第四話ーメシアの憂鬱
まずは3ヶ月以上空いて本当にすいませんm(_ _)m
検定とかテストとか部活とかもろもろに力を注いでいたら長い期間が空いてしまいました…相変わらず期限もちょっとすぎるっていうね…詫びの意で今回は長めです。
話の質落ちてたらごめんね。
「だりぃ〜…」
そんなことをつぶやきながら何となく空を見上げる。
巨大な外壁に囲まれた城下町の上を雲が覆っている。雲が厚くて街に陽光が差さず、周囲が薄暗い。
両横に鮮やかな装飾が施された建物が並んだ王宮に繋がる大通り。どんよりとした天気にも関わらず活気のある街を人々が絶えまず往来している。勇者はその人の波の中を孤独にトボトボと歩いていた。
そこは勇者の故郷の村から少し離れた王都、この国の王宮で武術や剣術を叩き込まれながら数年間過ごした思い出深い町だ。かつて勇者たちが魔物たちによる食糧難から救った街でもある。
そんな街道を蹴りながら進む。
時間が戻り、親友と感動の再会を果たし、再び旅をするというドラマの様な展開。全てが思い通りにいっていたのだが、勇者は自分の起こしたくだらない失態に出鼻をくじかれ気が滅入っていた。
故意ではないとはいえこれから共に旅をする仲間に不埒を働いたのだからこうなるのも無理ないと思うが悪行であったことに疑いの余地がない。
早急に謝罪し、また友好な関係を再構築するべきだ。
するべきなのだが…勇者はただ一人で街をナメクジの様にうじうじと何をしているのだろうか?
大体十分ほど前のことだ。
フィリアの渾身の平手打ちにより気絶した後のこと、勇者は宿泊部屋の布団の上で目を覚ました。
勇者は今朝目覚めた時みたいにぼーっとしてる場合ではないことを瞬時に理解すると部屋に二人がいないことを確認した後、1階の宿主に二人の行方を訪ねた。
宿主に聞くと、二人は外に出かけたと言い行先は知らないと言われた勇者は「ちょっとくらい心配してくれても良くね?」と思いつつ宿屋にいてもしょうがないと思い二人に会うために、そしてフィリアに謝るために街に飛び出したのだった。
そして今に至る。
『シヴァンは…どうせ俺の事放置して飯でも食ってるはずだ。フィリアはどこ行ったんだ?』
街の住人たちの声がうるさく感じる。
今勇者は、頭を回転させて歩きながらとてもロマンチックな謝り方を考えているのに声のせいで思考が遮られる。
後頭部を掻きながらあちこちに目をやる。なんだか落ち着かない。
「久々だなぁ〜、こんなに、なんか…嫌な感じになるの。」
誰かに向かって愚痴を垂れる。
気が滅入るほど謝るのが嫌いな理由は恥ずかしいというのもあるが勇者は怖かったし嫌だった。
謝ることが悪いことでは無いのは分かる、むしろ正当でかつ誠実な対応だと思う。
謝罪しても許されないと思っているから出来ない訳でもない。
だが謝ったり謝られたりするそのやり取りにはお互いの関係性になにか亀裂のようなものが生まれるのを感じる。関係性に一つの節目というか一段落ついたみたいな何かが、胸を締め付ける。それは事が重大であるほど強く、そして不快だった。
勇者にとって謝る事は誠実である反面、逆に友好関係に優劣が着くような感じがして嫌だった。
そしてなによりも、二人が王宮に住む前の幼少期の勇者は王宮の人以外の誰からも優しくされなかった。
そういった過去もあるせいか、謝ろうとする度にさっきから最悪の場合ばかりが頭に過り気分がどんどんと沈んでいく。そしてそんな自分自身に勇者はとても苛立っていた。
『あいつらが居てくれなきゃ今の俺はいなかったな…』
自分が悪いことなど明々白々だが事の運びが自分にとって不都合だからか虫の居所が悪かった。でも謝らなきゃならないから自分の機嫌なんか知ったこっちゃない。
「どこにいるかなー…と」
