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異世界の管理人  作者: 東風
第2章
32/34

32 はぁ~、やっと終わった~

 異世界から戻ってきたのは、あと3日で夏休みが終わるという日の夕方だった。

 その日は夕飯を食べてサッサと寝た。

 だって疲れてたんだもん。いいよね?

 次の日は、お祖母様から「今日は『浄化』はお休みしてもいいわよ。ゆっくりしてなさい。」って言われたけど、桐葉と樹海に行ってキレイにしてきた(片方だよ。どっち側かは聞いて行った)。

 普段の日常に戻るためにもルーティンは大事っ!

 やることはしっかりやり、その後は時代劇鑑賞に没頭した。お祖父様が録画していてくれた全部を見終わった。た・ん・の・うしたわぁ~。



 舞ちゃんから相談を持ちかけられたのは、夏休みが終わって1ヶ月以上経った頃だった。

 来週は文化祭で、ミュージカル本番ということで、いつものごとく私と舞ちゃんと紫乃ちゃんの3人で最後の練習をしていたのだ。

 勿論、学校でも練習はしている。

 まあ、3人一緒にやるところの確認をして安心したいだけなのだ(ということにして、メインはしゃべってお菓子を食べる)。

 今日は~、モンブランと紫乃ちゃんとこのプリン。飲み物は各自で選ぶ(紅茶・牛乳・アップルジュースの中からね)。


 「あのね、あの子たちが舞に会いたいって。直接謝りたいって言ってるんだって。」


 「「ふーん。それで?」」


 私と紫乃ちゃんの返事が(かぶ)った。

 兄様と話したように、目黒美菜の魂がこちらの世界に戻ると彼女は意識を取り戻したのだ。

 そして、舞ちゃんの事件も動き出した。

 目黒美菜は舞ちゃんが後ろから押されるところを見ていて、そのことを証言していたのだ。

 それで、同じバレエスクールに通っていた3人が関わっていたことがわかったんだよ(あの、舞ちゃんの後ろで噂していたヤツらね)。


 「舞ちゃんは、どうしたいのさ?」


 「うん・・・会うのはちょっと怖い。」


 「まあ、そうだよねえ。」「うんうんわかる。」


 「まあ、会いたくないなら会わなくてもいいんじゃない?会うように誰かに言われた?」


 「ううん。自分で決めていいって。」


 「じゃあ、会いたくなければ無理して会わなくてもいいんじゃない?

  何が気になってんの?」


 「うん・・・会って謝られたら許さないといけないのかな・・・って。」


 「へっ?別に許さなくてもいいんじゃない?」

 「そうそう。」


 「えっ?いいの?」


 「えっ?逆に会いたくない理由はそれっ?て思うよ。」

 「うんうん、後で会って言いたいこと言っとけばよかったって思いそうなら会っとけば?」


 「それにさ、多分もう会うことはないだろうからさ、これこれこういう理由でまだ許せないってのがあるなら言ってくればいいよ。

  もし、許さないのが気になるんならさ、今はまだ許せないのが本当の気持ちなんだから、代わりにこんな(ふう)に言ってみるのはどうかな?

  『今はまだ許せない。けど、本当に悪かったと思ってるなら、これから5年間は絶対に誰かに意地悪したり言ったりしないで。それと、1年に1回、いいことをして。そしたら、私から許されたと思っていいよ。』って。

  どう?」


 「へー。私はいいと思うな。」と、紫乃ちゃん。


 「う、うん。年1回のいいことって?」って、舞ちゃんが私に聞いてきた。


 「あー、それねー。募金でもボランティアでも何でもいいと思うよ。自分がやれるのをやればいいんじゃないかな。」


 「私も質問。

  いいことって気持ちがなくてもいいの?それと、5年にしたのは何で?」


 紫乃ちゃんの質問に答える。


 「気持ちねえ・・・。ボランティアだったら何するかによっては、気持ちがなくていい加減にやられて迷惑って思う人がいるかもしれないけど、募金とかだったら気持ちはあんまり関係ないよね。そのお金で助かる人はいるはずだからさ。結果として、いいことになるよね。

  5年はさぁ、10年って長いよね。かといって3年は短いって思ったんだよ。5年やったら意地悪しないのがもう習慣になって、やったら何か気持ち悪い気がするようにもなるかなって。だからだよ。」


 「「なるほどー。」」


 「まあ、私が言ったのは一つの例だからさ。

  会うとしてもすぐじゃなくて、時間があるんでしょ?自分でも考えたらいいよ。」


 「うん。考えてみる。」


 その後ついでにその3人が、舞ちゃんの代わりに主役になれたのか聞いてみた(私は調べてもらったときに知ってたけどね)。その3人は候補にすら挙がってなかった。

 さらに、舞ちゃんから父親の話まで出てきたからビックリだ。何か今頃になって元妻と子どもたちに会いたいと言ってきたらしい。子どもたち2人は会いたがってないからと母親が電話で断ってもなかなか退()かなかったらしい。

 最後は敏じいが電話に出て、「近々(ちかぢか)娘(舞ちゃんママ)とそっちに行く用事があるから話があるならその時に聞く。ああ、こっちに来ても(うち)の敷居は(また)がせんからな。」と言われてガチャンと切られたらしい。

 私と紫乃ちゃんは、その話を聞いて「ざ・ま・あ」って言ってやった。

 私たちを見て舞ちゃんも「うん。ホントざまぁ~だね。」って笑ってた。


 そして、敏じいが舞ちゃんたちに「『捨てる神あれば拾う神あり』だ。古い縁を捨てて新しい縁を拾ったと思えばいい。お前たちはここで自分らしく生きればいい。」って言ったんだって。

 確かにねぇ、って思ったよ。私なら悪い縁を捨ててって言うけどね。

 で、何でかその時に「桃ちゃんにも何か大事にしてる言葉ってあるの?」って聞かれたんだよねぇ。何で私さ?


