27 2人の聖女Ⅰ
僕は桃香たちに連絡するとテッドと話をするために、彼の執務室を目指した。
桐葉からの連絡が入ったら蓮が教えてくれるだろう。
先程、シルヴェスト公爵家の家令ベルナルドに確認したら、執務室にいるってことだったからね。
ドアをノックして声をかけると、中から「入っていいよ。」ってテッドの声がした。
蓮と中に入ると「ベルナルドから聞いて待ってたよ。座って。」って言われたよ。もう報告がいってるんだ。さすが公爵家だね。
「何か話があるんだろ?ちょうどお茶にしようとしてたところだ。一緒にどうだい?」
それでは遠慮なくと、僕と蓮は一緒にお茶を飲みながら話をすることにしたんだ。
テッドは桃香たちを呼んだって聞いてビックリしていたけどね。
なぜかテッドは桃香の立場をどうするかで悩んでいるけど、もしかして表に出すつもりかい?それはどうだろうとは思うが、そもそもまだ桐葉からの返事も来てないからね。
テッドから1度王宮に行って王たちに会ってほしいって言われたよ。
ん?王たち?
まだ王はオヴニル王だったよね?王には以前会ったことがあるね。
えー?それ以外の人ってことかな?
僕が「王たち?」って言うと、ベルタさんから話を聞いたアラベラ王妃も僕たちに会いたがっているらしいよ。確か王妃はベルタさんのお姉さんだったな。
なぜ?って顔に出ちゃったかな。
僕の顔を見て、テッドは「ふっ」て笑って「知識の追加の時間だ」って王家について話し出した。
オヴニル王、アラベラ王妃、第3王子のロジェまでは知ってた。
それ以外が追加されていった。
王と王妃には3人の息子がいる。この国には後宮というものはない。側妃もいない。だから現王の子は、3人の息子だけだ。テッドたちの従兄弟になるねえ。
ん?オヴニル王とマーカスさんも従兄弟だったよね?
あれ?って思ってたらテッドが説明してくれた。
テッドの祖母(シルヴェスト公爵家の方ね)は一人娘だったから前王の弟が婿入りしてるんだってさ。
だからマーカスさんの前は女公爵だったんだって。婿入りした人は第1騎士団の団長を長く務めていたって。
さて戻ってと、第1王子がエルンスト、第2王子がトゥーリ、第3王子がロジェだ。
僕が知っているのは第3王子だけだね。王立学院で見かけるからね。いくつかの講義では一緒になるし。
時々視線を感じるけど、今のところ話しかけられる隙を作ってないからね。わざとらしくないように上手く避けてるよ。そこは蓮がいるから上手いよ。
他の2人は見たことないね。
第1王子のエルンストは王太子らしい。2年前にノースランド国の第1王女のオパールと結婚している。いわゆる政略結婚だね。この王女(王太子妃だね)は光属性の魔法が使えるらしいよ。
第1王子は6年前、第1騎士団長として王都を守っていたそうだから浄化や癒しの力の必要性もよくわかっているんだろうね。テッドによると2人の仲は良好みたいだよ。
第2王子のトゥーリも昨年結婚している。相手はブランシュが嫁いだノルト辺境伯の隣に領地があるニックス公爵家の娘メルティ嬢、今は王子妃だね。
こちらの第2王子も6年前は第2騎士団の副団長として戦場に出ている。魔法が得意な人なのかな?第2騎士団って魔法に特化したところだったよね。
この第2王子は、数年後にはアラベラ王妃とベルタさんの実家であるアマネセル公爵家を継ぐことになってるらしい。ベルタさんたちのお父さんが今でも公爵みたいだね。
第3王子は結婚後は一代限りの大公となり、その後は大公の実績によって侯爵か伯爵の位を受ける(子どもの代だね)ことになるんだってさ。
上の兄2人とは年が少し離れてるよね。
だから6年前は当然戦いの場には出ていない。でも王妃とともに王都で炊き出しを行ったり慰問に行ったりなんかはしていたみたいだね。この炊き出しや慰問はベルタさんやブランシュも一緒に行っていたんだって。
うん?ってことは6年前、僕たちは第1王子と第2王子には見られてたってこと?
