来の私に任せる。


「ねむちゃん? すごいね……どうしたの? すごい勉強したの?」

答案を見ていた私の横に、いつの間にか水橋先生が立っていた。

目をまん丸にして、信じられないものを見るみたいな顔で私を見つめている。


【いや、たまたまですかね。ちょっとだけコツを教えてもらったら、こんな事になってしまいました。ラッキーです。】

私は肩をすくめて、さらっと手話で返す。


「あのね。方程式の問題とかに“攻撃”とか“聖盾”とか“炎の剣”とか書いてあったけど、これってイメージしてるの?」

先生は、算数のテストを指さしながら首をかしげる。


【そうです。ステ振りの問題って妄想したら、問題に色がつくんですよねぇ。】

自分で言いながら、ちょっとだけ誇らしい。

白黒の数字が、一気にゲーム画面になる感じ。


先生は、ぽかんと口を開けてから、ゆっくりと目を丸くした。


「色か……。お兄ちゃんとかに教わったの?」


【ナナちゃんです。冰の杜の6年生の。】


「えっ! ナナちゃん!? あの!? ……目が合うだけで私のこと石にする気かなってくらい鋭い目つきだった、あの芦名ナナリちゃん!?」


ナナリ?


【はい。多分? ナナちゃんってナナリ? ていうの?】

「そうだよ、芦名ナナリちゃん……。すごい……。あんな取り付く島もない感じだった子を、まさかこんな……。」


先生は、採点済みの答案用紙と私の顔を交互に見て、ゴクリと唾を飲んだ。

「ねむちゃん、あなた猛獣使いの才能あるよ……」


【猛獣使い? ナナちゃんは獣じゃないですよ? 天使です。】


「いや、天使は割合を『ダメージカット』とは教えないと思うけど……。でも、すごいねっ! ねむちゃんもナナちゃんもっ!」

先生は、呆れたような、でも本気で感心したような顔で笑った。


【まぁねっ! 特にナナちゃんがねっ!! 土曜日ナナちゃんと釣り行ってくるんですっ! 先生にお土産話でも持って帰ってきますっ!】


「え!? どこに!? 朝なら私も行くよ!?」

先生の声のテンションが一段階上がる。 さっきまで「テスト返却モード」だったのに、一瞬で「遊びたい先生モード」だ。


【え! 氷見らしいですけど。場所はわからないですね! 一緒ならいいなぁ。】


「んー。もしかしたら一緒かもねっ!」

にやりと笑う先生。


んー! 釣りも楽しみになってきたっ!よっしっ! 期末試験も終了っ!!



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