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頼み事②と六ツ町前ボス


 たまに時間を確認しつつ、2人の状況を見る。

 飛び掛かりに対して弾きをしようとしているけど、都合の良い攻撃をしてもらえていない。

 間合いの取り方が上手くできていないからだ。


 しかし2人はそれを分かっているようで、ガードしてから移動を始めた。

 どちらも似たようなタイミングだから、2人は似たような経験をしてきたんだろう。

 しばらく弾きを試行錯誤しつつしていたけど、上手くいかなかった。


「2人とも、別のモンスターでするか?」

「できれば、そうして欲しいです」

「お願いします」


 2人はそう言うと、狼に大太刀を振り下ろして倒した。

 そのくらいできたら、普通に戦闘は出来ると思うんだけど。


「ここらに人型モンスターはいる?」

「はい。ゴブリンがいます」

「あと、猿もいます」

「じゃあ、ゴブリンだな」


 俺たちはゴブリンを探して移動を始めた。

 もちろん俺の目的地は六ツ町だから、その方向ではある。


「2人は『ゴーストリリース』したことあるか?」

「ないです」

「ありません」

「俺に話しかけてきたってことはノスローさんの配信見てたんだよな?」

「はい」

「はい」

「日曜の13時から『ゴーストリリース』するから、しっかり見てくれ」


 足を止めて2人を見ると、微妙そうな表情をしていた。

 死にゲーは苦手か?

 それともゲームしてるから無理か?


「予定があるのか?」

「見るよりは練習したいと思って」

「弾きの練習です」

「俺は『ゴーストリリース』しかしてなかったから、上手くなったんだぞ。見て、面白そうだったら買ってくれ」

「わかりました」

「一応、見てみます」


 新たに勧誘を成功させた俺は、足取り軽くゴブリンを探した。

 運よく、ボス近くにゴブリンの集団がいて、練習相手になってもらう。

 数は5体。

 最初に全員が1体ずつ倒してから、練習に入った。


 2人の弾き練習を見ながら、ゴブリンの攻撃を確認していく。

 基本的にゴブリンは素手で攻撃してくる。

 パンチ、動きの見やすい喧嘩キック、微妙な距離感は掴みかかりがあった。


 掴みかかりはガードしていると食らうから、避ける、攻撃で怯ませることが有効だ。

 でも、体の大きい敵の場合は怯まないから注意が必要になる。

 2人は攻撃を避けながら、弾きする攻撃を予備動作の大きい喧嘩キックにしたようだ。


 しばらく見ていると、黒っぽい防具の『ツミキ』の方から、金属の擦れるような音が聞こえてきた。


「今のは?」

「ダメージ受けてます」

「受け流しか。頑張れ」

「あの、カズさん。コツはありますか?」


 白っぽい防具の方『キアツ』が声を上げた。

 コツなぁ?

 ないよな、たぶん。


「ない。あっても練習法みたいなのだけで、どの攻撃でも方向を意識するくらいだ」

「はい」

「俺にアドバイスありますか?」

「ない、あとちょっとだろ」


 2人は競うようにして弾きの練習をしている。

 でも、練習でしかないんだよな、これは。

 戦闘中に攻撃しながら、どの攻撃を弾くか、避けるか考えながら動かないと使えない。


 だから、考えながら弾きをしているくらいなら、戦闘では全く使えない。

 大ぶりな一撃ばかりじゃないからな。

 でも、このゲームはどうなんだろう?


