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ノスローこと、ノススミ・サンロー②


 偶然の出会いに任せて助けを求めたら、私は死にゲーをすることになった。

 もちろん、私の頼みを聞いてもらうことも条件だけど。

 カズさんと話をしてみて、ネタバレがダメ、恐らくは戦闘が上手いと分かった。

 今は18時を過ぎたところで、カズさんが一度ログアウトして19時再度集合する予定だ。


「『ゴーストリリース』ってどうなの、実際?」

 〈アシストないはホント〉

 〈今セール中だぞ〉

 〈体が重い〉

 〈現実で出来るは眉唾〉

 〈大半が断念するゲーム〉


「セール中なら買っとくね」

 〈あ〉

 〈沼に嵌まらないように〉

 〈たしかマルチできる〉

 〈あのゲームは1人できない、怖い〉

 〈QAZを誘え〉


「マルチできるなら、それでもいいかも」


 その後も話していたけど、チャット欄はマルチ誘う派、誘わない派、そもそもしない派で分かれていた。

 私だけは武器の扱いが上手くなるように対策を考えてくれるのを楽しみにしている。

 19時に集合場所で待っていると、カズさんが来た。

 手を振ると、怪訝な顔で歩いてくる。


「テンション高くない?」

「方法を考えてくれたんですよね?」

「いや、特には」

「はい?」

 〈姉御〉

 〈デコボココンビだな〉

 〈考えてない男、期待した女〉

 〈性別は逆かもしれん〉

 〈新参かよ〉


「それならひとつずつ試してみるか?」

「分かりました」


 悪いと思ったのか、カズさんの提案で全ての武器を試してみることになった。

 その間にカズさんも色んな武器を試していたけど、上手なのは間違いない。

 〈さすが死にゲーしてる奴〉

 〈器用だな〉

 〈姉御は普通だな〉

 〈悪くないだろ〉

 〈器用な奴がいるからな〉

 〈比べると普通だ〉


「なあ、どれもそこそこ使えるけど、不満なのか?」

「いえ、どれか上手かった物を使おうと思っていたので。カズさんから見て、どれが一番上手かったですか?」

「片手武器なら何でもよさそう」

「でも、両手系よりも攻撃力、咄嗟の受けとか弾きも出来ませんよ」

「ノスローさんは受けと弾きできないから関係ない」

 〈事実は時として〉

 〈ひどいな〉

 〈実際できない〉

 〈しかたない〉

 

「言いますね」

「段々慣れてきた、割と言っても問題なさそうだから」

 〈あしらい方に慣れがでてきた〉

 〈近いな〉

 〈仕方ない姉御が頼んだし〉

 〈姉御は小物感がいいんだよ〉

 

「カズさんはできるんですか?」

「できる。それより23時30分までだから、さっさと熊を狩ろう」

「それなら、熊相手に弾きをしてくださいよ」

「うん」


 熊相手に弾きをさせてみたんだけど、普通にしてしまった。

 ひっかきの攻撃には出来ると知っていたけど、両前足の叩きつけに弾きが可能だとは知らない人も多かったみたい。

 〈あれできんのか〉

 〈さすがに上手いな〉

 〈合わせ上手くね〉

 〈体を動かして力の方向も考えて2フレで、無理だろ〉

 〈チートか〉

 〈死にゲーしてる奴がチート使うか?〉


 熊を狩って戻ってきたカズさんに残念なお知らせをしないといけない。


「ノスローさん、どうよ?」

「あの、私たちパーティー組んでませんでした」

「そうだ。忘れてた」


 急いで招待を送ると、承認されたけど、残念なことにカズさんは限定アイテムをドロップしたらしい。

 私がパーティー組むのを忘れなかったら、すぐに終わった頼みなのに。

 視界に追加されたカズさんのレベル見ると、ん? 18。


「18? 低くないですか?」

「そんなことないだろ。三ツ町前のボスへ挑むためにパーティー組んだけど、2人は18だったな」

「そうですか。お友達ですか?」

 〈姉御よりゲームしてないのに、MMOしてるな〉

 〈友達か〉

 〈わからんぞ〉

 〈コミュ強か〉

 

「いや、モンスターを集めて俺を殺させるつもりだった奴ら」

「はあ?」

「ほら、俺は今から大太刀使うから、レイピア使ってドロップ取るぞ!」

「え? はい」

 〈いま、へんなこといってたな〉

 〈初狩りだろ〉

 〈モンスター引き寄せる煙のヤツ〉

 〈話を避けたな〉


 その後、熊を探して移動しているとマルチについて話をした。

 私は1人でするべきかもしれないと思ったんだけど、視聴者が脅かすから保護者同伴してもらう。


「カズさんは、どうしてこのゲームをしてるんですか? 流行に乗ってしている訳じゃないんですよね?」

 〈しりたい〉

 〈何でしてるんだ?〉

 〈流行に乗っているってww〉

 

