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21予期せぬ熱

私達は高岡イオンモールの連絡通路の近くフードコートを3人で品定めをしている。

と言うか。ものすごい混んでいて私自身は席を選んだら良いのかご飯を選べば良いのかオドオドしてる不審者なのではと不安になる。


流石休日というような人の多さで、テーブル席はほぼ埋まっており、あちこちで空席を探す人々の視線が交錯している。各店舗の前には長い列ができていて、注文の呼び出し音や会話が入り混じり、フードコート全体が活気に満ち溢れていた。


「みんなでいろんなの食べたいよねー。あと席空いてないー?のかなぁ。カウンターはあるんだけど……あ!」

ユウちゃんはたかい身長をさらに伸ばして手を振る先に

「ねっ!あそこにお兄ちゃん達がいるっ!」


お?ハルとケンちゃんかな?


私達は2人の席に近づく。


ケンちゃんはテーブル席に大きい身体を背もたれに大の字でだらしなくすわって目だけを私達に向けて一言

「あ?話終わったみたいだな。」


「これ席よこせって言ってくるぞ?食い終わったし行かね?なんか嫌な予感がするわ。」

ハルがだるそうに頬杖をついて私達を一蹴する。


「は?なんで?」

不思議そうなケンちゃん。


「おにーちゃーんっ!良いところにいるじゃーん!席私達もそこに座っていいでしょ?」

何か企んでいるような顔つきのユウちゃんはにんまりと微笑む。


「おっ!良いぞ?ここ座れよ。俺たちはもう食い終わったからよ。それじゃ……」

ハルの発言に食い気味でユウちゃんは言葉を被せる。

「エマとユウちゃんのご飯並んでくれない?」

それを聞いたケンちゃんとハルはずっこける。


「おい、俺等は食い終わったっつうの。並ぶのも楽しいぞぉ?一緒のところで仲良く並んでろよ。」

ケンちゃんはそう言いながらスケボーを持ってこの場を去ろうとする。


「お兄ちゃん。ケン。人はそれぞれ好きな物は違うの。このごった返してる状況でねむちゃんとエマを1人で並ばせるの?あんた等昨日「守ってやらねえとな」って言ってなかった?まだ中学生の女の子だよ?しかも2人はフードコートで頼むのは初めてなんだから。1人にさせていいの?エマはギリギリいけるけど、ねむちゃんは話せないんだよ?」

今の現状はお昼ど真ん中でどの店も長蛇の列である。並ぶのには15分以上はかかるだろうか。


「お兄ちゃん達がエマとねむちゃんの通訳するかして?お願い!いろんな種類食べて3人でお箸つっつきたいの!ねっ!!ってか決まりっ!良いお兄ちゃんを持つと誇らしいね!」

決まりっ!て言ってる。この人……やっぱりブルドーザーだな


「私が席確保してるから、お兄ちゃんがねむちゃん、ケンがエマについてってよ。私一人じゃ同時に二箇所並べないでしょ? ほら、2人ともフードコート初めてなんだから!」

うわ。なんか……凄い悪い気がする……


【お兄ちゃん。お願い。見本見せて?】

エマちゃんは私のママと会うから礼儀の事を考えて無理に喋っていたんだろう。今は吃音のストレスから解放されていつのまにか手話での会話になっている。


「ん……そうか。じゃぁしょうがねぇな。」

ケンちゃんは一瞬で妹のお願いに落ちる。


「おい。まじかよ。」

呆れているハルであった。


「わかった。じゃぁ俺が席は確保しててやるから。2人で頼んでこい。ユウ。ねむ。」

おお。なんだかんだ優しい男子組。ハルも落ちたか。


「私が席の確保担当でいい?お兄ちゃん久々に目の前にねむちゃんいるんだから、数分喋ってきな?ほらシッシ。」

ユウちゃんはハルの提案を無視してハルを跨いでちょこんと座る。


「は?それってYESの選択しかねぇだろ。」


な!なんだと!?私と並びたいのか!!??


