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異世界の管理人  作者: 東風
第2章
31/34

31 桃香、異世界で舞う

 「明日僕たちは元の世界に帰る」と伝えた日の晩、テッドの邸にマーカスさんとベルタさん、ブランシュとピーターもやって来て、一緒に晩餐となったんだ。


 その場で、今回は会えなかったマルクの話を聞いた。

 結婚していて奥さんはジャスミンって名前らしいんだけど、なんとっあの一緒にサザンウィンド国まで旅したジョンの妹なんだって!ビックリだよ。

 どこで接点が?って思ったんだけど、(こっちの世界での)4年ほど前にサザンウィンド国でウェストデザート国とイーストウッド国の辺境伯(サザンウィンド国に面したところのだね)を交えて復興支援会議が開かれたらしい。サザンウィンド国の国王代理となっていたエンの呼びかけでね。サザンウィンド国、あの当時は酷い状況だったからね。1、2年じゃあ無理だろうしね。

 その時のウェストデザート国側の辺境伯がな~んとジョンだったらしい。前辺境伯の娘(ジョンの従姉妹)に婿入りすることになって辺境伯になったんだって。当時、ジョンの奥さんは出産後すぐってことで来れなかったから代わりに妹がついてきていた。

 そして、イーストウッド国側の辺境伯として行ったのがマルクだったってことかー。なるほどねえ。

 で、そこで気が合って結婚までいったのかー。

 なんか近々、マルクのところも子どもが生まれるらしいよ。オメデタイね~。


 晩餐は、料理もモチロン美味しかったんだけど、テッドの婚約やブランシュのところの子どものお披露目、ノルト辺境伯と関わりのあるミーナのことも大事にならなくて済んだし、楽しい時間になったよ。ここでも、またお礼を言われたよ。

 ブランシュたちと別れの挨拶をする時は、少ししんみりしちゃったけど笑顔で別れたよ(マーカスさんとベルタさんは今夜はここに泊まるみたいだ)。

 ブランシュたちを見送った後は、僕たちは部屋に戻ってさっさと寝ちゃったよ。晩餐の終わりくらいは、桃香、コクってなってたもん。僕も眠くなってたし。



 翌朝、朝食に行く前に時間が少しあったから桃香に聞き(のが)していたことを聞くことにした。


 「あのさ桃香、昨日帰りの馬車の中で『上手くいってホッとした』って行ってたよね?あれって何のこと?」


 「ありゃりゃ、聞こえてた?うーん ・・・

  逆に、兄様気付いてなかったのかな?って。」


 「何が?」


 「うん。話すよ。

  まず、エウラリア嬢とテッドの方からね。

  ほら、私がさ第3王子の婚約話に触れたときに、聖女が婚約者になる場合はエウラリア嬢はテッドとって話が出たじゃない?テッドは受け入れている(ふう)だったんだけど、エウラリア嬢はどうなんだろうって思ったんだよね。

  ま、こっちの世界の貴族の人なんだから政略結婚は当たり前ってことなんだろうなとも思ったけどさ。

  で、王宮でエウラリア嬢と2人になった時に(侍女は壁際にいたけどね)、『エウラリア様も剣術か何かされているのですか?』って話しかけたんだよね。彼女、他の令嬢たちと違って体幹がしっかりしてて何かやってる?って感じだったんだよ。

  そしたら、家が辺境伯ってことで女性でも剣術が学べたんだって。手袋の上から触らせてもらったけど、しっかり剣ダコがあった。『あら、一緒ですねー。』って私の掌をさわってもらって話してたら、いろんな話になってね。

  エウラリア嬢のお兄さんとテッドが同じ年で昔っから仲が良かったらしい。お互いの家に遊びに行くことも多くて、一緒に剣術の訓練もしていたって。時々はエウラリア嬢の練習相手にもなってたって。

  そんな話をエウラリア嬢はうれしそうにしてくれた。それを聞きながら私は“もしかして”って思って調べたんだよね。大吉が頑張ってくれた。

  それで、わかったことなんだけど。

  エウラリア嬢は()っちゃい頃からテッドのことが好きだったんだって。『()っきくなったらテッドのお嫁さんになる』って家族にもテッドにも言ってたらしいよ。

  最初は、ただ子どもの言うことだからと微笑(ほほえ)ましく思っていたテッドは、『大きくなっても気持ちが変わらなかったらいいよ』って答えたらしい。

  テッドは学院卒業後、辺境伯になって、その後公爵になるってことで忙しかったみたいだし、あの頃は瘴気溜りがあちこちできたり魔獣が増えたりと国内も不安定になってたじゃない。

