25 異世界での学院生活Ⅱ
なぜか僕は異世界でも学校に行くことになってしまった・・・。
なんでこうなったんだろう?夏休みのはずなのに。
最初にこの世界で降りたノースランド国は、北方にある国なので少し肌寒いくらい涼しかった。だから避暑地にやって来た気になって嬉しかった。
僕が住んでいる場所も山だから平地に比べたら涼しいよ。でも湿気もあるからね。
こっちの方が断然過ごしやすいんだよ。
その中での訓練。やる気に満ちていたのに。
いや、これからもできるよ。テッドからも行っていいって言われてるからね。
でも、どうしても割ける時間は短くなるよね。状況によっては休みの日にも別のことが入ってくるかもしれないしね。
あ、あ~~(残念だー)だよ、全く。
まあ蓮が「聖女」を見たがってるし、仕方ないか。
僕はテッドの頼みに「いいよ。」と答えた。
その後の動きがまた速かったね~。
その日のうちにテッドと一緒に王都に向けて出発することになった。
ピーターとブランシュにお世話になったお礼と別れの挨拶をした時に、ピーターからは後日王都に行くからまた会えるよ、って言われたけど会議でもあるのかな?
そして王都のシルヴェスト公爵邸に着くと、テッドは僕たちの編入の手続きと僕たちへの入学前の準備を始めたんだ。
手際いいよね。
王宮にいるマーカスさんとも連絡を取ってたみたいだね。
翌日の夕食は、マーカスさんとベルタさんも一緒だと言われたよ。
へぇー、王宮からここに来るんだね。
マーカスさん夫妻はテッドに家督を譲ってから王都内にある別邸に移ったらしいんだけど、王宮内にも部屋があるらしくてそっちにいることが多いみたいだ。
宰相としての仕事が忙しいこともあるんだろうけど、マーカスさんとオヴニル王は従兄弟同士だし、ベルタさんとアラベラ王妃も姉妹(王妃が姉)だしね。
そうか、わざわざこっちに来るんだ~。
また何かあるのか?
つい心配になるね。もうこれ以上は頼み事はいらないよ。僕も暇ではないんだよ。
その日の夕食は5人だった。
テッド、マーカスさん、ベルタさん、僕と蓮。
夕食は美味しくいただきましたとも。
メインの肉もデザートも満足でしたよ。
マーカス夫妻は僕たちとの再会を喜んでくれたよ。
僕の髪と瞳の色が、初代のハヤトと同じになっていることにはビックリしていたようだけどね。
そして改めて、前回のことへの感謝と今回の協力についての感謝を告げられたよ。
さて、マーカスさんたちが今夜来た理由がわかったよ。
マーカスさんはテッドからの連絡を受けて、僕たちの王立学院への編入についてと僕たちの身分をオヴニル王と相談してきたそうだ。
この世界には、僕たちが住む国のような戸籍は存在していないみたいだ。
だから、地位ある者が身分を証明すればそれで通じるということだ。
どうも僕と蓮はシルヴェスト公爵家の親族の子ってことになったみたいだね。
これまで親の仕事の関係で他国にいたけど、そろそろ学校に入る年齢になってきたから戻ってきた、と。
貴族の中にも商売をしている家はあるみたいだからね。
聖女ミーナもこの国に来たのは学院に入る1年前だ。
十分あり得る話だ。
まあ前回来たときに聞いた話だとシルヴェスト公爵家ともイーストウッド国の王家とも血縁関係はあるみたいだから、全くの嘘でもないよね。
それに僕と蓮の髪と瞳の色からも大丈夫でしょ。
僕の銀色の髪と水色の瞳はシルヴェスト公爵家の初代の色、蓮の金色の髪と緑の瞳は王家の初代の色だ。
王家とシルヴェスト公爵家はこれまでに何度か姻戚関係を結んでいる。
初代からそうだ。イーストウッド国初代王の妹がシルヴェスト公爵家初代のハヤトと結婚している。
その後もシルヴェスト公爵家から王家に嫁いだり、王家からシルヴェスト公爵家に降嫁したりしているんだ。
だから王家にシルヴェスト公爵家の色が出たり、シルヴェスト公爵家に王家の色が出たりしてもおかしくないんだよね。
僕と蓮の姿なら疑われないでしょ。
翌日、僕と蓮はテッドとマーカス夫妻の3人から王立学院についての説明とこちらの世界での常識、それと編入試験の対策を丸1日かけて詰め込まれた。
つ、疲れたよーー。
マーカスは王宮での仕事を1日休んで、僕たちに付き合ってくれたみたいだから、文句は言えないねぇ。
一応主要な貴族家の名前と派閥(やっぱりあるんだね)、王立学院に在籍している令息・令嬢の情報なんかも教えられたよ。全部は無理だから本当に主要な一部だけだね。後は、学校の中に入って覚えればいいと情報が書かれた冊子のようなものを渡された。慣れない間は外国での生活が長かったので勉強中とでも上手く誤魔化すかー。そこら辺は得意ですよ(蓮が)。
魔法の属性については、僕が水(「氷」も使用可)、蓮が風ってことにしてもらった。ホントは2人とも全属性使えるけどね。いくらなんでも目立つだろう。程々にしとこう。
2日後に編入試験を受けて、3日後に合格通知が届いた。
そして、1週間後には学校に通ってるって、早すぎだろ。
それにしてもイーストウッド国にも四季があったんだねえ。初めて知ったよ。
前回は季節なんか考えている余裕なかったもんねぇ。
こっちは入学が秋なんだね。
今は春ぐらいだ。
ということは、もう年度(この言い方があるかは知らないよ)終わりに近いんじゃないかな?