 「んー?大事というか気をつけていることはあるよ。」


 「「えー、あるんだー。教えてよ。」」


 「うん。・・・別にいいけど。

  『人を見たら泥棒と思え』と『(なさ)けは人のためならず』だよ。」


 「えっ?何か意外。」

 「うん。」


 「えっ?何で?私は基本人は疑ってかかるけどね。

  逆に何も考えずに信用する人の方が、頭に花でも咲いてるのかと心配になるよ。

  それで(だま)されて信用していたのにって?

  人を見る目がなかったんだよ。

  私なら、しばらくしっかりその人を見て、これでコイツに騙されたら仕方ないな、って思いながら信用する(まぁ私の場合は見ようと思えば本心が見えるけどね)。

  『信用』ってそんなに軽いもんじゃないでしょ?

  それに人は良くも悪くも変わっていくもんだよ。

  『悪い人間という人間が世の中にいるのではない。普通は善人、普通の人が急に悪人に変わる。だから油断できない。』って昔の文豪も言ってるしね。

  自分だって人を裏切るかもしれないじゃない?」


 「そっかあ。」

 「言われたらそうかも。」


 「それともう一つの方ね。

  他人への親切は、巡り巡って自分に返ってくるから結局は自分のため、ってことなんだけどさ。

  私は善いことも悪いこともだと思ってるんだ。

  善いことも自分に返ってくるし、悪いことも自分に返ってくるってね。

  そうすると、何かするときちょっと考えるよね。

  自分の行動には責任持たないとね。」


 「「うん。そうだね。」」



 それにしても目黒美菜はちゃーんと証言したんだねぇ。こっちで意識を取り戻したけど、向こうの世界での出来事だけでなく、今回は()(とう)に生きないとヤバイってことも忘れてたらどうしようかと思ってたよ。

 こっちに戻った後、井戸のところに現れた小野さんが教えてくれた。

 小野さんによると、しばらくは美菜がよくない行動をしようとすると「もう虫でいいんじゃないのぉ。」(私の声でってのはやめてほしいよ)と彼女だけに聞こえるそうだ。

 その時に甥っ子の話も聞いた。私が言った虫の話が参考になったって。早く甥っ子に成長してもらいたいよ。



 今年の文化祭も大盛況で終わった。

 私のクラスのミュージカルも昨年同様大成功で幕を閉じた。

 そしてその日も見学に来ていた薔子さんの目にとまった舞ちゃんは、翌年、薔子さんに米国に呼ばれることになるのだ。

 薔子さんは今年も温泉宿を貸し切って地元の人々と楽しんでいた。(いいなぁ。私も早く大きくなりたいよ。)



 文化祭も終わってしばらく経ち、少し肌寒くなってきた頃だった。

 いつものように樹海をキレイにして桐葉と家に向かっていると、道場での稽古を終えた兄様に呼び止められた(モチロン横には蓮もいる)。

 んー?何でか、一緒によく散歩で行く場所まで歩くことになってるね。

 ここは、海に沈むように見える夕日が真正面に見えるんだよね。周りに小島もあって綺麗なんだよ。

 もう少し経つとベストショットだ。

 まあ、私たちだけしかいないけどね。


 「さっき勇介から聞いたんだけど、舞ちゃん、あの彼女たちに会ってきたんだってね。」


 「うん。そうだってね。」


 数日前に、私と紫乃ちゃんは舞ちゃんから聞いてた。

 「言いたいこと言ってきた。」ってスッキリした顔で言ってたから、「「よかったじゃん。」」ってそれだけ。


 「勇介も一緒にいたらしいけど、後ろで見てたって。

  助けが必要かと思ってたけど、ちゃんと自分で言ってて、我が妹ながらカッコよかったってさ。


  自分が今でも階段が怖いと感じること、頑張って主役になれたのに踊れなかったこと、なのに事故が自分のせいみたいに言われたこと。だから許すとは言えない、って。

  それに、目撃者が証言するまで時間があったのに自分から言おうとしなかったのは、このまま誤魔化せるかもしれないって思ったからで、それは卑怯なんじゃないか、って。

  形だけの謝罪ならいらないってさ。


  相手がそれでも謝りたいって言ったら、今はまだ信用できないし許せないけどって、その後、桃香が舞ちゃんに言ったことを彼女の言葉で言ったんだってさ。


  勇介がビックリしてた。舞があんなにハッキリ自分の意見を言えるなんてって。

  そして桃香にありがとうって伝えてくれってさ。」


 「ふーん。舞ちゃん、しっかり言えたんだね。よかったよ。」


 「よしっ、これでホントの一件落着だぁー。カッカッカッ!」

 私は正面の夕日に向かって叫んだ。


 「桃香、その笑いは何だ?」

 桐葉が呆れたように聞いてきた。


 「ん?気分だよ。き・ぶ・ん。」 

これで第2章の内容は終了です。 

※昔の文豪(参考は夏目漱石『こころ』)

番外編を1話来週投稿予定です。

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