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異世界の管理人  作者: 東風
第3章
37/39

37 人は見た目ではわからない Ⅰ


 遙君たちが龍頭領にやって来たのは、今から3年前になるのかな?

 私が小学部の3年生、兄様が中等部の1年生になる春のことだった。

 だから彰君と知り合った少し後に遙君が同じ学校にやって来たって感じかな。


 ただ、私の方から説明するって言っても、別に私が遙君と親しいわけではない。

 兄様も遙君とは特に仲がいいってわけではない。

 兄様は勇介君や彰君と一緒にいることが多い。

 兄様にとって遙君はクラスメイトの中の1人で、特に仲がいいわけでも悪いわけでもないようだ。

 だから彼について特に詳しいわけでもない。

 ただ遙君が(ひそ)かに兄様に憧れているらしいというだけのことだ(情報源は彼の妹)。

 私は遙君の妹と同じ年で、家に遊びに行ったこともあるから学校外の遙君、兄様の知らない彼の一面も知っているくらいかな。


 遙君たちはお父さんの仕事の関係で龍頭領にやって来た。

 お父さんは、もともとがこの町出身の人だったみたいで、父様は昔から知っていたようだ。

 若い頃から世界中で料理の修業をしていたらしく、都会でも人気店のシェフをしていたって。

 でも、そろそろ故郷に戻って店を持ちたいと、漁場や海水浴場がある方の町で創作料理の店をオープンして、今ではどの料理も外れなく美味しいと評判の人気店となっている(私も食べに行ったことがあるが確かに美味しかった)。


 遙君の名前は高橋(たかはし)(はるか)、妹は佐藤(さとう)夏樹(なつき)だ。

 2人の名字が違うのは両親が離婚しているからではない。龍頭領では夫婦はどちらかの姓に合わせてもいいし、別々の姓のままでもいいのだ。そして、子どもは両親どちらの姓を使ってもいいようになっている。だから遙君はお母さん(高橋(たかはし)麗華(れいか)さん)の姓を、妹の夏樹ちゃんはお父さん(佐藤(さとう)(のぼる)さん)の姓を今のところは名乗っている。

 名字については成人する18歳までに、両親どちらの名字を選ぶのかを自分で決めればいいのだ。

 それ以外に特別な理由や配慮を必要とする場合は、母方や父方の祖父母の名字や全く関係の無い名字を選ぶこともできるようになっている。


 夏樹ちゃんは麗華さんのモデル事務所に所属して活動しているから別の名字の方がいいんだってさ。社長の娘だから贔屓(ひいき)されているって言われるのがイヤなんだって。まあ、気持ちはわかるよね。



 じゃあ、遙君の前に私と夏樹ちゃんのことから話そうかな。


 夏樹ちゃんが私たちの学校に転校してきたのは、小学部の3年生になる時だった。

 新学期が始まる前から、「モデルのナツキが転校してくるらしいよ」って噂になっていた。

 私はティーンズファッション雑誌に興味はない(時代劇は今でも好きだ)から読んだことはないけど、舞ちゃんたちが読んでるのを見せてもらった(見せられた?)ことはある。

 だから「へー、そうなんだー」って感じだった。


 ところが、なぜか新学期が始まり、彼女が同じクラスになりしばらく経った頃から、やけに(にら)まれたり(から)まれたりするようになった。

 理由はわからないが、とにかくウザかった。

 まあ、悪意はなさそうだったのでほっといた。相手にはしなかったが、無視したわけではないからね。

 まともに相手をしてケンカってことにならないようにしていただけだ。

 な~んか私だけでなく舞ちゃんにもだったみたいだから、私たち(紫乃ちゃんを含む3人ね)に対してなのかな?とも思ったね。


 で、夏休み前に「今年の主役は私がいただくからっ」て言われて、最初は何のこと?って思った。

 舞ちゃんたちと話していて文化祭の主役のことじゃない?ってことになって、何となく()に落ちた。

 な~んだ勝手にライバル視されていただけか~。

 主役?どーぞどーぞって感じだったね。

 その年の文化祭、わがクラスは影絵での読み聞かせになったんだけどね。主役?ハッキリわかるかな~?

 一番多く読む部分を担当していたから満足したんじゃないかな。

 私?ピアノで伴奏だね。BGMを奏でたり効果音出したりとか。


 結局のところ、彼女はマウントを取りたかったのかな?

 うーーん、よくわからん。

 クラス内でグループなのか取り巻きなのかを増やしたかったのかな?

 他の学校ではどうかわかんないけど、この学校ではグループ(内でも)に強弱はないんだよね。

 授業によっては学年やクラス関係なく混ざったり少人数のグループで活動したりすることが割とあるから。

 グループも自分の仲のいい友だちと組めるわけでもない。同じメンバーばかりだと指導が入るし、嫌いな子が同じグループにいるからと仲間はずれにしたりするとグループとしての評価が低くなるしね。そこらへんこの学校の先生たちはしっかり見てるからねえ。


 そもそも学校は知識や技術等を学ぶだけでなく、社会性を身に付ける場所でもある。

 そこで誰かを仲間はずれするなんて、自分で私には社会性がありませんって示しているようなものでしょ。(おバカさん?)