僕と蓮はミーナと同じクラスに入るようだ。
授業も彼女が受講しているものとできるだけ重なるようにしてるみたいだ。
男子学生と女子学生が別れるものは第3王子と同じにしているのか。
両方の様子と、後は・・・っとそうそう第3王子の婚約者の様子も見なきゃね。
はぁ~、僕と蓮の2人で大変だねぇ~。
まあ、引き受けたからにはがんばりますよ。
ん?11歳なのに13歳以上の学校で大丈夫かって?
それは僕も少し心配ではあるけど、僕身長は高いんだよね。今、170センチ近くあって、まだ成長中。蓮は180センチ以上あるからね。見た目は多分大丈夫。
知識は元の世界の方が進んでるようだから問題ないね。ああ、こちらの一般常識は別だよ。魔法もねえ、蓮と異世界で訓練していたから大丈夫だね。
逆に元の世界にない魔道具の製作なんかには興味あるねえ。
ま、どうせやるなら楽しめるところは楽しまないと損だよね。前向きに行くよ。
さてさて、編入して2週間経ったよ。
この間、ミーナ、ロジェ殿下、エウラリア嬢の3人を中心に観察してきたよ。
ただ、3人が中心だけどさ、周囲に側近候補だの取り巻きだの以外にちょっかい出してくるのもいるからさ。
そこの関係や背後まで調べると、まあ大変大変。
蓮と手分けしたり、場合によってはテッドやマーカス夫妻の手も借りたりしてるよ。
休みの日には武者修行もやっていいって?
できると思う?できるか(怒)。
休みの日も何をしてるか調べて、こっそり様子を覗いたり一緒のお茶会に参加したりと樹海に行く暇なんてないよっ。
それにしてもベルタさんに王立学院での女子学生の社交(?)について聞いていてよかったよ。
最初この説明を聞いたときには、「いや、それ僕たちには関係ないよね。」って思いながら聞いていたけど、しっかり役に立ちましたよ。
女子学生の調査のために蓮が女装したのにはビックリしたけどさ。
女性騎士の格好をしてエウラリア嬢の近くで様子を見てきたり、女子学生や侍女の振りして寮や女性だけのお茶会に潜り込んだり大活躍だよ。
蓮によると、もともと性別はないから自由に変えられるし、大きさ(身長?)も変えられるらしい。
これは便利と言っていいのか?
僕は助けられてるけどね。
それでいろんな事がわかったし、あれっ?って思う事もあったよ。
僕たちが王立学院に編入してすぐの頃、いや編入した当日だったか?
僕と蓮が一緒に次の授業場所に移動しているところに、ミーナが1人で近付いてきたんだ。
「あのぉ、私ミーナって言いますぅ。 私も最近この国に来たんですぅ。
少しだけどこの国については先輩だから、何か分からないことがあったら聞いたくださいねぇ~。
仲良くしましょうねっ。」
「えっと、それはありがどう。
でも次の授業は男女別の授業だから、こっちに来たら教室から遠くなるんじゃないの?
遅れないように急いだ方がいいよ。」
「えーっ、大丈夫ですぅ。 でも心配してくれるんですねぇ。うれしいっ。
じゃあ、仲良くしてくださいねぇ~。」
何かクネクネしていてイヤだなって思ったよ。
蓮なんかスンって顔して、黙って明後日の方向を見てるし。
話す気がないんだろうな。
しっかし確かにマナーはなってない。
ベルタさんからは、身分の下の者から話しかけるのはマナー違反って聞いたな。
ミーナは子爵家の令嬢、僕は侯爵家の子息ということになっている。蓮は僕の邸の執事の息子という設定だけど、爵位はあって子爵家の子息ってことになっている。
この場合は、僕が一緒にいるから子爵家の令嬢であるミーナから話しかけるのはダメだね。
それにあの話し方。
元の世界にもいるけど、あの話し方がかわいいとでも思ってるんだろうな。
あの話し方がカワイイと思う男もいるかもしれないが(特に自分より頭のいい女性は苦手な男とかだね)、僕と蓮は逆だね。
まっったくカワイイとは思わないね。普通に話してほしいよ。
別の日、こっそり彼女の様子を窺っていたら、何か面白くないことでもあったんだろうね。
自分の親指の爪を噛みながら誰かを罵ってたよ。
「一体何なのよ、あの女。自分の方が身分が高いからってエラそうに。
何が『もう少しマナーを勉強なさったら』よ。余計なお世話よ。
私は聖女なんだから、この世界のイケメンは全部私のモノなのよっ。」
人の悪口を言うときには、もっと周囲に注意した方がいいよね。
「壁に耳あり障子に目あり」って言うよねー。ここ、外だけどさ。
うーん?この世界に「イケメン」って言葉あるのか?