  だから、しばらくは結婚どころではないって思ってたみたいよ。

  で、国内が落ち着いて結婚ってなった時に、エウラリア嬢の気持ちは変わってなかったみたいだし、彼女も婚約しておかしくない年頃になってたから、じゃあ婚約をってところに王家からの話が辺境伯家に来てしまった。そうなると辺境伯家は断れないよねえ。

  王家としては、学院に入る前に第3王子を守るためにも婚約者が欲しかったみたいだしね。」


 「第3王子を守る?」


 「うん。いつの時代にもいるじゃん。

  自分の権力欲のために使えそうなモノは力尽(ちからず)くでもどうにかしようとするヤツ。

  第3王子ってさ、穏やかで攻撃魔法は使えない(正確に言うと兄2人ほど強くないだね)から(ねら)()って思われたみたいね。

  婚約者もいないから学院では自分の娘や派閥の娘を近付かせようとかね・・・。

  そういう動きは王家もつかむから当然対処するでしょ?それがエウラリア嬢との婚約だったってわけ。ガルブ辺境伯は権力にも派閥にも興味がない人だし、辺境伯家はそれなりに地位も高い。エウラリア嬢も人柄・教養ともに問題なし。年齢も近い。第3王子の相手にはピッタリだよね。

  それがわかってるからテッドも何も言わなかった。」


 「そういうことがあったんだ~。」


 「うん。そしてね、その頃には聖女の噂も入ってきてたんだよ。

  だから、テッドとエウラリア嬢の案も王家と公爵家の間では早くからあったみたいだね。」


 「そうだったんだー。」


 「うん。そう。

  そして、ミーナの方なんだけどねえ、本来の彼女は努力家で謙虚って感じの子だったんだよねぇ。

  だから、第3王子が相談役になっても聖女の私は彼に相応(ふさわ)しいなんて思ってもいなかった。彼に感謝はしても距離を取っていたんだよ。

  ところが、中身が美菜になったら変わった。

  最初はイケメンで金持ちそうな男に近付こうとしていたようだね。美菜には爵位の違いなんて最初はわからなかっただろうし。ま、そのうちに地位も高い方がいいって思うようになったのかも。

  第3王子は気軽に町で遊ぶタイプじゃないけど、王子以外にも高位貴族の子息はいたしね。

  でも途中からは第3王子になってる。

  私の推測なんだけど、婚約者がエウラリア嬢だからってのもあったと思うんだよね。

  エウラリア嬢ってさ、辺境伯家の令嬢なんだけど高慢さはないし、爵位が下の人たちを身分が低いってことで見下すこともないから学院でも人気があるんだよね。そういうとこ、美菜のお姉さんに似てるよね。

  美菜は、姉になんとなく似てるエウラリア嬢が嫌いだったんじゃないかな。

  エウラリア嬢から婚約者を取ったら自分が彼女より上ってことになるとでも思ったんじゃない。

  まあ、第3王子も自分の役割を忘れずに振る舞ってたから、美菜の思い通りにはならなかったけどね。」


 「えっ?じゃあ、この2人の婚約は上手くいったって言えるのかな?」


 「えっ?兄様が第3王子から聞いてきたんでしょ?

  学院に入学した最初の頃のミーナが、慣れない環境の中で自分の光の魔法が誰かの役に立つならと訓練を頑張っているのを見て、第3王子が『ミーナを近くで助け、守りたいと思った。』って言ったのを。

  今、ミーナはその頃のミーナと同じだよ。ううん、自分が知らないうちに他人(ひと)に迷惑をかけていたって、もっと真摯(しんし)に頑張るだろうね。」


 「あっ、そうだね。」


 「それにさ、ま~だ兄様はピンとこないみたいだけど、ミーナの前世を聞いて何か思うことはなかった?」


 「へっ?」


 「はぁ~ ・・・ 

  あのさ、ミーナと美菜は前の3回の人生をともにしているんだけど、実はもう1人いるんだよ。

  1回目と2回目の父親、3回目の姉の婚約者、この人も同じ魂なんだよねぇ。

  じゃあ、その人は今回はどこにいるんでしょうねぇ。わかる?」


 「ま、まさかっ、第3王子なの~~?」


 「ピンポーン。

  兄様、ちょっと(にぶ)いんじゃなーい。それとも恋愛面がダメダメなの?