 グループ内での役割分担に関しても同じ役割ばかりしていると高い評価はもらえない。

 これは自分の得意・不得意を正しく把握する(自分ではできないって思い込んでいただけで実は得意だったってこともあるしね)ってだけでなく、苦手だけどこんな風にサポートしてくれる人がいればできるとか、自分より上手くできる人がいたらどう一緒にやればいいのかとかを学ぶためでもある。

 たとえクラスでは1番であっても、学年全体や学校全体では違ってくる。学校外や他領、他国となればもっとだ。上には上がいるものなのだ。


 社会に出たら、それぞれの集団の中で自分の立ち位置を探し、ベストを尽くして結果を出していかなきゃならないってことになるからね。

 集団内の人間関係がゴタゴタしていたら、全体として上手くいくわけないからね。


 この学校では失敗も経験させて学ばせる。失敗しても取り組み方がよければ評価するしね。

 「失敗は成功のもと」だ。


 ああ、元に戻るよ。

 こんな学校だから力の強い固定のグループってないんだよね。

 夏樹ちゃんはティーンの中では割と有名なモデルさんみたいだから前の学校では取り巻きもいたのかもだけど、この学校では多分無理だと思うな(残念!)。

 取り巻きが存在するなら、すでに兄様にあったはずなんだけど、できかけた時に兄様が「僕にも周りにも迷惑だからやめてくれる」ってニッコリ笑って言って終わった。だから、それ以降は存在しない。


