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異世界の管理人  作者: 東風
第2章
33/34

33 想い Ⅰ

 あれは・・・夏休み最後の日だったなあ。

 私は朝ご飯の後、いつものように桐葉と樹海をキレイにして戻るところだった。

 ふと気付くと隣を地蔵さんが歩いていて話しかけられた。


 「桃介(ももすけ)、今回も大活躍だったそうじゃのう。」


 「うん?大活躍?そうかなあ?

  月兎に頼んで、あとは小野さんがやってくれたよ?」


 「それでいいんじゃよ。

  自分ができないことはできる者に任せればよい。

  任せたからあの者はこっちに戻って()られたのじゃよ。」


 「うん、そうだね。」


 今の私には、まだできないことがある。できないというか、やってはならない、が正しいかな。

 それは“憑依(ひょうい)”しているモノを(はら)うことだ。

 これは15歳にならないとダメだと言われている。

 当然やり方は知ってる。一通り学ぶべき内容は学んだからね。

 なぜダメなのか?

 一言で言うと表の仕事だからかな。表に出て行う仕事は15歳以降だからだね。

 だから今は裏での仕事だけやってる。奥の間でやることや樹海の浄化だね。これらは一般の人とは会わない仕事だ。

 それと、憑依は私だけではできないんだよ。

 うーんと、私はほぼ毎日、樹海をキレイにしに行ってるんだけどね、あれは地中から湧き出してきた瘴気やどこからか集まってきた()しき念、境内で落とされたモノなんかを浄化している。まあ、ほとんどが“生きていない”モノだ。

 だから私が浄化すると消滅するか「あの世」へ行く。

 でもねえ、()(りょう)などの生きている人の場合は、特に注意が必要になってくる。

 だって普通に祓ったら「あの世」へ行ってしまうもん。

 マズいでしょ?

 そんな時は神仏の力を借りることになる。

 だってさ、体から魂が抜け出て来てんだから、ただ戻すだけでなく出てこないようにもしなきゃダメでしょ?それは流石に管轄外だよ。

 それに生きていても、抜け出ているときにイロイロと悪いことをしていた場合(大ケガさせたり殺したりだね)は、普通に祓って「あの世」行きってこともある。

 そこの判断は神仏に任せることになる。

 ってことで、私がミーナから美菜の魂を引き離そうとすると美菜は「あの世」行きってことになってしまう。


 だから、私は月兎に「どうすればいいかな?」って聞いたんだよね。持って行っていたスマホで。月兎は「いいわ。アタシに任せなさい。」って。

 そしたら小野さんが来て、美菜を連れ帰ってくれたから助かったよ。

 地蔵さんはその方法でよかったんだと言ってるんだよね、きっと。


 地蔵さんは、私が桐葉に助けてもらいながら樹海をキレイにし始めた頃から、時々隣にきて色んな話をしてくれるようになった。

 最初の頃は桐葉に言われて、「おじじょーしゃま(お地蔵様)」って呼んでたんだけど、「地蔵でよい。」って言われて「じじょーしゃん(地蔵さん)」で落ち着いた。

 地蔵さんは私のことを、なぜか「桃介」って呼ぶんだよねえ。私が時代劇好きだからかねえ。いいけど。


 「ねぇ、地蔵さん。生まれ変わりって人以外でもあるのかなあ?」


 「なんじゃ。何かあったか?」


 「うーんと、ねえ・・・ 」


 私は地蔵さんに祥子(しょうこ)ちゃんと平次(へいじ)の話をした。

 祥子ちゃんは私のピアノの先生だ。

 まだ音大生だった頃、うちの保育園の卒園生ということでピアノの演奏に来てくれたことがあったのだ。

 その時に、バイトを探していると聞いたお祖母様が、私にピアノを教えてくれるよう頼んだのだ。

 それから今までずーっと続いている。

 彼女は大学生の時に、国際コンクールに入賞し、現在はプロとして活動している。

 だから今では、私の練習を見てもらうのは、こっちに祥子ちゃんがいる時だけに限られる。

 別に私はピアノを極めるつもりはないので、その時は少し私がピアノを弾くのを見てもらって、後はお茶しながらおしゃべりを楽しんでいる。

 そして、大事なことは祥子ちゃんは私と同じように時代劇を愛する仲間なのだ。

 ああ、最初の頃、私は祥子ちゃんのことを「しょーこちぇんちぇい(祥子先生)」と言っていたようだが(もうあまり覚えてない)、大学生だった祥子ちゃんが「言いやすいように言っていいよ。」と言ってくれたようで、いつの間にか「ショコちゃん」と呼ぶようになっていた。なので今も「ショコちゃん」と呼んでいる。