いや待てっ!!断ったら私と気まずくなるってパターンかよっ!!それを避けるためにネガティブな発言をさせないような提案を出したんだ。あんた鬼だな。


んま。でも久々にハルと喋れるならいっかな。


【ごめんよ。ハル。フードコート初心者に伝授してくれ。】

「バカか。お前。行くぞ。」

ハルは私の肩をパンパンと叩き私の前を歩いてゆく。


この子達は、この気を使わないやり取りがどんだけ私を救っているのかわかってるのだろうか。雑に交わされる会話の中に私もいる。


こんな事は3ヶ月前まではありえない状況だった。


そもそも休日には外に出ない。

当然友達はいなかったから遊ぶ事はなかった。

学校ではろうの子とはよく話すようになったが休日は休日でろうの子はコミュニティがしっかりあるから私の入る隙間はなかった。


今私の目の前には少なくとも4人も大切な友達がいるんだ。



私は銀だこを食べる選択をした。

列はそこまで並んでないが、まぁ結構待つだろうな。


「んー。今後なんだけど、喋る選択肢がない場合はどうすんだろうな。私は声が出ませんってのをジェスチャーでわかりやすく店員に伝えてメニューに指を差せば良いのか?」

ハルは今後私が1人で頼めるようにどうしたら良いか考えているようだ。


【その前に私1人で列も並んだ事ないし、注文する時の行動もあんまりわからないんだけど。食券とかあるところならまだ良いんだけど。】


「ああ。でも全部が全部食券があるとは限らねぇもんな。現に銀だこは食券ねぇし。」


【銀だこはメニューがカウンターにあるんだ。見上げると大きく並んでるけどあれがメニューだと思った。】


「あれはオススメしかねぇのよ。メニューがカウンターにあるから。普通のレストランみたいに色々選べる。」


【そっか。あれだけじゃ5個くらいしか種類ないもんねっ!】


「本当だよ。どんだけ自分達の味に自信あるんだよ。銀だこ。」


私とハルはお互い目をみながら笑った。

なんか楽しい。


私普通の生活してるみたいだ。

いやみたいではなくて、中学生が経験してる事を私が本当に経験してるんだ。

遅いか早いかはわからないんだけど、多分こうやって学んでいくんだろうな。


「あ。ディアさんにあった?ケンの母ちゃん。」


【あったよっ!白スーツ着てる人初めてみたかもっ!かっこよかったっ!】


「あー。あの服か。大学でよくきてる服装ね。」


【あ。大学の先生なんだよね。ディアさんなんの勉強教えてるのかな?】


「英語だよ。ちなみに今あの人アメリカ手話とフランス手話勉強してるぞ?もしかしたらエマとねむが知りたいって言ってくるかもしれないって。」


【なんだと!?知りたいかもっ!】


「まぁ。その前に英語聞き取れんのかよ。」


【いいえ?全く。】


「あはは!だよなっ!」


【おいっ!まだ中学だしっ!これからだよっ!】


「ごめんごめん。並行してできたら良いな。」


確かに今後アメリカ手話を学んでいくと言う事になればやはり英語はしっかりできないといけないな。

私の今の英語能力って多分小学6年生ぐらいだし。


「最初はスマホに大きく声が出ません。でも耳は聞こえます。って店員に伝えた方がいいよな。だから事前にメニューは決めといた方が無難だろ。今日はこれで行こう。」


おおー!そっか!なるほどねっ!


そう考えると、ろう者のコミュニティってのはよくできてるな。

こうゆうのを多分みんなで学び合って今週はフードコートにみんなで買い物に行こうっ!とかそんなイベントとかあるんだろうな。


危ねぇ。ろう者じゃない私にとってハル達がいなかったら暫く詰んでいたかもしれん。

いや、永久に……

でもいずれお兄ちゃんとかママが連れてってくれるか。


と妄想していたが過去を思い出すとそんな簡単な状況じゃなかったな。

外に出ない。人と会話したくないオーラ全開の私だった。


どんだけ家族に迷惑かけたんだよ。私。



「ねむ。あそこにメニューがあるぞ?あれみよう。」

ハルが指差した先にはメニュースタンドがある。


「ほれ。」とメニューを渡してくれるハル


ふーん。"てりたま"が定番なのか。他にもネギたこ、チーズ明太子、期間限定の"カレーチーズてりたま"なんかもありますな。


「おい。たい焼きもあるな。」

私が持っているメニューを覗き込むハル。


私の顔にふんわりした天然パーマが視界に入った。


あ。顔が近い。。


その瞬間。私の心臓の速さが増す。


うおっ。これって。何?

暑っ!顔。熱?


「んで?どおすんだ?」

ハルはメニューをみているので私の反応は見えない。


「おい。」


時間にして10秒くらいだろうか。

固まる私。


ハルの声が遠のく。


パンっ!


ハルが手を叩き、ようやく正気に戻った。


うわっ!


