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リザルトと三ツ町


 リザルト画面を無視して、周囲を確認するも2人は見当たらない。

 逃げたのか、身を潜めているのか。

 それでもモンスターでしか攻撃できないようだから、問題にはならない。

 

 さ、リザルトはまずレベルからだ。

 基礎レベルは14から16へ。

 大太刀スキルレベルが8から10に、軽防具のスキルに変化はない。

 攻撃を受けない限りレベルが上がらないなら、軽防具のスキルはいらないかもしれん。

 

 確認して画面を閉じると、ドロップアイテムの画面かと思ったら、スキルの画面だった。

 『『QAZ』の行動からスキルを取得しました』とある。

 このゲームは人の行動からスキルが取得できるらしい。

 物言わぬ店員よりも、こういう所にお金をかけているみたいだ。


「経験スキル『大太刀の使い手』を入手ねぇ」


 スキルポイントを使う以外のスキル取得方法を知れたのは良いけど、思っていたのと少し違う。

 てっきり弾きに関するスキルだと思ったのに、大太刀使用中に影響するスキルとは。

 スキルの効果は『大太刀の使い手:大太刀を握っている時の行動に補正が入る』とあるけど、実際の効果が分からない。


 攻撃力が上がるのか、防御力が上がるのか、移動が速いのか、分からない。

 もう少し親切でもいいと思うんだけど。


 次の画面に移ると、ドロップアイテムだった。

 大量の毛皮と毛、イノシシと狼、猿のものまである。

 他にも見慣れたインベントリの肥やし『汚染された世界樹の枝』も大量だ。

 ひとつだけ、色の違うドロップがあった。


 通常は透明な背景にアイテムが表示されているけど、そのアイテムだけは薄赤い背景だ。

 アイテム名は『炎猿の焦樹手甲』とある。

 『炎猿の焦樹手甲:炎猿が着けていた汚染された世界樹の枝の手甲。己が命とともに穢れを焼いた戦士の手甲は、相対した者しか装備できない』


 とても貴重そうだから、売れなさそうだ。

 3か月しかしないから、毅に渡してもよさそうだな。

 装備できるかは分からんが。


「これ、装備効果強すぎだろ!」


 フレーバーテキストの後には装備した時の効果が書かれている。

 『装備すると『QAZ』の基礎レベルの1.5倍のATK、DEFを追加し、1対1の戦闘時に称号『炎猿の決闘者』の効果を高める』

 よく読んでいくと、知らない称号がある。


 もしやと思って、ドロップアイテムの確認を終えて画面を閉じた。

 『称号:炎猿の決闘者を獲得しました』とある。

 効果は1対1の戦闘で行動に補正が入るらしい、ドロップアイテムの手甲を装備していると、より効果が高くなるとあった。


「装備させた過ぎるだろ!」


 色々ありながらも、戦闘後全ての確認を終えた。

 今は0時10分頃、俺は1時間以上戦闘していたようだ。

 自覚すると、リザルトを見て上がっていた気分が疲れで下がっていく。


 さっさと拠点を更新して、寝よう。

 先へ進む前にもう一度周囲を確認するも、2人の姿は見えない。

 もう気にすることもないだろう、養分にしたんだから。


 クエストのピンに向けて歩いていると、三ツ町が見えてきた。

 次グ町よりも堅牢な町だとひと目で分かるのは、見張り台のようなものがあるからだ。

 弓を持った人が上に、下には槍を持った兵士が2人いた。


 通行人のいない道を歩いて近づいていくと、ムービーが入る。

 町の周囲をひと回りして、少し離れた場所で『三ツ町』と表示された。

 石の壁で囲われて、いくつか見張り台があるようだ。


「名前とここに来た目的を言え」

「カズ、世界樹に選ばれた」

「そうか、通れ」

「はい」


 口数の少ない兵士は問いかけと返答しかできないのかもしれん。

 返事してから見続けていても、動くことはなかった。

 兵士も節約対象だったらしい。


 町へ入るとクエストが完了した。

 それと同時に交易所のシステム開放通知、交易板というものを受け取る。

 どうやら交易板を持っていると、ゲームシステムを使えるというものだった。


