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砦の攻略と中ボス前


 走り出したノスローさんを追いかけながら、飛んでくる矢を弾いていく。

 ノスローさんを狙っているけど、偏差が上手くないから後に続く俺へ向かってくる。

 門前に到着し、門番にさっそく片手剣を振り下ろすノスローさん。


 普通は門の内側に入るけど、この世界では敵が向かってくる。

 だから砦が破られる。

 しばらく飛んでくる矢を弾いていると、門番を倒し切ったノスローさん。


「扉を開けて、突っ切るんですよね」

「そう、扉を開けたら真っすぐ走って」

「はい」


 ガチャ、と大きな音をたてて鍵が開いた。

 弾きながらもノスローさんが動き出すのを待つ。

 しかし、全く動きださない。

 確認すると、ノスローさんは扉に体を押し付けていた。


「ノスローさん、引いて開ける扉だよ、それ」

「え、あ、すみません!」


 謝罪しながら、扉を開けたノスローさんは逃げるように駆けだした。

 俺も急いで後を追いかけると、矢が大量に飛んでくる。

 そのまま走って行くと、どこに行けばいいのか分からずアタフタしてハリネズミになったノスローさんがリリースされた。


「ノスローさん、見ててよ!」


 真っすぐ行くと、大きな扉があってノスローさんはそこで行き止まりだと思っていたようだ。

 システムを教えていない俺が悪いな。

 走りながら勢いよく全身で大きな扉にぶつかっていく。

 すると、面白いくらい重さを失った扉は砕け散った。


「ノスローさん、リスポンできる?」

「はい、走ってここまで来ます」

「うん」


 大きな扉があった建物でしばらく待っていると、矢の刺さる音が聞こえてきて、ノスローさんがやって来た。

 背中に矢が刺さっているのは、ちょっと笑える。


「カズさん、扉が壊れるの言ってくださいよ」

「ゴメン、当たり前すぎて忘れてた」

「当たり前って、この後にそういうおかしな行動で突破する場所はありますか?」

「ない。けど、ちょっと明るい木で出来た物は壊せるって覚えてね」

「はい。じゃあ、急ぎましょう」

「うん」


 俺たちが入っている建物は砦の中央に建っており、ここの最上階に中ボスがいる。

 6階くらいあるけど、上に行くほど悪辣な敵が出てくるから、体感した後のノスローさんには出来るだけ優しくしよう。


 1階は探索できる場所があるけど、ノスローさんは先を急いでいるから上へ向かう。

 階段を遅れて上がっていくと、ノスローさんの悲鳴が聞こえてきた。

 楽しくゲームできているようで何よりだ。


 階段の下で待っていると、リリースされたノスローさんが近くにやって来た。

 火の玉も付いているから、色違いでフワフワ浮いている。


「カズさん! こんな離れた場所にいたんですか⁉」

「知ってるから、早くしないと時間が足らなくなっちゃうよノスローさん」

「はい」


 しばらく待っていると、今度は腕に矢の刺さったノスローさんが息を整えながらやって来た。

 持久力がないのは、運動をしてないのもあるだろうけど、割とリスポン地点から遠いからだろう。


「どうして、上から敵が降って来るんですか⁉」

「分からん。塔を登った方が早いのは分かった?」

「はい。でも、私は無理なので、階段を上がります」

「うん、気を付けて」


 今度は少し近くでノスローさんの後を付いて行く。

 階段を上がっている途中に降ってきた敵が待っていた。

 雑兵と呼ばれる敵で、薄汚れた鎧下に慣れない動きで片手剣を振って来る。


 ノスローさんは盾で防ぐと、そのままタックルして首に剣を突きこんだ。

 うれしいのだろう、ヘルムで隠れて見えないけど、こちらを見たのが分かった。

 しかし、敵の砦で何と悠長な事か。


 金属製の鎧の足音が聞こえてきて、ノスローさんの首に剣が振り下ろされた。

 糸の切れた人形のように動かなくなったノスローさんは、再度リリースされる。

 白い靄と火の玉、金属鎧を着た兵士が俺に向かってきた。


「あの⁉」

「何か言いたいかもしれないけど、リスポンしてからね」

「はい」


 両手剣を持った兵士の攻撃を弾く。

 攻撃パターンは覚えている。

