第二話-再び
構成が思い浮かんでから思った以上に長引いてしまいました、本当にすいませんでした。
添削はいつも通り雑なので変な部分は言っていただけたら嬉しいです。あと感想やブクマもぜひお願いします。
第ニ話-再び
もう、無理だと思っていた。二人に会うことなどできないと思っていた。
あの後、国の人達に回収されて、ニ人の生存報告をここで待って、王宮に呼ばれて二人は蘇生の仕様がないから諦めてくれという非情な報告を聞かされて、何も考えられなくて放心状態のままこの数日間を過ごしたのを思い出す。
自分の変わり果てた状態が国内で騒ぎになったり、それで王宮の医療従事者達が俺の心の状態を気にしてカウンセリングを行ったりもした。
ここ数日間のぼんやりした記憶が蘇ってくる。
また会えるという可能性が芽生えてなんだか身体に力がみなぎってきた。
そして二人に会いたいという思いが再び心の奥底から湧き出てくるのを感じた。
俺の願いは...…!願いを口にしようと勢いよく立ち上る。だがその時、イリアムが言った。
「つまり、時を戻してあげるってこと。」
「……え?」
イリアムは言うまでもなく俺の願いを分かってました。みたいな感じでそう言ったが、何を言っているのかさっぱり分からない。
「は?え?……いや、いやいや、二人を生き返らせてくれないのか?それが俺の願いなんだけど!?」
願いを叶えてもらう立場でありながら生意気な態度をとっているのは自分でも分かっている。だが叶えるって言ったからには叶えてもらうまで引き下がれない。
そしてイリアムは落ち着いた口調で言った。
「この世界は不思議な力で溢れてる、魔法とか、呪いだとか、他にも色々あるでしょ?でも、どんな力を以ってしても完全に死した者を蘇らせることはこの世界の誰にもできないのよ、それは私達もそう、精霊の力だろうが、死んだ人間を救うことはできないのよ。」
「でもさっき叶えるって…」
「何でもとは言ってない。」
精霊とかいう特別で凄そうな存在を初めて見ただけで、何でも夢が叶うと何故か勘違いしていたらしい。さっきの興奮とは打って変わり勝手に落胆し、ベッドに腰をかける。
まぁ、勝手に期待した自分が悪いから何も言えないのだが。
「あなた達も死んでしまった人たちを見たはず、二人は蘇生してくれた?」
図星をつかれ黙り込む。生き返らせることが無理なのは分かったが、夢を見せるだけ見せてなんだよと内心落ち込む。
わかりやすく不貞腐れる勇者を見て、イリアムはフワーっと近づいて肩を叩き、顔を無理やり自分の方に向け、笑顔でこう言った。
「でーーも!私は時を司る神みたいなもんって、さっき言ったでしょ?時間の指定は無理だけど6ヶ月くらい時を戻す魔法があるのよ。この魔法は私の得意な時間魔法の最上位、しかも精霊である私にしか使えないもので、これを唱えればあなたはまた旅をすることになるけど二人に会えることになるわ。」
だが勇者は励ましてくれているイリアムから目を逸らす。既に一度この手の中で二人が死んでいるから何とも言いづらい。
仮に旅をするとして、もう一度自分に二人を守る権利があるのだろうか。またあの結末を迎えてしまうのではないだろうか。不安感が勇者の思考を蝕む。
「あんたならやれるわよ。一度魔王を倒してるんだしさ。」
心を読んだかのようにイリアムはそう言う。
「でもこの魔法を使うならいくつか気をつけて欲しいことがあるの。」
イリアムは神妙な面持ちで話し始めた。
「時を操るこの魔法は、魔力によって世界に大きな影響をもたらす魔法、正しく唱えなければ恐ろしいことになるわ。」
「何が起きるんだ?」
閉じていた口を開き、その真意を問う。
「今のままだと魔力が足りなくてあなた達が今までしてきた旅と少し違う道を辿ることになると思うわ。」
イリアムは時を操る魔法について詳説しだす。
「魔法で時間を戻すと、ある二種類のものを除いて普通に時が戻るんだけど、その二つっていうのは"時を戻す前、そこに存在してたけど時を戻した時には存在していないもの"と"時を戻す前には存在しなかったけど時を戻した時には存在していたもの"に分けられて、時を戻すと前者は魔力によって再生されて、後者を一度消滅させることになるの、つまり、今から時を戻すと、半年前はなかったけど今はあるものが消えていて、逆に今なくて半年前あったものは元に戻っている、それは魔王もそうね。これは分かる?」
「まぁ...…わかる。」
「さっき言った二つのうち前者のものは時間を戻す前の通りの史実に時間を追って元通りになっていくんだけど、後者のものを創るには多大な魔力が必要となるの、そしてそれが命ならもっと多くの魔力が必要になる、亡くなってしまった人や死んだ魔物の数、つまり一度生命が終了したものの数に比例してコストがどんどん高くなっていくの。そして魔力が足りないとどうなるかっていうと、時間を戻して元の世界を形成することができなくなるの。」