 そして、平次は祥子ちゃんの「相棒」のレッドカラーのトイプーだ。

 彼女は私に、平次のことを「私の相棒」と紹介してくれたのだ。祥子ちゃんにとって平次は、()っちゃい頃からいつも傍にいてくれて、味方でいてくれた存在だったそうだ。

 でも私が初めて見た頃には、すでに10何歳のおじいちゃん(けん)だったから、1年後くらいには老衰(多分)で死んでしまったのだ。


 「ねえ桃ちゃん、私ね、平次が弱っていくときに言ったんだよ。『また、私の傍に戻ってきてよ、平次』って。『平次がいないと寂しいよ。ずっと私の傍にいてくれるんでしょ?』って。」


 祥子ちゃんの落ち込みは酷かった。私は、ああこれがペットロスというものなんだって思った。


 「ねえ桃ちゃん、昨日不思議な夢を見たんだよ。私が誰かに向かって『平次を私の所に戻して』って頼んでるの。その誰かってさ、頭は犬なんだけど体は人間みたいな姿だった。周りに頭が動物で体が人間みたいな人が何人もいる中で、私がその人に訴えているっていう夢。不思議でしょ。でも、怖くなかったし、目が覚めたとき、ああ平次は戻って来るんだって思った。」


 平次は祥子ちゃんの母親が知り合いのブリーダーさんの所から迎えた子だった。

 ある日、そのブリーダーさんの所から連絡があったそうだ。「平次にそっくりな仔犬が生まれたんだけど見てみる?」って。

 すぐに祥子ちゃんは母親と見に行って、その仔犬を迎えることに決めたそうだ。


 私がピアノのお稽古のために祥子ちゃん()に行ったのは、祥子ちゃんから夢の話を聞いて1年後くらいだった。それまでは祥子ちゃんが()()に来てくれていたのだ。

 その時には、トイプーは成犬に近かったんじゃないかな。ホントに顔かたちが平次にそっくりだった。色も同じだし、名前も同じ「平次」らしい。当然知ってた平次より若々しかったけどね。


 「ショコちゃん、この仔犬が平次だよね?」


 「うん、そう平次よ。

  ねえ桃ちゃん、前の平次とそっくりでしょう?

  というか、私は平次が戻ってきてくれたって思ってるけどね。」


 「う、うん。そうだね。」


 ホントに平次だったよ。

 祥子ちゃんがお茶の準備に行っている間に平次と話してみたんだ(小声(こごえ)でね)。


 「えっと、平次ホントに戻ってきたんだね。」

《おう、オレがいないとしょうこがさびしがるだろ。

 それに、しょうこはオレにしかよわねをはけないだろ。だからまだ、オレがついててやらないとな。》

 「でも、よく戻って来れたねえ。」

《それよ。それはオレにもよくわからんなあ。》


 他の人には、「クゥン」とか「オゥーン」とかに聞こえているだろうが、私には平次が何と言っているかがわかるのだ。

 これも私の特殊能力といえばそうなのだが、これも普段はOFFにしている。

 平次によると、死んだ後、どこかに(のぼ)っていたそうだ。そして横を見ると、(くだ)っている犬たちがいた。その犬たちを見ながら自分は上っていたら、「ほれ、あそこに中が(から)の体がある。あれがお前の体だ。中に入れ。」って聞こえてきた。続けて「戻りたくはないのか?」って。それで急いでその体に入ったら、祥子のところに戻れたんだ、って。


