購入と新たな縛り
家に着いた時には毅がコードを送って来ていた。
ホームページから3か月パック5500円を購入し、毅にスクショを送る。
製品版のダウンロードのために、データを確認すると大容量だった。
仕方なく、もしものために買っておいたデータガラスを接続して、そこに書きこませる。
死にゲーの新作用に買っておいたものだけど、大容量だとデータガラスの方が動作は早い。
とはいえMMOだから完全オフライン環境でする死にゲーよりもデータが少ない。
これからのゲームがどれだけ続くか、次第な所はあるけど。
ダウンロードを待つ間に投稿しておいた動画を見に行くと、変わらず約200回の再生回数。
でもすごい、200回も見られてるってのはいいことだ。
最初の動画は10回の視聴で、嬉しかったんだから。
コメントを見ていくと、いつも書き込むコアなファンの中に知らない人がいた。
内容は日本風の装備縛りで全ボス周回してくれとある。
今時じゃない日本語だったから、古い翻訳なのか、日本語を学んでいる海外の人だろう。
やはり海外人気は高いゲームなんだな。
そのコメントにのったぁ!
ゲームを起動して、最新のデータをロードする。
インベントリから日本風装備を出して、いくつか試していく。
最終的に重めの甲冑装備、武器は戦場大太刀という大剣の部類にした。
普通の打刀では全ボス周回しているから、大太刀にしたけどMMOで使うから、ちょうどいい。
最新のデータは周回したばかりのデータだ。
最初のチュートリアルボスを倒し終え、その後のボスを倒して、オープンワールドに放り出されたばかり。
近くには徘徊する最弱モブがいる。
「お前らでお試しじゃあ!」
粗末な服を来た兵士に切りかかる。
走りと振り下ろしで通常攻撃以上の威力が発揮され、一撃で兵士を倒し切る。
「大剣だから、このくらいはな」
問題は取り回しと弾きだ。
重い部類の武器は弾きの猶予が長く設定されている。
その代わり、重くて動かすのが難しい。
攻撃に連続性が薄いし、それをしようものなら受けてもよろけないボスの攻撃で楽に倒される。
「弾いて一撃入れるのが、いいけど面白みがないよな」
連撃を決めてくるボスに弾きを決めて攻撃する。
火花が散って攻撃が連続するから見栄えは良いけど、大太刀じゃ難しいというか無理だ。
となると。
「弾きじゃなくて受け流しか」
弾きよりも猶予があるけど、ダメージを受ける防御法。
その代わり相手の体勢を崩させて、攻撃する隙を作れる。
体力偏重のステ振りしてないから、回復系アイテムを使いながらになるか。
いっそのこと、新規データで日本風装備を取りながら受け流し用のステ振りするか?
近くのモブを相手に受け流し練習しながら、考えているとアラームが鳴った。
18時だ。
ゲームを中断して風呂を終えると、リビングで全自動調理器から鮭定食を取り出す。
手を合わせて食べ始めると、玄関から音が聞こえてくる。
「ただいま」
「おかえり、母さん」
リビングに入ってきたのは俺の母さん、井上燈子。
疲れ切った顔から生き生きとした顔に変わった母さん。
最近ゲームしてなかったから、今日は出来るからだな。
「時間通りに夕食、きっちりしてる」
「ゲームするために時間通りしてるだけだよ」
「今日も鮭定食?」
「嫌なら予約しといてよ。電車で」
「文句ないでーす。それでそろそろテストでしょ、どうなの?」
そう言えばそうだったか。
特に勉強はしてないけど、一夜漬けでどうにかなるだろう。
覚えてることも多いし、これから授業受けながら復習すればいける。
「たぶんいける」
「たぶんって、赤点出したら小遣い、バイクなしだからね」
「分かってるよ。一年生の時、問題なかったでしょ?」
「この調子でね」
「うん。でさ、母さんはあのゲームまだしてるの?」
「あのゲームって『ゾンビサバイバルJP』のこと?」
「それ」
「今500日過ぎたところで、ゾンビ根絶させてるところ」
「ほんと物好きだよね。異臭と見た目最悪なゾンビに襲われるゲームして」
『ゾンビサバイバルJP』というゲームは、少ない生存者NPCと一緒に生存権を獲得するため、ゾンビ根絶を目的としたゲームだと聞いている。
オフラインとオンラインでゲームでき、オフラインは色々と面倒らしい。
「優人『ゴーストリリース』しかゲームをしない死にゲーの物好きに言われたくありません」
「『ツリーサーガ』を3か月始めるから」
「うそ!」
鮭定食を取って戻ってきた母さんの動きが止まった。
そこまで驚くことないのに。
俺がいろんなゲームしてもいいだろう。
「ほんとだよ。毅が招待ボーナス欲しいからある程度してくれって」
「虐められてる?」
「違うから、3か月分の料金まで払ってくれた」
「それはそれでどうなの?」
「問題ないよ、本人から頼まれたんだし、知らないゲームがタダで出来ていい!」
「それならいいけど、お金払ってくれたんだったら、最低限はしなさい」
「もちろん」
食事を終えた俺は、食器を洗浄機に放り込み部屋へ戻った。
稼働しているPCは『ツリーサーガ』製品版のダウンロードを終えている。
データガラスの書き込みも終わっていて、準備は終わった。
椅子に座ってVRルームへ移動した俺は、VRメニューから招待コードをコピーしてゲームを開始する。
ムービーをスキップして招待コードを入力し、製品版に体験版のデータを移行する。
しばらくして利用規約やらを同意していき、俺のキャラが表示され選ぶ。
その後に、なぜか決められていたサーバーをタップすると、ゲームが開始した。
気が付くと、ゲームを終えた場所と同じ町から一歩入った場所だった。
プレイヤーも数人見えるから、問題なく製品版のようだ。
俺の目の前には達成目前のクエストピンが見える。
一歩踏み出すと、クエスト完了した。
クエストの完了と製品版のログインで、大量の報告が表示された。
基礎レベルが6になったこと、製品版ログインの報酬で初級回復薬を10個もらう。
他にも運営からのメールだと、今後のイベント内容だとか色々あったけど、すべて閉じる。
結局は体験版から3か月分になっただけだ。
楽しみ方は俺次第だけど。
好きに楽しむため、まずは毅からのお願いを達成する必要がある。
第1章を終わらせることだ。
クエスト一覧を見ていくと、メインクエストと書かれてあるのは王都へ向かう事だった。
王都に向かうためのクエストは、俺がしていた町を越えていくクエストなわけだ。
三ツ町へ向かうクエストにピンを設定して、チュートリアルを見ていく。
体験版しかしないだろうと、見ていなかったから詳しくシステムを知らない。
死んだら拠点で復活して、拠点の更新は最寄りの町で行う、アイテムは雑貨屋で売る。アイテムには耐久値が設定されているから、手入れを怠らないこと。
インベントリからアイテムを見ていくと、耐久値は少しだけ減っていた。
次の町までは保つだろう。
多少お金を持っているから、それで拠点の更新をする。
マップを開いて近くの宿屋へ向かうと『建物の前で拠点の更新をしますか?』と表示された。
入らせてくれないようだ。
『はい』をタップすると、500ゴールドというお金の支払いを求められた。
再度『はい』をタップすると、総額が表示されてそこから500ゴールド引かれる。
どうやらもともと2000ゴールド持っていたらしい、モンスターを倒してもお金は落とさないみたいだ。
さ、次は雑貨屋でアイテムを売るぞ。