 俺が考え込んでいると、キアツから金属のぶつかり合うような音がした。

 見ると、弾きをしたときのエフェクトが散っている。


「できた!」

「はやー、俺まだだってのに!」

「ほら、頑張れ。あと少しだ」

「カズさん、俺出来ました!」

「片方が終わるまで練習してくれ」

「はい!」


 この2人は俺と同じくらいの年齢だと思うんだけど、子供みたいだ。

 いや、見た目はそうだから、中身が中学生とかの可能性はあるわけか。

 一応、対象年齢12歳以上だから、中学生以上であると思うけど。


 ツミキが弾きを出来るようになったのは、それから10分後くらいの事だった。

 キアツはその間に練習していたけど、全くできていない。

 最初はそんなもんだ。

 俺は動きの分かりやすい騎士系のボスで弾きを覚えた。


 ノスローさんもそれで特訓してもらうか。

 死にゲーをしたくなくても、弾きの練習に使えると分かったら新規で始めてくれるかもしれない。


「カズさん、急なお願いを聞いてくれてありがとうございました」

「ありがとうございました」

「2人ともできて良かったよ、練習頑張って」

「はい」

「はい」

「じゃあ、俺はここらで」

「はい」

「俺たちはゴブリン相手に練習しておきます」

「うん。じゃあ」


 2人に見送られながら、俺はボス前にたどり着いた。

 時刻は15時30分頃、今からボス戦だ。

 ゴブリンソーサラー2体は恐らく固定。

 他は固定じゃない、最初はゴブリン、次はゴブリンソルジャー。

 次はナイトか?


 ボス戦用の開けた場所に入ると、茂みから出てきたのは3体。

 『ゴブリンソーサラー(土)』『ゴブリンジェネラル』

 兵士の次に将軍が来るとは。となると次はナイトか?


 ソーサラーは変わらず杖を持っている。

 ジェネラルは重そうな鎧に大きな剣を持っていた。

 そもそも通常のゴブリンよりも体が大きく、身長が170ある俺よりも大きい。

 これなら期待できそうだ。

 

 俺は最初の標的ソーサラー2体へ向けて走った。

 それを察して、ジェネラルも向かってくるけど、足は遅い。

 前回よりは一撃で多く体力を削ったけど、それでも倒し切るには二撃必要になる。

 結構急いで攻撃して、どうにか2体を倒してジェネラルと相対した。

 

 ジェネラルがやってくるまでに2体を倒し切れたのは、運がよかった。

 コイツ、しっかりボスしてる。

 大剣を軽く振り回して、俺に攻撃する隙を与えてくれない。


 攻撃できても鎧の防御力が高いのか、頭上のHPゲージは1ドットと少ししか減らない。

 弾きをしながら、俺の頭がコイツはギミックボスなのかもしれないと考えた。

 そうとしか思えないくらいに、HPの減りが悪い。


 体力が半分になると鎧を脱いでくれるのかもしれない。

 そうなると、攻撃も通りやすくなるとかかな。


 嫌になるくらい弾きを続けて、少しずつ体力を減らしていった。

 振りかぶって攻撃をすることも出来ないから、仕方なく軽く突くくらいしかできていない。

 それでも、体力を半分まで減らした。


「さあ、来い!」


 すると、ムービーが入った。

 来た!

 持っていた剣を地面に突き刺して、両手を確かめるように何度も握り込む。

 ムービーは終わった。


「せめてヘルムくらいは、取れよ!」


 俺の言葉に返答はなかった。

 武器を捨て、拳を構えたジェネラルがいるだけだ。

 相手は身軽になったなら、俺が攻撃するチャンスはさらに減った。


 ジェネラル相手に大太刀を構えると、猛攻が始まった。

 ジャブから始まった攻撃は、慣れたような動きでストレートやフックに変化していく。

 どうみてもジェネラルよりはファイターだろう。


 たまにゴブリンと同じような喧嘩キックが出てくるのは、進化しても残るものが見えて面白くはある。

 喧嘩キックを弾くと、隙が大きいからか攻撃出来た。

 驚くくらいHPが減らないけど、そういうものだと慣れたら気にならない。


 ステータスを上げずに死にゲーをするようなものだからだ。

 最低ダメージだけでボスを倒すのは、あまり面白みを感じないから俺はしないけど。


 それから嫌なくらい弾きをした。

 このくらい攻撃してくるなら、あの2人にも弾きの練習としてゴブリンジェネラルを紹介したいくらいだ。

 倒し切って、リザルトが表示されたのは16時20分頃。

 俺は50分くらいボス戦しつづけていたようだ。


 この感じだと王都前のボスはもっとかかるかもしれない。

 長時間戦闘すると疲れるから、今日はレベル上げに変更だ!

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