 踏み込んでからは、振り下ろしと肩で体当たり。

 両手剣を胸の前に引き寄せてからは、キックと薙ぎ払い。

 レア行動では剣を放り投げて、徒手になる。


 大振りな相手の弾き練習には割といい相手だ。

 連撃系の弾き練習は小さい敵、普通の大きさの敵、大きい敵がいる。

 ノスローさんがこのゲームを楽しみ始めたら教えよう。


「あの、カズさん」

「ん?」

「どうして教えてくれなかったんですか?」

「敵の砦に入った賊だよ俺たちは、警戒しなくちゃ」

「いや、普通は難しいと思うんですけど」

「このゲームはこういうのが多いから、戦闘が終わったと思うのはランタンだけ、気を付けて」

「はい。で、この敵に攻撃してもいいですか?」

「うん」


 俺が返事をすると、背後から心臓を一突きしたノスローさん。

 それでも敵は倒れなかったけど、引き抜いた剣で首に一閃。

 敵はドサッと倒れる。


 2階の敵の残り1体を倒し終えたノスローさんは、上り階段を発見して上がっていく。

 今度は俺も近くで上がっていくけど、3階の部屋前で足を止めた。

 俺の行動を見ていないノスローさんは、ずかずか入っていく。

 この3階からは分かれていないワンフロアだ。


「あの、カズさん、なにも――」


 部屋の真ん中で俺を振り返ったノスローさんは、動きを止めた。

 その行動はノスローさんの内面をよく表していたけど、敵は理解しない。

 部屋の中にある箱から飛び出した敵は、ボウガンからボルトを発射した。


 針山となったノスローさんは、またリリースされた。

 こちらに近寄って来るけど、途中で動きを止めて復活したようだ。

 しばらく待っていると、ノスローさんは階段を上がってきた。


「あの、カズさん、辛いです」

「俺も最初は辛かったけど、それを乗り越えると楽しくなるから」

「どういうことですか?」

「こっちが罠をかけたり、奇襲仕掛けたり、面白いぞー」

「この先、奇襲されますか?」

「いや、この先は敵が多いだけ、6階まで続いて屋上に中ボスがいる」

「わかりました」

「6階から各塔に行けて、弓が取れるから」

「はい」


 雰囲気が暗くなったノスローさんは、奇襲されないことが朗報だったようだ。

 周回して色々武器を持ってると、こっちから奇襲できるから楽しいんだよな。


 階段で見ていると、怒りを開放したようなノスローさんがボウガンをもった兵士相手に無双していた。

 持ち替える時間を与えずに、盾を叩きつけ、片手剣を突き刺し、5体いた敵を倒し切る。


 下り階段からノスローさんのいる上り階段へ移動する。

 4階から6階の敵を無双状態のまま倒し切ったノスローさん。

 少し強い兵士もいたし、盾を持った兵士もいたけど、まるで気にならないくらい強かった。

 イラついて強くなるのはVRの特徴かもしれん。


「ノスローさん、この4つの扉から塔に行ける」

「ああ、弓でしたね」

「無双状態で忘れてるじゃん」

「あんなのばかりだと、忘れますよ」

「あんなのばっかりだよ。それより15時前だけど急ぐ?」

「ここから円卓まではどのくらいかかりますか?」

「30分もかからない」

「中ボス前で、30分かからない場所が目的地、2時間30分は余裕がある。賭けは私の勝ちですか、カズさん」


 勝ちを確信したような顔をしていると分かる声色だ。

 もちろん、まだまだ分からないと俺は言える。

 ノスローさんが中ボスの動きを予習していると、無理だけどないだろう。


「だといいね。さ、弓を取って中ボスに挑もう!」

「は、はい」


 塔に向かって弓を持った兵士を倒すと、確定ドロップで弓を取ったノスローさん。

 6階に戻ってきて、上り階段で先を見ている。

 俺は階段を上りきらずに待機予定だ。


「あの、どういう敵ですか?」

「見ればわかるよ」

「強いですか?」

「今なら全然っていうけど、最初は嫌になるくらい死んだ」

「え?」

「気を確かに持って、挑んでね」

「え、いや、あの、怖いんですけど」

「身を任せたら楽しいから」

「怖いですって!」

「さ、2時間と20分で中ボス攻略だ!」

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