  桃香、兄様の将来が心配だよ。もっとしっかりしてよ~。」


 「う、うんっ。これからガンバルよっ。」

(蓮っ、腕組んでウンウン頷いてないでもっとしっかり兄様に教えなさいよっ。)


 「あの2人は今回こそは、幸せな老後を迎えられるんじゃないかな。

  子どもが生まれるとしても、今回はちゃんと親にもなっていけるさ。あの2人は、親としての経験はあまりなかったからな。経験の少ない親に、あの美菜の魂は難しすぎる。

  今回は何回か経験済みの魂だろうから、子どもとともに親としても成長できるさ。」


 桐葉の言葉に桃香は「ふーん、ならいいね。」と答えていたが、僕もそう思ったよ。



 朝食後、僕たちはマーカスさんたちに挨拶して帰ることにした。

 テッドが敷地内にある森へ僕たちを連れて行ってくれることになった。見送りはテッドだけだ。


 「ちょっと皆に見せたいものがあるんだよ。」


 森へ行く途中、テッドが並木のところに僕たちを連れて行った。


 「何の木かわかるかい?」


 「うーん?これは葉桜だね。ってことは桜の木?」


 「モモカ、よくわかったね。

  そうだよ。ここにはサクラ並木があるんだよ。

  今年の花の季節は終わってしまったけれど、毎年見事な花を咲かせるんだよ。

  このサクラは、ハヤトが植えた1本からここまで増えたんだよ。

  俺はこの木が好きでね、将来子どもが生まれたら『サクラ』って名前を付けようと思ってるくらいだよ。」


 「ふーん。いいんじゃない。楽しみだねっ。でも、奥さんとも相談しないとだね。」


 「ははっ、そうだな。」



 森の中心部まで行って、僕たちは出発することにした。桐葉と蓮は大きなシルバーウルフと白い犬になっている。


 「「じゃあね。」」

 「ああ、今回も世話になったな。」


 僕と桃香は蓮と桐葉の背中に乗って、まずは女神に会うために出発した。(今日も大吉は桃香の肩に乗っている。結局、最後まで僕たち以外には姿は見せなかったね。)

 前回と同じように、センターアルミスト山の頂上部分から女神がいる場所まで行く。


 「お待たせ~。来たよ~ん。」

 「ふふっ、待っていたわよ。」


 「こ、こらっ、桃香っ。」


 「ほほっ、よいのですよ。それより早く見たいわ。」

 「はーいっ。」


 桃香がポシェットから弓を取り出して僕に渡す。

 桃香は女神の前、広く空いている場所に移動する。

 今日の桃香の服装は白いワンピースだ。長さは膝と足首の中間くらいかな。袖の先とスカートの裾は金色の帯のような飾りが付いていて、青色の糸でスカート部分に朝顔と兎が刺繍されている。スカートは裾に向かって広がる形で動きやすくなっている。靴も青色で踊りやすいものだ。桃香によると青色の短パンも穿いているらしい。


 今から何をするのかって?

 女神に桃香が舞を披露するんだよ。

 前回は巫女修行を始める前だったから桃香は舞ができなかった。

 今回は一通り学習済みだからね。

 女神から見せて欲しいと言われたらしい。

 まあ、桃香の舞には「浄化」と「豊穣(ほうじょう)」の効果があるから女神の力になるだけでなく、この大陸の復興の手助けにもなるだろう(復興が遅れているところもまだまだあるみたいだからね)。


 では始めるかな。

 まずは僕が弓の弦を鳴らす。

 その後、桃香が片手に鈴、もう片方の手に扇「珊瑚」を持って舞い始める。

 鈴を鳴らしながら拍子(ひょうし)をとってるんだよ。正式な舞では演奏があるんだけどね。

 最初は「浄化」の舞だ。鈴はシャンシャンと少しテンポが速い。桃香の舞も扇の動きもキレがいい感じだ。

 次の「豊穣」の舞になると、鈴はシャラ~ンとゆっくりめのテンポになる。桃香の動きも扇の動きも優雅な感じかな。

 舞の順番としては必ず「浄化」から「豊穣」だ。

 だって、キレイにしないと何でも順調に育たないだろ?