「もしかしてお前だと魔力が足りないのか?」
恐ろしい直感が働く。それに対してイリアムはこう返した。
「精霊は確かに人間や魔族を遥か凌駕した魔力を持ってるんだけど、時を操る魔法は世界に影響をもたらせるほどの強力で、私でも足りないほどの膨大な魔力が必要なの。」
背中に悪寒が走る。
「それで?」
「そして、魔力不足が起きると、もともと存在していたものを無理矢理再生することになって、魔力が少ないと歪んだり、曲がりくねっていたりと、形を変えてしまい、"元からこの状態で存在していた"となってそれが正しい史実になるの。」
(ということは...…)
焦燥感に駆られて矢継ぎ早に質問をする。
「じゃあ二人は…?どうなるんだよ!?」
思わず叫ぶ。
「今のままだと別人になっちゃうかもね。」
勇者はその言葉を聞いた瞬間噛み付く。
「なんだと……!」
顔に怒りを滲ませ、勇者はギリッと拳を握り締める。
時間を戻したとしても二人がいないんじゃ今とおんなじのままだ。
その様子を見たイリアムがすぐさま口を開きこう言う。
「でも、それは魔力が足りなければの話よ。魔力が足りれば全て正しい史実になるわ。」
それを聞いた勇者は握りしめていた拳を開き、まだ少し興奮した状態で、大きめの声で言った。
「魔力が足りるかもしれないってことか?俺は何をすればいいんだ?」
イリアムはニコッと笑う。
「さすが勇者様、理解が早くていいわね。ちょっと大変だけど手伝ってもらうわ。」
イリアムが真剣な目つきで喋りだす。
「まずこの魔法、私一人じゃ無理でもあなたと私の二人で唱えたら魔力が足りるの。」
勇者は言ってることが分からなかった。
「俺?なんで俺みたいな魔法使いでも賢者でもない奴の力が必要なんだ?あの二人よりも俺は魔力が弱いんだぞ?」
自分でもこんなんでどうやって魔王を倒せたのか気になるくらいには魔力が弱い俺に...…なんで?
「あんたさ、魔王城でバカみたいに大きなサージ起こしたでしょ?」
「は、え、あれサージなのか!?」
サージとは魔力による波動のことであり、その魔法の強さのことである。
(...…まぁ、確かにサージ以外に説明がつかない...…よな)
自分にそんな力があるということを信じられない。
「あれはあなたの奥底に眠る魔力の資質が、魔王との戦闘、そして二人の死をきっかけに感情が昂ったことで覚醒して、その覚醒の力であれを引き起こしたんだと思う。」
覚醒、聞いたことがある。数々の死戦をくぐり、生き残り、戦い抜いた者が、大きな感情の昂りによって身体能力や、魔力などのポテンシャルを限界を越えて引き出すというものだった気がする。
「つまりあなたは魔力が覚醒して、まぁ何が言いたいかっていうとあんたの魔力は今ものすんごい強力で他の魔術師の何倍もの魔力を持ってるからあなたの力を借りればこの魔法完璧に唱えられるかもってこと。」
ということはじゃあ……
「今、実際俺の魔力は今どのくらいのものなんだ?」
魔術には詳しくない勇者がイリアムに聞く。
「あのデカさの城とその城下町を同時に、かつ完全に消し飛ばすほどの威力のエネルギーを出せるから、私と同等くらいのものよ、例えるなら大賢者とかよりもかなり上位の魔力を持ってることになるわ。」
「大賢者よりも上位の...…!?」
勇者は驚き、自分の手を不思議そうに見つめる、自分の体には今そんなに膨大な魔力があるのか?と。
理解が追いつかない様子の勇者にイリアムは言う。
「まぁここまで長く話したけどさ、あたしはあなたに償いをしたくて、あんたは二人を救いたいっていう状態で二人とも目指すところは一緒だと、思わない?」
言われてみれば確かにそんな気もする。
「私は時を戻してあなたに幸せになって欲しいし、利害の一致ってやつよ、この魔法でまた世界を救うことになっちゃうけど、あなたならできる、この世界をもう一度救えるはず、あっ、私を助けるってこと忘れないでね?」
そう言うとイリアムがこちらに手を伸ばし、何かを唱え始めた。
何かと思っていたら、頭の中に突然何かの魔法を唱えるイメージが湧き上がる。これが恐らく時を戻す魔法のやり方だろう。
「すごいでしょ。経験をイメージにして相手の脳に直接伝えることができる魔法、あんたにこの魔法の唱え方を今伝えたから、これならできそうでしょ?」
なんだかわからないがなんとなくいけそうだなと思った。
「その通りにやれば過去に戻れるようになるわ。早速始めましょ。」
イリアムが元気に言う。
ふと、今になって時を戻すという大きな規模の魔法に少し怯む。本当にこの魔法を唱えていいのかとか彼女を本当に信じて良いのかとか考えた。