 文化祭も無事終わって、夏樹ちゃんのウザ絡みもなくなったかとホッとしていた頃、夏樹ちゃんが神社にやって来た。


 あれはちょうど、道場で兄様に体術の相手をしてもらって家に戻ろうとしていた時だったな(桐葉と蓮も訓練していたよ)。

 お祖父様も一緒だった。そこに声がかかった。


 「こんにちは、おじさん。ご無沙汰しております。」


 「うん?おお、登君か。久しぶりだな。」


 ん?お祖父様の知り合いかー、とそっちを見たら声をかけてきた男の人と夏樹ちゃんがいた。

 どうもその男性は夏樹ちゃんのパパで、父様を訪ねてきたみたいだ(そういえば父様家にいたなぁ)。


 なぜか夏樹ちゃんが近寄ってきて、小さな声で「ちょっと話せない?」って言ってきたから外で話すことにした。

 あまり親しくないから私の部屋は見せたくないし、体術の練習後で少し汗もかいたから外の方がよかったのだ。


 「あそこの奥にベンチがあるから、そこで待ってて。」


 夏樹ちゃんにそう言うと頷いてそっちに向かったので、私は急いで家から飲み物とお菓子を持ってきた。

 ちょうどおやつの時間だったのだ。

 今日は冷ましたほうじ茶とプリン、大福もあったから持ってきた。

 ベンチの所に行くと夏樹ちゃんが座って待ってた。


 「お待たせ。話の前に食べていい?ノドも渇いているし。」


 そう言ってベンチ前の切り株に食べ物が載っているお盆を置いた(この切り株、テーブル代わりにちょうどいいんだよねえ)。


 「うん。・・・それ道着(どうぎ)?何で?」


 「何でって兄様と体術の練習していたからだよ。」


 「え?やってるの?」


 「護身術も兼ねてずっとやってるよ。」


 「そうなんだ。強いの?」


 「それなり。まだ兄様には3回に2回は負けるけど。」


 「ふーん・・・?って、それってメッチャ強くない?」


 「まだまだだよ。勝つのが目標だからね。」


 「ソウナンダー」



 ここは境内からは死角になっていて見えない。

 だから知っている人しか来ない。

 見晴らしがいい場所で、ここからは神楽町が一望できるんだ。


 「で、話って何?」


 おやつを食べて一息ついたところで夏樹ちゃんに聞いた。


 「あの・・・これまでのこと・・・ごめんなさい」


 「ん?何のこと?」


 「私・・・これまで感じ悪かったよね?」


 「んー?アレわざとやってたの?」


 「パパから今度の学校はきっと今までの学校とは大分違うよ、って言われてたけど信じてなかった。

  だから初めが勝負、って思ってた。

  なめられたら終わりだから。

  でも文化祭が終わって、パパからこれまでどうだった?って聞かれて・・・、この学校って友だちの作り方が違うかもって思って。

  パパに話したら気になる子がいるんだったら直接話してみたらって。

  で、パパに神代さんの話をしたら、『今度その子の家に行く用事があるけれど一緒に行ってみるかい』って言われたからついてきたの。」


 「ふーん。友だちの作り方ってどこでも同じだと思うけど。違うの?」


 「これまでは昨日は仲良かったのに今日は違っていたり、私が一緒に仕事したモデルや俳優によって近付いてきたりだった。

  幼なじみは私に嫉妬(しっと)していたのか、仲がいいフリをして裏で悪口を言っていたしね。」


 「ありゃ~。それじゃー友だちいらないって思うかもねー。

  それに、それ友だちでもないし。

  私だったら近寄らないタイプの人間だね。

  ま、ここでは特に仲がいい友だちがいなくても学校生活は普通に送れると思うよ。

  友だちって無理して作るモンでもないし。

  授業でいろんな人と一緒になると思うから、もっと話してみたいとかもっとこの人のこと知りたいと思う人がいて友だちになりたいと思ったら、でいいんじゃない。」


 「うん。それでね、私、神代さんに興味持ったの。

  私が勝手にライバル視しても平気だったし、嫌味を言っても聞き流したり距離を取ったりしてぶつからないようにしてたよね。」


 「うん。まあね。

  あのくらいなら流せたし。我慢できないレベルならどうにかするけど。場合によっては物理的に(つぶ)すからね、私。」


 「えっ?物理的に・・・?」


 「当然じゃん。我慢のしすぎは健康にも良くないからね。

  いざという時には闘うために日ごろから(きた)えているんだよ。使うにきまってるじゃん。」


 「あっ・・・、そうんだね。」


 「うん。そう。いいよ。友だち(仮)になろう。」


 「ありがとう。でも、(仮)って何?」


 「うーん、そうねえ、お試し期間ってヤツ?

  試しにしばらく一緒にいてよければ続ければいいし、他にもっと気が合いそうな人が見つかればその人と友だちになればいいし・・・って感じかな。

  だって、これまでまともな?友だちっていなかったんでしょ?」


 「そう・・・なのかな?」


 「そう思うけど。それと、紫乃ちゃんと舞ちゃんとも一緒になるけど、いい?」


 「うん。その2人の方は大丈夫かな?」


 「今度聞いてみれば?大丈夫って言いそうだけどね。」


 「うん。聞いてみる。」


 ってことで、夏樹ちゃんと友だち(仮)になることになったんだよ。

 予想通り、紫乃ちゃんたちは大丈夫だった。



 その後、夏樹ちゃんの家に遊びに行くようになって、夏樹ちゃんのママ、麗華さんを知ることになった。

 麗華さんは一言で言うとカッコいい人だった。


 夏樹ちゃん()に初めて行ったのは、彼女と友だち(仮)になって割とすぐだった。紫乃ちゃんたちも一緒だったよ(この日は桐葉はいなかったけど、ポケットの中に小っちゃくなった大吉がいた)。

 その日はパパさんもお休みの日で在宅中だった(そういえば遙君はいなかったような・・・?ハッキリ覚えてないな)。

 パパさんがあの人気店のシェフだってことは、父様を訪ねてきた時に気付いていた。

 あの店ができたときに父様が食べに連れて行ってくれてたから。その後も何回か行ってるし。

 でも、夏樹ちゃんのパパとは知らなかった。


 その時に、夏樹ちゃんの家ではお互いに名前で呼び合ってるって聞いたんだよ。

 夏樹ちゃん、ママのことは麗華さんって言わないと怒るのって言ってた。

 パパだけはパパって呼んでるって(これはパパさんの希望らしい)。麗華さんは登さんって呼んでるらしい。

 で、お兄さんのことは遙君だって。

 夏樹ちゃんは家族から「ナッちゃん」って呼ばれてるんだってさ。

 そして、私たちにも夏樹ちゃんのママとかおばさんではなく、麗華さんって呼んでねって言われたんだよ。

 登さんの方は、夏樹ちゃんパパとかおじさんでいいって。

 私の家とは違うけど、まあ家それぞれだろうなって思った。


 麗華さんは子どもの名前を考えるときに「絶対これは」って思うことがあったんだって。

 それは、男女(だんじょ)どちらでも使えるってことと外国の人でも呼びやすいことだった。

 へーー、でも何でだろ?って、つい思ったよ。

 そしたら麗華さんが説明してくれたんだ(顔に出てたかなぁ)。


 「私の知っている人の中にはね、自分の性別に違和感を抱きながら生きてきた人や男性という性に特に不満はないけれど女性のファッションの方が好きでたまに女装するっていう人がいるのよ。

 自分の子どもも将来どんな風になるかわからないけれど、名前で縛られないだけでも少しは生きやすいんじゃないかと思ったのよ。

  それに、これからはもっと世界のいろんな国の人と付き合う機会も増えるんじゃないかと思って。

  そのまま使える名前って便利じゃない?

  登さんもいいんじゃないって言ってくれたのよ。」


 なるほどねって思ったよ(紫乃ちゃんは「なるー」、舞ちゃんは「ほっほー」って言ってた)。


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