「アイテムの取引なんて、俺はしないだろう」


 3か月しかするつもりはないからだ。

 貴重そうな手甲も装備はしない。

 雑貨屋で売却だけして、今日はさっさと寝よう。


 マップを開いて雑貨屋へ向かうと、大量のアイテムを売却した。

 手元のお金は2万ゴールドになっている。

 装備の更新をしたいけど、それよりも拠点の更新をしてから、ログアウトだ。


 雑貨屋を出ようとすると、近くにプレイヤーがいた。

 あの2人を見て以降は他のプレイヤーを見ていないから、珍しい。

 売却の邪魔にならないように外に出よう。


「あの!」


 周囲を確認するも、俺以外の人はいない。

 プレイヤーやNPCもいないから、俺に声を掛けたようだ。


「はい」

「大量に売却していましたよね」

「はい」


 プレイヤーは女性のようだ。

 見た目は好きに変えられるし、声すらMODで変更できる。

 ただ、女性らしい動きが多いからそう思った。

 髪色がピンクで、名前は『ノスロー』というらしい。


「助けてもらえませんか?」


 来たぁ!

 死にゲー名物『手を貸していただけませんか?』といっしょだ。

 いや、ここは死にゲーじゃなかったか。

 疲れで思考がブレているようだ。


「困難を越える事こそゲームの醍醐味です。頑張ってください」

「お願いします。このゲーム初めて3日目なんです」

「俺は今日始めました」

「はい?」


 テキトーに話を流して逃げようとしていると、ノスローの近くを世界観に合わない丸くて白い機械が浮遊していた。

 俺が体を左右に振ると動かず、ノスローの動きに追従している。


「今日、始めたんですか?」

「そうだけど。その機械は何?」


 驚いているノスローの質問をサッと答えて、聞いてみた。

 見る限りはカメラだと思うけど、録画用の設定をするなら複数台用意するはずだ。


「これは、配信用のAIカメラです」

「生配信ってやつだ! 人気なの?」

「まあ、そこそこです」

「それでご飯食べてんの?」

「はい、そうです」

「すごい。あ、そうだ!」


 それで飯を食えてるなら、ちょうどいい。

 宣伝する力もあるだろう。

 頼みを聞いたら、頼みを聞き入れてくれるかもしれない。


「で、えーと……」

「俺、頼み聞くからさ。『ゴーストリリース』ってゲームしてくれる?」

「うーん……」


 ノスローがしばらく悩んでいるなか、俺は視界の時計を見ていた。

 0時25分を回ったところだ。

 眠気はひどいけど、答えを聞かないと眠れない。


「あの、視聴者と相談してもいいですか?」

「はい」


 ぶつぶつと視聴者と話している声が聞こえてくる。

 俺はすぐログアウトできるように、マップから宿屋を探しておく。

 ログアウト前に録画の設定、ログアウトしたらスクショのファイルを確認しないと。


「あの……」

「はい! ゲームしてもらえますか?」

「いえ、やめておいた方が良いと言われたので、この話はなかったことに」

「そっか。VRは苦手?」

「好きですけど、下手です」

「それなら『ゴーストリリース』した方がいい。俺なんて他のゲームなんてこれしかしてないんだよ?」

「そうなんですか?」

「ゲームが上手くなるよ。たぶん」

「でも、やめておいた方がいいと言う事なので」

「そっか。残念、配信がんばってね」

「はい。ありがとうございました」


 布教できなかった俺は宿屋へ向かった。

 『ゴーストリリース』の世間的な評価を俺は知らないんだけど、悪いものではなかったはずだ。

 ゲームの販売サイトでは賛否両論で、否定的な意見の人は優しい人たちが多かったと思う。

 優しさを持ちすぎるとダメだと教えてくれる、いい教材なのに。


 拠点更新をすると、録画に関する設定を開く。

 しかし、どうみても今まで設定項目が違うことに気付いて、俺は諦めた。

 今日はもう、考えるよりも眠りたい。

 次、ログインする前に調べよう。

 後回しにした俺はログアウトした。

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