【ごめん!】

と片手で伝えるがハルは心配そうな表情で私を見る。


お、お、おい。見んなっ!私を!

何故か私はストレスを感じて顔を伏せてしまった。


「もしかして熱あんのか?」


ねぇよっ!

大きく私は首を振るが、マジで暑い。

でも急に暑くなってきたんだけど。なんなの?

前にもハルと一緒にいた時あったんだよな。


はっ!こいつ!病気持ってんのか?

んなわけないか。失礼すぎるぜ。はは。


「まぁ。いっか。ほれもうそろそろだぞ。」


むむっ!本当だ。もう目の前にカウンターが!


「んで。早く決めないと後ろの人がメニュー見れないから決めようぜ。」


くそっ!こいつの"私を熱するスキル"でなんも考えていなかったっ!

どうしよっ!んーこれっ!

私は目を瞑って指を差してしまった。


それは焼きそばであった。


「まじかよ。ここまできて焼きそばか。変わってんな。」


はい?ちびまる子ちゃんのタラーンと言う音が脳裏に走る。


あ。いや違う。


「お待たせしましたー!どうぞこちらにー。」

店員さんが私達を迎える。


「ほれ。メニュー戻すぞ?」

ハルは私の持っていたメニューを後ろの人に渡した。


まじかっ!でも速やかに決めないと後ろに迷惑がかかるっ!!


私は慌ててスマホを取り出してメモアプリに自分の要求を入力していく。


:声が出せない病気です。焼きそばを一つください。

入力したスマホを店員さんに差し出す。


すると店員さんは、ハッとした表情で笑顔で頷いた。

そして何故か声を出さずに、口パクで6番のベルがピカピカしたらここに来てくださいと一生懸命ジェスチャーしてくれた。


やばいぞっ!ろう者だと思われてるっ!


「じゃぁ俺はてりたまで。」

ハルは私とは別にてりたまをたのんだ。


もちろん店員さんはハルには声で接客する。


お会計は何故かハルがしてくれた。


「ヨシっ!これで初めての注文できたな!焼きそばってのはびびったけど。あとはこれが光ってバイブしたら取りに行くって感じ。OK?」


【お、おーけー……】



ななな。なんつう失態。

焼きそばなんか食いたくねぇよっ!

たこ焼きが食べたいのに!信じられないミスを犯してしまったっ!


私は柱に寄りかかり放心状態となってしまった。

「お前。本当に大丈夫か?」

ハルはまだ私に熱があると思ってるのだろうか、しつこく聞いてくる。

むしろ今は自分の失敗に冷たい風が吹き付けるような感覚だよ。心配するな。


「まぁ。最初は緊張するかもしれないし、知恵熱なんかな。俺も昔はそうだったよ。いや?別に俺はそんな緊張はしなかったな。まぁねむとは置かれてる状況違うし、仕方ねえか。」


くそっ。鈍感なやつめ。お前にも少し原因があるんだ。でも。


【ごめんね。お会計してもらっちゃった。】


「いいよ。フードコートデビューのお祝いだ。俺はお小遣い制じゃねえから、ある程度収入あるしな。」


は?こいつ中学生でしょ?


【なんで?バイトできないでしょ?】


「米作ってんのよ。男3人。俺とレオ、コタツでね。その売り上げが3人に分配されんの。父さんからね。レオはまた別のルートがあるからあいつが一番金持ってんじゃないかな。」


【あ。なんか昔からいろんなところで職業体験してんでしょ?】


「そう。職業体験一つに千円が父さんから報酬で貰えるってわけ。大変な作業は2000円。小遣いみたいなもんか。」


【うへー。しっかりしてるね芦名家は。】


「今後俺たちは人種差別とか、他諸々壁が出てくるからね。今のうちにブルーワークは経験しとかないとね。」


【人種差別?なんで?みんな全然日本語も上手いのに?あとブルーワークって?】


「ブルーワークってのは現場作業みたいなやつの事。オフィスで頭使う作業じゃなくてね。昔は大変な仕事は汚れが目立たない青い作業服での仕事が多かったからその名残かな。。」


【差別なんかあるの?今も。】


「今はないよ?そもそも学校が芦名とカーソンしかいない学校だからね。それに過疎化してる地区だから知り合い少ないし。いずれなくなっちゃうかもね。俺たちの村も学校も。」