そこまで嫌なら最早謝らなくても良いのではとも思うが、そんなクズにはなりきれない。
自分が悪いと分かっているのなら謝らないのは違うと、幼稚な勇者でも流石に理解していた。
だからフィリアが感動するような謝り方を考えているのだがどうも思いつかない。
共に旅する仲間だから小さい頃みたいに数日経ったらどうでも良くなって数日後には仲良しに戻るとかは当然のことだがありえないだろう。
愚鈍で熟考しないと結論が出ない人間なのに色々躊躇すると別の考え事をしてしまう。
『小さい頃はすぐ謝れたのにな。』
子供の頃簡単に出来たことは大人になるとできないことになっていく感覚。変わっていく町と世界。
「…この街も俺ら来てから変わったよなぁ。」
そんな感覚が勇者の身体を貫く。昔のことをふと思い出す。
『誰かが悲しんでたら手を差し伸べるアイツのこと、人間不信で人見る度にビビってたくせに頑張って真似してたな…あいつらが来てくれたばっかの頃だっけ。聞いたこともあったな。なんでそんな優しいのかって。』
王宮で暮らしてた頃の記憶が蘇る。
「フィリアって何でそんな優しいの?」
二人で横に並んでこの城下町を歩いていた。
「えっ、へへ、私っスか?」
突然勇者がそんなことを言い出すのでフィリアは思わず声が裏返る。
「うん、いつもどんな人でも困ってたら助けるし、さっきも全く知らない子の怪我治してあげてたじゃん。」
勇者は不思議でしょうがなかった。自分からしたらありえない行動だ。自分自身があの子の立場だったら街の子は絶対に誰も助けてくれない。
「えへへ、なんか照れるっスよ!なんスかぁそれぇ…優しいって思われてるのは嬉しいっスけど…"何で"かぁ…まぁ家訓だからスかねぇ。」
「へ?」
思いもよらない返答に変な声が出てしまう。
「お母さんにもお父さんにも今はもう会えないスけど未だに"人に優しくする"とか"元気に挨拶をして心を明るくしてあげる"とか、他にも…えっと…まぁたくさん守ってるんスよ。」
「ふぅん…」
「しかも人に優しくするのって楽しいんスよ?相手も嬉しそうだし、それ見て嬉しくなるし」
当時の勇者には全然理解できなかった。
『なんでたったそれだけの理由であの子に優しくできるんだろう。』
「まぁ私達は王宮に住んでるってだけで本当は同じ子供なんだし差別とかはなしっス。ラブアンドピースが1番っスからねっ。」
今思えば優しくされたことがないやつに優しくだのなんだのって語ってもそりゃ分からないか。
「ノアさんから聞いたのに興味なさそうッスね…」
「あ、ご、ごめんフィリア」
オドオドしながら俺は謝る。
「ご飯ですよーお二人様ー。」
「シヴァンさん!すぐ行くっスー。ほら、ノアさんも!今日は何が出るっスかね〜。」
ニコニコと太陽のように眩しい笑顔をこちらに向ける。
「ハハッ。」
つられて微笑み返す。
「うん。」
「懐けー…ククっ。」
独りで思い出して少し笑う。
『あの時はただの変なやつだとしか思わなかったけど今となってはちゃんと分かる。あいつはただ人にひたすら優しいバカなんだよな。』
頭をポリポリと掻きながら街並みを眺める。
『飯でも食うか、とりあえず。』
なんとなく許して貰えそうな気がして余裕が出た勇者はなんと血迷ったのか急に昼飯を食べることにした。
余裕が出た瞬間、それと同時に時間が戻ってから食事もまともに取れていないことを思い出してしまい急激に飢餓感に襲われたからである。謝罪の方が圧倒的に優先順位が高いため理由にはならない。
腹を擦りながら勇者は鼻に神経を集中させる。
『まぁ飯くらい食ったって良いよな。多分…。ていうかそもそも俺は世界を救うメシアなのだ。ならば当然っ…!これくらいは当然っ…!』
数分前とは打って変わってニヤニヤしながら軽快に歩みを進めていく。昼飯に何を食べるかじっくり考える時間なんて魔王を倒すことを真面目に考えてた前の時間軸の世界では旅の最初の頃以外なかった。