「友達が招待ボーナス欲しいからって、金払ってくれた3か月分」

「5500円ですか」

「うん。だから3か月だけこのゲームして、第1章をクリアする」

「それ以降はこのゲームをしないんですか?」

「うん。『ゴーストリリース』に戻る」

「あ、そうですか」

 〈おかしい〉

 〈戻るって〉

 〈死にゲーに汚染されたQAZ〉

 〈姉御、帰ってこい〉


 熊の限定ドロップが出ると、ミサンガの詳細を聞いてきた。

 どういう効果か聞いてきたから教えはしたけど、たぶん別のミサンガだったんだろう。

 その後、VR機器自体のフレンド登録をして、三ツ町で分かれた。

 次に会ったのは四ツ町で、武具屋から出てきた時だ。


「すみません」

「いや、カズさん、私ですよ」

「ピンク色の髪、ノスローさん?」

 〈髪色か〉

 〈頭上に名前あるのに〉

 〈覚え方〉

 〈これが死にゲーマーか〉

 

「また会いましたね。て、言いたいんですけど、ひどい覚え方してませんか?」

「そう?」

「そうですよ!」

「体すべてが好き放題弄れるんだから、色で覚えない?」

「確かにそうですけど、見た目で覚えます」


 四ツ町前のボスに関する話をしていると、いつもよりもチャットの流れが速い。

 何かと思ってみてみると。

 〈おい、腕〉

 〈腕〉

 〈腕見ろ〉

 〈話を伸ばして、検証させろ〉

 〈のばせ〉

 

 私も最初は何か分からなかったけど、カズさんの腕に虹色のミサンガがある。

 たしか条件があったはず。

 チャット欄を見ていると、情報まとめるコメントが流れてきた。

 なるほど。それはみんなが驚くはずだ。

 

「それで、あの、聞いていいのか分からないんですけど……」

「なに?」

「それ、ミサンガですか?」

「うーん? そうみたい」


 絶妙に目をそらして返事してくるカズさん。

 この人はたぶん、事情を理解してないんだろう。


「なんでノスローさんと違うんだろうな!」

「いえ、あの、条件出てます」

「え⁉」


 驚く顔は、今までのバツ悪そうな顔から変化して面白い。

 ただ、笑えそうで笑えないのはミサンガの取得条件だ。

 

「攻撃する回数が少ないと防御上昇の赤と茶、防御する回数が少ないと攻撃上昇の青と紺」

「これは?」

「回復回数が少ないと茶と紺」

「あのー、これは?」

「被ダメ回数が少ないと赤と青」

「ノスローさん? これは?」

 〈かわいそうに〉

 〈姉御が遊んでる〉

 〈姉御で遊ぶ側だったのに〉

 

「ノーダメで回復なしだと虹です」

「ダメージは喰らったはずだ。ボス猿で」


 ボス猿というのは三ツ町前の猿のことだろう。

 たしかに広範囲攻撃があったから、ダメージを受ける可能性はある。

 ネタバレしないなら、なおさらだ。


「猿の攻撃は避けられなかったんですか?」

「いや、弾きしたら、たぶん火属性のダメージ受けた」

 〈そんな攻撃ないよな〉

 〈なんだそれ〉

 〈弾き貫通攻撃?〉

 〈?〉

 

「猿にそんな攻撃はありませんでしたけど……」

「おっと、ノスローさん、本日はここいらで、失礼ッ!」

「あ!」

 

 私の言葉にカズさんは頭を掻きながら、見えない場所でメニューを操作したようだった。

 止める間もなくログアウトした。

 間違いなく本当の情報だったんだろう。


「実際どうなの?」

 〈虹色のミサンガを持ってるからな〉

 〈特定ボスの特異な攻撃か〉

 〈防御貫通ダメージはドロップの条件に反しないんだ〉

 〈ほんとか?〉

 〈チートもないから、あるかもな〉


「ノーダメで回復なし『ゴーストリリース』が怖くなってきた」

 〈さすがにそのレベルばかりじゃないだろ〉

 〈ハードルが高すぎる〉

 〈難易度上がると、無理だもんなVR〉

 〈おい、質問掲示板にさっきのこと載って、返答きたぞ〉

 〈まじ〉


「今日はここで終わろうか、私もそれみたいし」

 〈おつ〉

 〈おやすみ〉

 〈おつ〉

 〈おつ〉


 私はだれも止めてくれないから、本当にその日は配信を終えた。

 コメントで知ろうと思ってたけど、時間があるから少し探そう。

 明日は部屋の掃除だけど、まずは全自動調理器の食材補充かな?

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