気になってベルタさんに聞いたらないってさ。
じゃあ、最近の若者言葉か?って思って調べたけどなかった。変だね?
テッドがピーターから聞いていた、浄化や癒しができる光の魔法を持つにふさわしい心優しい少女とは、どうも違うようだよ。
それに最近は魔法の授業も「体調が悪い」って休んでるようだしね。
入学当初は確かに使っていたみたいなんだよねえ。
半年後くらいに何あったのかな?何があったんだろう?調べてみるか。
ということで、蓮と調べてみたよ。
わかったのは、ちょうどその頃ミーナは学院で階段から落ちて頭を打ってるんだよね。
入学当初からしばらくは、王立学院に早く慣れるようにと第3王子がお世話係みたいにミーナの傍にいることが多かったみたいだ。
半年ほど経った頃には、学年も違っていたしミーナにも話す友人ができたことで第3王子は少し距離を取っていたようだね。
そこに、エウラリア嬢の取り巻きの令嬢たち数人がミーナにちょっかいを出してきた。第3王子はエウラリア嬢の婚約者なのに馴れ馴れしい、と。
幸いなことに、ミーナがいた場所が階段の下の方だった。一番上からだったらよくて大ケガ最悪死ぬね。
その時、話していて興奮したのか令嬢の1人がミーナを押したようで、足を踏み外したミーナは階段から落ちるときに手すりに頭をぶつけて気絶したみたいだね。
ミーナにちょっかい出した令嬢たちは誰かわかっているし、王立学院から指導(処罰?)もされているようだね。
んー、一応エウラリア嬢の取り巻きってことだったからエウラリア嬢が指示していないかも調べたよ。
学院でも調べたようだけどさ、念には念を入れてね。
彼女は関わってなかったよ。
取り巻きっていってもエウラリア嬢と仲がいいわけではなく、勝手に近くにいただけに近いね。力がある者に近付きたがる者はどこにもいるんだねぇ。
まあ子爵家や男爵家の令嬢がほとんどだったけど、1人だけ伯爵家の娘がいた。伯爵家とはいっても落ち目の家みたいだけどね。どうも指示を出していたのはこの令嬢だね。
自分より身分の低い子爵家の娘なのに、聖女ということで第3王子にかまってもらえるミーナが憎らしかったんだろう。エウラリア嬢のためにやったんだと恩でも売るつもりだったのかな。勘違いも甚だしいよね。
「ねぇ蓮、ミーナ嬢は頭打って性格変わったみたいだけど、そんなことある?」
「ないんじゃない。それより俺、もっとオモシロい理由を思いついたんだけどさ。」
「面白い?」
「そっ。ミーナは異世界転生した子で、頭をぶつけたショックで異世界で生きていた前世のことを思い出したってヤツ。」
「はぁ~っ、蓮、真面目に考えてよ。」
そういえば、僕が同級生の女の子からなぜか借りることになった異世界転生ものの本(ラノベって言うの?)、蓮が読んでたんだよね。
夏休み前だったかな。教室で異世界って聞こえたから、つい「異世界?」って口に出たんだよね。そしたら近くで話していた女の子たちの1人が(何か焦ってたみたいだけど)「えっ、シュウサマ?いや、えっと神代君、異世界に興味あるの?だったらこれ、私たちのオススメだから読んでみて。」って言って、本を僕に渡して(押しつけて?)返事も聞かずにサーッと去って行ったことがあった。
しょうがなく持ち帰って机の上に置いてたら、本に気付いた蓮が笑いながら読んでた。
僕は興味がないジャンルだけど、読む人がいてよかったよ。桃香も多分興味ないからね~。「作り物より現実の方がイロイロあって面白いよ。」って言うだろうな。
本は2日後くらいにお礼を言って返したよ。(蓮の)感想とともに。
「たださあ、ちょっと気になることがあるんだよね。」
「何が?」
「うーん?桐葉か桃香がいたらもっとハッキリするんだけど。
なあ?桐葉と桃香も呼ぼうぜ。」
「あの2人ってことは、あっち系?」
「んっ? その可能性あり。」
「はあぁ?・・・」
僕にはわからないけれど、何か気になることが蓮にはあるみたいだ。
これは ・・・ 桃香と桐葉に来てもらうことになるのかな?