『よくよく考えればイリアムが言っていた"史実通りになる"ということは魔王を倒せるという事実が恐らく未来で確定しているわけで、その最中で2人を守れるかどうかという話だ。…多分。』
自分が弛緩するのための言い訳を脳に言い聞かせて早速行動に移る。こういう時の行動だけは異様に早い。
『そうと決まれば少しくらい道草を食ったっていいはずだ。少しくらい一人で街をダラダラとほっつき歩いてみたりしようそうしよう。』
他のことなど忘れ、飯を食べる想像にふける。
『あ、あの飯屋行こう!あそこは美味しかった記憶が…』
早歩きからスキップになる。無邪気に心を踊らせながら記憶の中の地図をたよりに遊歩する。久々にこの街に来たからなのか、幼い子供が初めて遊園地に来たかのように全てが新鮮で美しく感じた。
騒がしい街、走り回る子供を追いかける家族、煌びやかな建造物に美味しそうな匂いのする飲食街。
それにー
「おーい!ノアさんだろ?あんた!」
どこからか名前を呼ばれる。声のする方に行くと目を向けると屋台の店の店主らしき人物が自分の方を見て手招きをしている。
「そうです…けど、どうされましたか?」
「あんた勇者だろ?魔王倒してくれるらしいな。応援してるぜ。お仲間さんは?」
勇者は少し気まずくてお茶を濁す。
「えっと、別々で行動してるって感じですね、今は。ハハ。」
「えー、残念だなぁそいつは。せっかく勇者様を見れたのによ。ガハ。」
「あっ、ありがとうございます?」
苦笑いで笑い返す。なんも無いなら早くしろ!と内心思っているが勇者という立ち位置なので言えない。
店主は少し声を小さくして続ける。
「うちの親父がな、魔物には世話になってんだ。もう天国逝っちまったし、俺は戦闘のスキルがなかったからよ、こうして肉屋してるけど…お前らにならやれると思ってるぜ!あーそれと、また新聞に載る時はよぉウチの店の宣伝、してくれよな。がはは!」
勇者は優しくニコッと笑い、「ありがとうございます!」と元気に言って立ち去ろうと振り返る。
「それだけだ。ごめんなぁ時間取っちゃってさ、ノアさん。ガハ。」
「また来ますね。」
振り向いて一言だけそう言い残し、その場を後にした。
…街の人たちも暖かい。本当に素敵な街だ。
戦いのスキルがない人達もこうやって一人一人がそれぞれの想いを持って自分のためじゃなく誰かのために戦ってる。
『色々あったけど、この街で育ってよかった。』
街を眺め、ぶらぶらと歩いていたら一つ分かったことがあった。この世界の今、勇者がいるこの時系列はこの街を救った"後"だ。
『俺たちはここから旅を始めた。次の国に行く道中で魔物たちの巣窟を制圧したら魔物から搾取されていた食糧の問題が解決したんだっけ。』
嫌な記憶がフラッシュバックする。
『俺左手動かなくなって泣きそうだったんだよな…シヴァンいなかったら終わってたし…。』
そんなこんなで結局重症を治すため、そして勇者が街を救った歓迎パーティーのみたいなのを開くためにこの街に戻ったんだ。街の飾りにも合点がいく。
色んな思い出を懐古しているうちに狭い街道を曲がり小広場を抜けたらあと少しで飯にありつけるというところまで来ていた。
すると、道の先で何やら騒ぎになっている。
「お前軍の人間だろ!?」という声がした。
声のする方に目をやると少し離れた先に人集りができていた。その中に人目も気にせずに誰かに大声で発狂している男が見える。街の住民たちから引き剥がされているように見える。
『1番関わりたくないタイプのそれやんけ〜…だけどな〜…うーん、どうしよ。』