え?そんなの嫌だ。絶対。


【どうやったら村は無くならないの?】


「そりゃ人がいっぱい氷見に来てくれたり、生まれたりしてくれたら無くならないだろ。」


【私が氷見に住んだら少しマシになるかな。】


「は?……あぁ。そりゃお前らの家族は4人だろ?単純に4人増えたら村もその地区も万々歳だろ。」


【行きたい。】


「ほえ?行きたいって?」


【氷見に住みたい。】


「いや、それは………おもろいな。」


【でしょ?】


「でも親の事情があるだろ。兄貴も学校行ってんだろ?でもちゃんとねむの事を考えると俺の過去の発言も考えが足りなかったなって思う。」


【過去?】


「俺たちの学校に来れば?みたいな。」


【ああ。そっか。今も多分ママ達は私の障害について話してる訳だしね。】


そうだよねぇ。私とお兄ちゃんの学校は高岡だしなぁ。私は支援学校だし。

まぁ。さらっと引越しってできちゃったりする?って聞いてみるのもアリかな!

少し前にテーブルに家のチラシがいっぱいあったし。

でも私のために3回も引っ越ししてるからな。ようやく見つけたあの家は流石に手放さないだろな。

そして学校がめちゃくちゃ遠くなるっ!

無理か。わがまますぎるぜねむ。



そんな会話をしていると、私が持っているベルがなる。


(おーー!これか!なんだろっ!この高揚感っ!新しいスマホみたいな端末を持っている感覚っ!!そしてこのベルが私を呼んでいるっ!不思議とにやけてしまうっ!)


「なんでそんな顔してんの?」


おっと。こんなんで喜ぶのは小学生だ。

見なかったことにしてくれ。ハル。


【これカウンターに持ってけばいいんだよね。】


「そ。行こう。」


私達はカウンターに行き、焼きそばと銀だこを受け取った。


くそ。ハルの銀だこ美味しそうだなぁ。

私の焼きそば…マヨネーズかかってない…

半熟の目玉焼きも欲しかったな……

具も海鮮じゃないし。


チラチラと私はハルのてりたまを見てしまう。


「おい。お前。食いてえのか?」


うんうんうんっ!!

私のヘッドバンギングは高速で上下する。


「あー。んなら一個やるよ。」


【本当にーっ!!やった!】


「はい。」


唐突に私の口元に楊枝に刺さったたこ焼きが現れる。


「ほれ。食え。一個だけな。」


これって。


アーンしろってかっ!!

おいっ!あたしゃ女だよっ!こんなのキスと一緒やでっ!!


「いらねぇの?あ。自分で持つって?ごめん。」


はっ!いかんっ!これを逃したらっ!

私は引っ込めそうになるたこ焼きをパクリと仕留める。

あっついっ!!けど、モチャモチャと私はたこ焼きを食べるが熱さも味も何故かしなくなった。

代わりに知恵熱が……


「よし戻るぞ。」


なんか。頭からヤカンの沸騰する音が聞こえるぜ。



「どしたの?ねむちゃん。なんか頭から湯気出てるけど熱?」

ユウちゃんが暫くパタパタと私を仰ぐ。


ハルとケンちゃんはもうすでにこの場にはいない。


ユウちゃんとエマちゃんと私の3人で女子ランチだ。


たださっきのキスと同等のアーンを経験してしまい知恵熱でやられているのだ。


まさかハルに奪われるとは。奪われると言っていいのか。私の自殺ではなかろうか。

うん。自ら刺されに行ったと言っていいだろう。


【ねむちゃんなんで銀だこに並んでたのに焼きそばなの?心変わりしちゃった?】

エマちゃんはポカンとした顔で私を覗き込みながら手話をする。


言えるか。焼きそばを選んでしまった過程など。


【ん。まぁ!急に焼きそばが食べたくなっちゃって!あははは!】


エマちゃんは両手サイズの大きいステーキだ。

サイズもアメリカンやんっ!

こんな食べるの?エマちゃん。


【せっかくお兄ちゃんが隣にいるならステーキいっちゃおって思って。男の子が一緒ならステーキも恥ずかしくないでしょ?】

エマちゃん。やるな。でも男の子って手話の“低い位置で頭を撫でる仕草”が気になる。あいつの見た目は187センチの巨体の男性や。年齢は同い年だけど。


ユウちゃんは、エマちゃんが先に帰ってきたタイミングでラーメンを注文しにいっていた。

随分これも大きなラーメンだ。


「麺被りだけどねむちゃん食べる?」

ユウちゃんがラーメンを私の近くに寄せてくれた。

【ねむちゃん。私のステーキも食べて?お兄ちゃんに勧められて頼んだけどこれは食べるの大変だな。】


なっ!これが噂の交換こっ!!