 「 ・・・ ってことがあったんだよ。」


 「ほほう、それはまた面白いのお。

  人以外にも生まれ変わりはあるが、担当が別だからのう。」


 「へーっ、そうなんだねぇ。」 


 地蔵さんと話した後、奥の間に行くと兄様と蓮も来ていた。

 なら兄様たちも一緒に聞きたいだろうと、お菊さんに聞くことに決めたよ。


 「ねえ、お菊さん。聞きたいことがあるんだけど。」


 「おや、何かねえ。」


 「うん。(ひい)祖母(ばあ)様たちの昔の話を聞きたい。」


 「おや、櫻たちのかい?」


 「うん。昔の?前の?えーっと、桃香たちが知ってる曾お祖母様じゃない、前の時のだよ。」


 「それは、500年前の桜子の時の話ってことかい?」


 「うん、そう。聞きたい!」


 「そうかい。・・・そうだねえ、もう話しておいてもいいかねえ。」

 「さて、それではどこからはなそうかね・・・。

  今回の櫻と寅吉は従兄妹(いとこ)同士で2人とも神代家の者であったことは知っておるか?」


 「はい。」「うん。」


 「櫻の父親の(しげる)が長男、寅吉の父親の(たかし)が次男、異世界に行った隼人(はやと)が三男であった。

  茂には娘が1人、櫻じゃな、しかおらん。

  一人娘であったからいずれ婿養子を取らねばならんところであったが、幼い頃より寅吉と仲が良くてな。早々とこの2人の結婚は決められたよ。

  また(とう)の2人にも異論はなく、結婚して最期まで仲良く暮らしておったのはお前たちも見て知っておろう。

  まあ、今生(こんじょう)は前回と違って、よい一生であったろうよ。

  で、昔の話になるが・・・。

  櫻は神代(かみしろ)桜子(さくらこ)、寅吉は神山(かみやま)景虎(かげとら)という名前じゃったな。」


 「「かみやま?」」


 「そうじゃ、神の山と書く神山じゃ。今はもう一族には無い名字じゃな。

  神山家は神代家の初代の次男が起こりの家での、代々神代家の相談役を務めていた家じゃ。

  巫女は神代家からしか生まれぬが、冒険者は神代家と神山家から生まれておった。今は、冒険者も神代家のみとなったがの。 ・・・ 」


 桃香は柊と一緒に、前々から聞きたいと思っていた曾お祖母様たちの話を、お菊さんに聞くことになったのだ。


 時は、今から大体500年前くらい。

 当時の神代家の当主は総司(そうじ)といい、彼にも跡継ぎは一人娘の桜子しかいなかったそうだよ。

 神山家の当主真秀(まさひで)には、長男の一真(かずま)と次男の景虎(おおぅ、昔の名前の方がカッコいいよ!)がいた。

 神山家は調査(情報戦も含む)や防衛を代々得意とし、領でも防衛を担当していた。

 当主である真秀の導き手はミミズクであり、この両者は情報収集と戦略・戦術を立てるのを得意としていた。

 また、長男である一真の導き手はイタチで名前は(いん)。この隠は変わった能力を持っていた。

 当時はあちらこちらの領で(いくさ)があるような戦国時代であった。なんとかして他領を手に入れ、自分の領地を大きくしようと狙っている者が多くいたのだ。

 そのため、神代家が治める領地では、導き手たちの力を借りて自領の者と他領の者の行き来が把握できるようにしていた。領地を囲むように結界のようなモノを張り(普通の人には感知できない)、特に他領の者が入り込んだら出て行くまでの動きを把握するようにしていたのだ。

 どうも導き手たちには、自領と他領の者たちが色分けされているように見えていたらしい。

 だから、出た数と入った数が同じでも他領の者が入り込んでいたら見てすぐにわかるのだ。

 ところが、隠の能力はこれを誤魔化せた。隠が触れたままだと結界を行き来するときも入ったままであっても把握されないのだ。

 そもそもはこの能力、戦闘能力の低いイタチが冒険者を守るために神から与えられた力である。敵から身を隠して難を避けるためのものであったのだ。

 そして、情報収集の時にも役立つ能力である。

 だから、このイタチの導き手は、神山家の跡継ぎである一真にとっては最適といってよかった。

 だが、一真は不満だったらしい。


今日は2話投稿します。

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