「エルンストとトゥーリは6年前のシュウたちを見てるよ。今見たら、すぐにはわからないとは思うけどね。
王妃がシュウたちに会いたがっているのは、母上から話を聞いているのもあるけれど、6年前に国を救うために力を貸してもらった礼を王妃として言っておきたいってこともあるんだろう。」
ちょうどそこで蓮が「連絡が来たぞ。」って。
「桐葉から連絡が来たよ。今日の夕方には俺たちがいるところに来るってさ。」
「ええっ。」
テッドが驚いてるな。
僕と蓮は、桃香たちが来る頃には僕の部屋にいることにした。
テッドとは夕ご飯の時に顔を合わせることにしたんだ。そして、王宮に行くことについても、その時に決めることにした。
夕方になり、そろそろ来るかなと部屋で待っていると、目の前の空間が歪み出した。とっさに距離を取る。次の瞬間、兎の形に開くと桃香を背に乗せた桐葉が飛び出してきた。
「はぁ~、とうちゃ~く。やっと着いたよ。」
よっと桃香がでっかいシルバーウルフの桐葉から降りる。足下に水色のウサギがいる?
「桃香、来てくれてうれしいよ。 ・・・ そのウサギは?」
「ああ、月兎のところから来た大吉だよ。大吉、私の兄様だよ。」
「ホォ~、モモノアニィッスカ。アッシハダイキチッス。ヨロシュウニ、アニィ。」
「あにぃ? おもしろいウサギだね。僕は柊、よろしくね。」
「俺は蓮、よろしく~。」
「ダイキチッス。」
何か蓮と大吉の間が不穏だね~。バチバチッって聞こえてきそうだよ。
人の姿になった桐葉が向こうで溜め息ついてるよ。
揉め事はゴメンだから桐葉よろしくねー。
っと、あれ?桃香の色が・・・。
「桃香、髪と瞳の色が僕と一緒だね。」
「ホッホッホ、そうでしょ。蓮に色を聞いて一緒にしてみたー。
聖女の色はこっちでは目立つし、この色だったら兄妹ってすぐにわかるだろうしね。どう?」
「うん、似合ってるよ。それに兄妹ってすぐにわかるのもいいね。もともと僕たちは髪と瞳の色は同じだからね。こっちの世界でも同じでいいよね。
でも、そんなことが出来るようになってたんだねぇ。」
「ふふっ。これはねえ・・・。」
桃香はどうやっているのかを教えてくれた。
要は目くらましだ。こっちの世界での桃香自身の髪と瞳の色は聖女の色になっているんだけど、他人にはプラチナの髪と水色の瞳に見えるようになっている。
言われてよく見ると、ピンクゴールドの髪と金色の瞳が重なって見えるね。上手いもんだ。
普通の人には絶対にわからないだろう。
その後、テッドと一緒に夕食となった。
「モモカ、いらっしゃい。まさかモモカとも会えるとは思ってなかったよ。
それに今回はシュウと同じ色だから、我々3人は同じ色ってことになるね。」
テッドに言われるまで気付かなかったけど確かにそうだね。同じ色だよ。テッドは初代のハヤトと同じ色だからね。
食事をしながら桃香と桐葉にこっちの世界でのことをテッドと僕から話したんだ。
ついでに蓮からは何で桃香たちを呼ぼうと思ったのかについても。
「うーん。俺の目よりも桃香や桐葉の方がよくわかるんだと思うんだよ。
なーんか、違和感があるんだよね。魂がブレてるような・・・?」
「はぁ~、そっち系か?」
「多分ね。」
「桃香、どうする?」
「うーん。直接見てみないとわかんないよ。」
「そうだな。」「「そうだよね。」」
テッドは僕たちが何を話しているかわかんないだろうな。でも、今はまだ説明はできないかな。こっちも確かめてないからね。
で、桃香が直接ミーナを見る場があるか、会わせる場面は?ということを話していたら、なぜか桃香たちも一緒に王宮に行くことになってしまった。
行くのは2日後(早いな)。
それまでにもう少し調べてみることにした。
桃香の目がキラキラしてニコニコ顔でデザートを食べてるんだけど、あれは何か面白いことを見つけたときと同じ反応だな。何かやろうとしているな。(かわいいけどちょっと怖いんだよね~)
そして2日が経ち、今日は僕たちが王宮に行く日だ。
王宮に行くときの格好って大変だよね。
僕たちの準備はそうでもないけど桃香はねえ。自分だけで準備できない。
僕たちの服や桃香のドレスは公爵家が用意してくれた。僕と蓮は何回かこっちのお茶会に出席しているから、こっちのマナーについても学習済みだ。何か桐葉も大丈夫そうだね。
桃香は昨日ベルタさんから教えてもらってた。
昨日の午後、マーカスとベルタさんが来てくれたんだよね。桃香に会いたかったってのもあるんだろうけどさ。
で、夕飯も一緒に食べて1泊して王宮にも一緒に行くことになった。まあ、夕飯の時にも色々話が聞けたからよかったよ。調べていて「ん?」って思っていたことも繋がったしね。