 金運だってさ、まず財布とか浄化するだろ?あれと一緒だよ。

 多分、桃香の舞によって今後1年くらいは豊作だよ。


 その頃、アルミスト大陸全土で(さわ)やかな風が吹いた後、空から光の粒のようなモノが降るという現象が起きていた。(これは、インフィニトと桐葉と蓮の3人が桃香の「浄化」と「豊穣」を大陸全土へ行き渡らせたからなんだけどね。)


 それから間もなく、各国の神殿が次のようなお触れを出した。


『女神の恩恵により、これからしばらくは豊作となるであろう。』 


 これは、桃香がオヴニル王に自分たちが元の世界に帰る日に不思議な現象が起きるかもしれないけど、皆が慌てないように対策をしといたがいいよとお願いしていたことによる。その時に1年くらいは豊作になるとも伝えていたのだ。

 そして、実際に豊作となり、人々を助けたのだった。



 「ほぉっ、モモカ、素晴らしかったわ。」

 「ホーント、よかったわよぉ。」


 「あれっ、月兎なんでいるの?」

 「ああ、大吉を迎えに来たのよぉ。」

 「ヘッ、アッシッスカ?」

 「いやぁねぇ、もうそろそろあの時期でしょ?アンタがいつもやってた~。」

 「アッ。ソッスネ。」

 「だから、1度戻ってちょうだいね~。」

 「リョーカイッス。モモカ、オワッタラマタモドッテクルッスヨ。」

 「う、うん。わかった。 あっ、月兎~、お願いがあるの~。」


 「なっ、何よっ?」

 「ここにさぁ、『水鏡』があるあの部屋に出られる扉を出してほしいの~。

  ついでに夏休みが終わる1週間前、ううんっ3日前でもいいから夏休み中に戻れるようにしてよ~。」

 「何よアンタ、(あつ)かましいわね~。」

 「だって~。私も兄様もがんばったよねぇ~。

  月兎もそう思うでしょ?

  それなのに戻ったら夏休みが終わってるなんてかわいそうだよねえ。

  それにさ、まだ小学生なのに働きすぎじゃない? どうよ?」

 「た、確かにそうねぇ。わかったわよ。篁からも頼まれたしねぇ・・・。

  でも1週間は難しいから、3日よ。」

 「わーい、ありがとう。」


 桐葉は渋い顔をしていたけど何も言わなかった。蓮はいつもと同じ反応(笑ってるよ)。

 僕も桃香を止めなかった。だって、僕も夏休み中に帰りたかったから・・・。

 でも、1週間は難しいんだね。ふーん。

 まあ、前回はこっちには1週間くらいしかいなかったよね。今回は2ヶ月くらい?予定より長くなってるね。

 時間の流れは、こっちの世界の方が速いみたいだから、前回は元の世界では時差くらいの範囲ですんだのかな?今回は長かったから3日がギリギリってとこなのかな?鋭い人なんかだったら違和感を感じるかもしれないしねぇ。3日でも僕はうれしいよ。


 月兎が扉を作って(出して?)くれた。

 やっと帰れるよ~。

 「あらあら」って顔をしていた女神と呆れ顔のインフィニトに別れの挨拶をして扉をくぐり抜けた。


 扉の向こうは本殿の奥の間だった。


 「おかえり。長かったね。」

 「「ただいま~。」」「今日、何日?」

 「おやおや、気になっているのはそれかい?」

 「当然だよっ。夏休み、大事っ。」

 「まだ何日か夏休みはあるよ。よかったねえ。」

 「ヤッターー。」


 奥の間ではお菊さんが待っていた。

 どうやらもうすぐ夕飯の時間みたいだ。

 皆で家に帰る。

 途中で桃香に「一件落着って言わなくていいの?」って聞いたら「まだでしょっ」て言われてしまった。


 「へっ?まだ?」

 「舞ちゃんの事件がまだだよ。」


 言われて気付いたよ。

 目黒美菜がこっちの世界に戻ったならば、あの事件も動くねえ。

 さて、どうなるかな?

今週もあと1話投稿します。それで第2章は終了です。

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