正直ガン無視して飯を食いに行きたいと考えていたが、勇者は性格上どうしてもこの騒動を放置することができなかった。そしてこの街に勇者として存在している以上ガン無視して飯屋に入ると家族連れに冷たい目で「ママー、勇者のくせに人助けしないのぉ?」「こらっ!見ちゃダメです!」とか言われるに違いない。
そうとなれば勇者としての地位とか名誉を穢してしまう。
『それだけは避けなくてはッ!』
素早く現場へと近づく。
「すいません、少し通してください。」
名誉のため仕方なく助けに行くことにした。どうせしょうもない理由だろうと思った勇者はため息を吐く。近づいてザワつく人混みの中の前列の方を覗き込む。人混みの中から顔を出すと起きている事とその様子が明らかになる。
自分より幼そうなちっこい男の姿とそれを取り押さえる住人そして…その男にフィリアが胸ぐらを引っ張られている光景だった。
「妹はどうなった!?応えろ!!」
「そんなこと言われても…知らないものは知らないです!」
「黙れ!黙れよ!お前らは…!勝手に妹を軍医にして…クソォ!あいつはなぁ…!ぐっ…離せ!」
「落ち着け。」
気づいたら身を乗り出してフィリアを掴んでいる男の手首を掴んでいた。
勇者はその男を黙らせた後、手を引き剥がして取り押さえていた住民も離れさせた。
「はぁ…はぁ…」
男は涙目で勇者たちを見つめながら歯を食いしばりながらこちらを見ている。激昂しているように見える。
「俺はこの国の人間じゃない。」
そして背中に手を優しく添えながら小さく語りかける。
「俺らは勇者だ。この国のシンボルがこいつの服についてるのは他国との連携で旅の援助をしてもらってるからなんだ。」
勇者パーティは魔王城の道までを他国から援助してもらうため、勇者として旅をする三人は他国のシンボルマークが各々の装備に装飾されているのだった。
まぁ別の適当な国を言えばこの国の者ではないという嘘を言いくるめられるだろう。と考えていたその時には既に男は俯き、黙っていた。
「………」
勇者は小声でそのまま続ける。
「ここじゃ話せないから静かなところに行こうぜ。俺らの宿来るか?」
それを聞いて表情が暗くなり、そのまま弱く頷いた。
この状況をひとまず落ち着かせられた勇者はフィリアを心配する。
「フィリア、大丈夫か?」
「あ、だ、大丈夫っス。」
「良かった。」
とりあえずフィリアにも問題は無い様なので安心した。
「人目が多いからあとは宿屋で話そう。フィリアついて来てくれ。」
「分かったっス!」
「君もだ、着いてきてくれるか?」
勇者は男に近寄って言う。
「君、名前は?」
「オイジュ・スアン、です…。」
彼は小声でそう応えた。勇者は優しく微笑みながら顔を見て「スアンか、いい名前だね。」
「スアン君来てくれ。」
「あのさぁ…フィリア」
「はい、なんスか?」
「…飯食った?」
「まだっスね。それがなんスか?」
「よし」
「…?なんか言ったスか?」
「なんも」
『とりあえず今は優先順位が違うか。スアン君もいるしな…』
「フィリア、今はとりあえずスアン君を連れて宿屋に戻ろう。」
「そうっスね、スアン君も着いてきて事情聞かせて?大丈夫だから。」
「…フィリア語尾変じゃね?」
「何がっスか?」
「スアン君の時だけ違くない?」
「シヴァンさんとノアさん、それ以外の人たちで使い分けてるんスよね。」
「あぁ…」
『なんだそのこだわり…』
「じゃあ二人とも、行こう。」
宿屋へ戻る道を進もうとしたら、フィリアが肩をトントンと叩いてきた。
「そーいえばノアさん!忘れてたんすけど、おはよっス!」
フィリアが勇者に向かって明るい笑顔を向けながら挨拶をしてくれた。思わず笑顔につられて微笑んでしまう。
「ふっ…うん。おはよ。」
頭を搔きながら笑顔でそう言い返した。
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