さて、王宮に着いたようだね。
僕たちはすぐに王と王妃がいる部屋に通されたよ。
まずは王たちと話をして、その後王子たちとも会うんだってさ。
じゃ、まずは前半?かな。そこでは王と王妃、マーカスとベルタさんとテッド、僕たち4人の9人で話をした。(大吉もいるんだけど姿は見えないようにしてるよ。どこにいるかって?小さくなって桃香の肩の上にいるよ。)
ああ、そうだ。蓮と大吉の緊張状態はあの日のうちに解決したよ。大吉は生きてる年数(この言い方であってるかな?)が分かるみたいで、蓮が自分と同じくらいか下って思ったみたいなんだよね。で、自分が上だとマウントを取ろうとした・・・(何やってんだろうね)。それに気付いた蓮がムッとしてあの不穏な感じになったんだよねえ。
その晩、僕の部屋で蓮が巨大な犬の姿になったら一発で解決した。部屋の内部に大きな膜みたいなものを張ってたけど、この中の空間は何かおかしかったなぁ。だって普通に考えたら蓮の大きさは部屋に入らないよ。大吉はそこまで大きくなれないのかガックリ項垂れていた。勝負あったね。蓮によると蓮の方が少し長く生きているらしいよ。
その後は「レン」「ダイ」と呼び合って、まあ上手くやってるんじゃないかな。桐葉もやれやれってホッとしてたね。
それに大吉って調べるのが上手くって、僕たちはすっっごく助かったんだ。姿が見えないようにできるし、水鏡から出てきたって聞いたけど色々なモノをすり抜けられるし、よくないモノを感じ取るのも抜群なんだよ。
ホーント助かったよ。
ああ、王様たちとの話の途中だったよ。
桃香が質問しているようだね。
「この世界では聖女の地位はどれくらい?
聖女が王様や王子様と結婚したいって言い出したらどうするの?」
これにはオヴニル王が答えるみたいだね。
「うん。聖女はね、この国では大神官と同等かそれに次ぐ位になる。同等にするかどうかは能力と実績によるね。だから最初から同等ではないよ。この大陸では大体どこの国も同じようなものだね。
次に結婚についてだが、聖女が選んだ人物であれば基本的には認められる。ただし、その相手がすでに結婚している場合は別だ。夫婦仲がいいのに聖女が好きになったからと別れさせるということはない。
聖女が王や王子と結婚したい場合、王や王子が独身の場合は結婚できるな。もし婚約者がいる場合は状況による。政略結婚の場合は調整できることもある。が、政略であってもすでにお互いに好意を持っている場合は、その間を裂いてまでということはしない。ただこれも国によるね。」
「ふーん。じゃあね、もし聖女が第3王子と結婚したいって言い出したら、この国はどうするの?」
桃香が突っ込んだ質問を出してきたねえ。
「うっ、うーん。そうだねえ、ロジェには婚約者がいるから両者の考えを聞いた上でガルブ辺境伯と話すことになるだろうね。」
「ふーん。さっき国は聖女を保護するって言ってたよね。浄化や癒しの力を持つ者は少ないし、普通の神官よりは力も大きいしね。
もしね、第3王子が聖女がいいって言ったらさ、第3王子には新しい婚約者ができるよね。じゃあ、令嬢のほうは?今から新しい相手を探すの?高位の令嬢なのに、相手見つかるの?
聖女の父親の場合は、相手の女性にも好きな人がいたみたいだからよかったけどさ。」
「ははっ、モモカは聞きにくいことをはっきり言うね。」
「それについては、私から話そう。」
ん?マーカスさんが答えるんだ。
「もし、ロジェ殿下とエウラリア嬢の婚約が解消されることになったら、エウラリア嬢には我がシルヴェスト公爵家に来てもらいたいと考えている。我が家にはテッドがいるからな。
勿論これはエウラリア嬢とガルブ辺境伯次第ということにはなるがね。
テッドの了解は得ているよ。」
「ほっほぉー、なるほどねえ。」
何か桃香が腕組みしてうんうんって頷いてるねえ。
何か腕組みできなかった桃香を思い出して懐かしくなったよ。
ああ、そうそう。
さっき桃香が聖女の地位について聞いていたけど、この国での僕たちの位置は王族と同格扱いになっている。
僕たちは前回こちらに来たときにこの国を救っているからね。
それに王家とシルヴェスト公爵家は僕たちが何者かも知っているからね。桐葉や蓮はこっちでは神獣、僕たちはこっちの聖女より力ある者だ。(こちらの世界の女神とも直接話せるしね。)
だから僕たちを知らない者たちの前では他の高位貴族と同じように王に接するけど、私的な場では同じ立場として接しているよ。
さあ、それでは次は王子たちと会いましょうか。