友達同士が違う料理を回しながら食べて感想を言い合う!伝説のっ!!


【食べたいっ!!じゃぁ私の焼きそばもあげるねっ!】


「ありがとっ!」【ありがとう】

と言いながらなんだけど2人は私の焼きそばを見てあまり嬉しそうじゃない気がするのは気のせいだろうか。


「ねむちゃん。シンプル派かっ!」

ユウちゃんがハッとした表情で呟く。


いやいやいやっ!目玉焼きほしいよ?具はイカと海老とホタテがいいけどっ!マヨネーズは必須っ!追いおたふくソースと青海苔1センチくらいかけてもいいよっ!って女よっ!大味バンザイっ!!


でもこんなたわいもない会話や、やり取り。


最高に楽しい。



そのあとは3人で洋服選びで次に会う時はこんなコーディネートにしよっかなんか言っちゃったり、試着で同じ部屋に入ったり、メガネをつけて遊んでたら2人の顔が小さすぎてガバガバでショックを受けたりした。


暫くしてGODIVAのチョコレートドリンク一つを3人で飲んだ。

高級な味。大人は毎日こんなものを飲んでるのかっ!って言ったら毎日なんか飲む訳ねぇだろと突っ込まれた。

私が大人なら毎日飲むのだが…


そのあとはPLAZAで化粧品を物色。

まだほぼ化粧未経験の3人はどれがどうなのかもわかっておらず、いらないアイブローをエマちゃんは買っていた。私はいらない色付きリップ。ユウちゃんはいらないフェイスブラシを購入。

ユウちゃんは、なんか触ってると気持ちいいと言う理由でもはや化粧をもしない前提だ。

ただ買いたくなる。多分あるあるでしょ?


時間の過ぎるスピードが早すぎて時計の針は5時を回っていた。


うわ。はやっ!


最後にペットショップにいこうと言うことになった。


ユウちゃんは犬を2匹も可愛がっている。

ミニチュアダックスフンドロングのクリームとチョコタン。おもに女の子組でお世話を分担しているらしい。もう1匹はお爺ちゃんとお婆ちゃんの家にいるらしく、そのワンチャンはよく行き来するみたい。

家は離れで近いのだろうか。


エマちゃんはラグドールという種類の猫らしい。知らぬ。なんか強そうな名前だ。


私は雑種の小太郎。世界一可愛い猫。


聞けば芦名家もカーソン家も保護犬と保護猫らしい。

私はお兄ちゃんが道路に転がっていた赤ん坊猫を拾ってきたのだ。それが小太郎だ。


ガラス越しの少し大きめのワンちゃんを見ているエマちゃん。


するとふっと数珠みたいなものを手に絡めて胸の前で軽く抱える。組んだ両手を静かに寄せて祈りの形をつくった。


あ。さっきもご飯を食べる前に両手合わせてたな。エマちゃん。

あの時は焼きそば頼んで絶望していたから気にしてなかったんだけどやっぱり信じてる大事な存在があるんだ。


その時思い出した。

確か佳苗ちゃんが言ってた。エマちゃんが十字架持ってるか確認して欲しいって。


ああ。そっか。一応聞いておくか。


【エマちゃんって十字架のアクセサリーって持ってるの?】


【うん。これ?】


すると数珠のように繋がった木で作ったような十字架が手の中にあった。


【うわぁー!かわいいねっ!おしゃれだっ!】


【そう?嬉しいっ!ねむちゃんありがとう!】


【何をお祈りしてたの?】


【うんと。少しこのワンちゃん値段低めで大きいでしょ?だから良い人に出会いがありますようにって。】


【ほー。じゃぁ私も。】

真似してみるが、気づけば両手をぺたりと合わせた


そんな私の姿を見たエマちゃんは思いのほか笑っていた。


でも。私はこの仕草がとっても繊細なものだって事はこの時まだ知らなかった。


知るよしもない。


何にも考えずに生きてきたからだ。


自分が一番可哀想だと思っていたこの世界は、全然そんな事はなく。色々な悩みを抱える人達で満ちている。


そしてこの世界はあまりにも残酷だ。


【ねむちゃん、それだと神社の“お願いごと”みたいだよ?】


へ?


こうゆうとこだぞ。ねむ。


今は知るよしもないバカで最低な私を、エマちゃんは太陽のような笑みで微笑んでいた。



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