だが、その躊躇は勇者の二人を救いたいという思いにすぐにかき消された。
勇者は自分を信じ、イリアムに小さく頷くと、彼女も頷き、魔法の詠唱を始める。
それに続くように詠唱を始めてみる。
イメージ通りに、目を瞑り、両手を前に突き出した状態で部屋の壁に感覚で魔力を与える、するとそこに魔法陣が描かれていく。身体がここに存在する全ての力の流れを感じ取っている感覚、自分もその力の一部に溶け込んで一つになっているような感覚になる。
大体一分が経った。魔力を与え続けるのは初めての経験だがとても辛い、まだこの大きな魔力の扱いに慣れていないからだろうか、それでも勇者は踏ん張り、魔力を流し込み続ける。
「イメージだけしか分からないのに、感覚だけでよくできるわね。やっぱ覚醒の力のおかげかしらね。」
イリアムがそう言っていたら、魔法陣が完成した、それと同時に青白い光を放ち、壁からゆっくりと剥がれ、前に回転しながら浮き出てくる。
部屋の真ん中に美しい模様の大きな青白い光を放つ魔法陣が出来た。
詠唱が終わった、どっと疲れ思わず膝に手をつく。
「ほら、息整えて。」
イリアムが近づき、勇者は体を起こして、大きく息を吸い、そして吐く。
「これを破壊すると多分時が戻るはずよ、さっさと時を戻しちゃいなさいよ。」
しかし、再び迷いが生じる。
異様なまでの親切さ、彼女の言葉、何か引っかかる。
彼女の言葉は本当に信じられるのかがまだ分かりきっていないのに詠唱してしまったこと。
今までボーッと言われるがままにここまで従ってきたことを思い出す。
根拠のない感覚だがなんだか良くないことが起きている気がしてならない。
全てを疑い始めたが、どれにも確証はない、ただ疑っているだけ、心のどこかで常に裏切られるような気がしてならなかった。ただ一つ確かなのは、もう二度と裏切られたくないということだ。
(ベリアル...…)
彼女の顔を見ると、魔法陣の方を向き笑みを浮かべているが、瞳の奥が黒く底が見えないように見える。
「さぁ、早く行きましょう?」
...…この判断が間違えていても、それでも、二人を守る手段はおそらく……これ以外ない。
「どうしたの?」
イリアムが声をかけてくる。
「何もない、やってみよう。」
そう言った割には足がすくんでしまい、前進しようとしても歩き出せない。
動けよ……時を戻して二人を助けるんだ……
自分に自己暗示をかける。とりあえず前に進もうと必死になっていた時だった。
背後から温かくて柔らかいものが勇者の体を包んだ。
「んっ…...?!え!?」
急な出来事に変な声が出る。ここまで神妙な空気だったからクールぶっていたが、勇者であろうが立派な男なのだ。興奮して身体が熱くなり、目が泳ぐ。
「ふふ、変なの。」
背中に胸が当たって、なんだか息苦しい。触り心地がフニフニとした綺麗な手が肩に乗っかると、今度は体が鉄のように固くなって動けなくなる。精霊は化粧品を使うのか知らないが、彼女からはいい香りがする。
「...…怖いんでしょ?いろんなことが不安でしょうがないんでしょ?」
何も言えず、黙り込む。高揚と緊張で喋れないというのもあったが、胸が締め付けられるような苦しさもあった。
顔のすぐ横でクスッと笑い、イリアムは優しい声色で話す。
「これからの事は心配しないで。あなたはこれからまた旅をすることになるけど、その力があれば皆を今度は守れるはず、あたしも救い出せるはず、私も、きっと二人もあなたを信じてるよ。」
黙ってその話を聞いていた。甘い声と温かい言葉で励まされて、疑心が吹き飛んだ。
確かに二人があの時諦めなかったように、俺もこんなとこで諦めてらんないな。
「短い間だったけどありがとね。またどこかで会いましょう。」
そう言うとイリアムはフヨフヨと浮きながら後ろに下がっていき、「さっさと壊して世界救っちゃいなさいよ」と笑顔で言う。
勇者にもう迷いはない。そして自覚する。退路はない、救うには今は前に進まなきゃ何も始まらないと。
「これどうやって壊すんだ?」
「パンチとかでいんじゃない?」
「わかった。」
勇者は少し黙ってから言った。
「……なんかそっけないなおまえ。」
「それが何よ。」
勇者は二人を救うチャンスをくれたイリアムに最後に短く言葉を交わしたくなっただけだった。そしてもう一言、イリアムに「また会おうな」と言った。
何だか言葉が上手く出てこなかった、本当は感謝したかったけどなんか照れ臭かった。
そしておもいきり拳を魔法陣にぶつけてみると、鏡のように弾けて割れる。
背後からイリアムが「またね」と言ったのが聞こえた。
これからは更新頻度考えます…おそらく3〜7日くらいに一回出るくらいの頻度になるかと思います。次からも頑張って投稿するので何卒よろしくお願いします。




