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異世界の管理人  作者: 東風
第2章
19/34

19 新しい出会いⅠ

~ 桃香と柊 ~


 あれは私が5歳のころだったかな?

 天気はあまりよくなかったなー。

 曇り空のその日も桐葉と樹海に出かけて浄化のお仕事をしていた。

 その時には「珊瑚」を手に持っていたから、5歳にはなっていたはず。

 天気が悪かったせいで、夕方近くになるとあたりが暗くなるのが早かった。

 暗くなる前にと家に急いで戻っていたら、門を入って玄関通路を通っているところで名前を呼ばれた気がした。

 立ち止まって辺りをキョロキョロ見回していたら、また「こっちだよ」って声が聞こえたんだよね。

 で、そっちを見ると井戸の傍に立ってる人がいた。

 何か不思議な(昔風?)格好をした男の人がいた。

 桐葉に止められなかったから大丈夫なんだろうと思って、その人に近付いていったんだ。

 近くまで行って立ち止まると、その人が話しかけてきた。


 「初めまして、私は小野(おの)と申します。

  桃香ちゃん、少し早いですが“時”が来たようです。

  私の上司が会いたがっております。

  今晩、この場所に柊君と一緒に来ていただけますか?

  ああ、勿論それぞれの導き手も一緒に。」


 「え~と?

  きりは、いってもいいのかな?」

 いつの間にか人の姿になっていた桐葉に確認する。


 「うむ、家で伝える必要はあるが、多分、大丈夫であろうよ。」


 「それなら・・・ はい、だいじょうぶです。」


 「ふふ、それはよかった。

  では、ここであの月が真上に差しかかった頃、お待ちしております。

  それではまた(のち)ほど。」

 そう言うと、その人はフッと消えてしまった。

 空を見ると、いつの間にか月が出ていた。


 「きりは、あのひと、なにもの?」


 「うーん、今晩行ったらわかると思うぞ。」


 その後、急いで家の中に入ると、お祖母様たちへの説明は桐葉に任せて、兄様に伝えに行ったのであった。



 そして、その夜の出来事。

 お風呂に入ってご飯を食べた私は、居間でソファーに座ってお祖父様と時代劇を見ていた。

 時間通りに「悪」は成敗(せいばい)され、エンディング曲を聞きながらウトウトしていたら、桐葉に呼ばれた。


 「桃香、そろそろ行くぞ。」

 「はーい。」

 私は目をコシコシしながら返事をした(すぐに目を(こす)るなと桐葉に注意された。ついやっちゃうんだよね~)。



 勝手口で兄様たちと合流する。

 居間では、お祖父様が今度はお祖母様と映画を見ながらお茶を飲んでいた。

 お父様とお母様は会社関係のパーティーがあるとかで、まだ帰ってきていない。

 なので、玄関から出てもよかったけど、勝手口から出て行くことにした。

 出るときに、お菊さんから「ここで待ってますから、気をつけて行ってきなさいね。」って言われた。祖父母も向こうで頷いていたから、一緒に待っていてくれるんだろう。

 「「はい。()ってきます。」」

 と、兄様と答えて勝手口から出た。

 私はパジャマにもなる、お菊さん作の白狐の格好(勿論サイズは3歳の時より大きくなった)で、兄様は紺色のスウェットの上下だ。

 桐葉と蓮は人の姿になっている。桐葉はいつも通り焦げ茶色の髪に灰色の瞳だが、蓮は薄い茶色の髪に茶色の瞳になっている(目立たない色にしてるんだって)。この2人は黒のシャツと黒のパンツだ。

 4人で井戸の所に行くと、夕方会った人が待っていた。


 「では、参りましょう。」

 と言って、その人は井戸の中に入っていく。


 「えっ?」と思って近付くと、井戸の外側に階段状の足場があり、井戸の中はエスカレーターのようになっていて、乗れば自動で降りていくようになっている。空間がオカシイ。どうなってんの?

 大体、この井戸は危ないからって、普段は(ふさ)がれていて中に入れない(落ちない?)ようになっている。井戸の水脈は生きているから、非常時の水源として管理されているのだ。

 「吾が先に行こう。」と言って桐葉が中に入って行ったので、私、兄様、蓮の順で後に続く。

 井戸に降りていくのに水はなく、何か別の空間に出たようだ。

 降りた先には、小野さん(だったよね?)が待っていて、「こちらに」と私たちを先導していく。

 広い廊下のような通路を進んでいき、両開きの扉から中に入ると、だだっ広い部屋だった。

 いや、奥の方に人がいる。

 そちらに歩いて行くと、一段高くなっているところに大きな机を前にして椅子に座っている人がいた。立派な服を着た、怖い顔をしている男性だ。両脇には書類を抱えている人がいる。

 大きな机の前まで行って立ち止まった小野は、座っている人に「お連れしました。」と言うと左側に移動し、今度は桃香たちの方を向いて話し始めた。


 「正面に座っておられるのが、冥界(めいかい)の裁判官の一人、閻魔(えんま)様です。

  今回、あなた方を招いた方です。

  それと、(わたくし)は閻魔様の補佐をしている小野篁(おののたかむら)と申します。

  今後も顔を合わせることがあるかもしれませんから、どうぞお見知りおきください。」


 「よう参った。

  皆のことは知っておるから自己紹介は必要ない。

  長くなるかもしれんので、まあ座られよ。」


 続けて正面の人物が話し始めたのだが、普通に話しているように見えるのに、大音声(だいおんじょう)というような体と心に響く声だった。

 ちょうど大きな机の真正面で立ち止まっていた桃香たちは、その場所でその声を聞くことになった。

 驚いた桃香は「うぴゃっ」と変な声が出てしまった。

 後ろを向くと、いつの間にか椅子があったので、4人は右から桐葉、桃香、柊、蓮の順で椅子に座って話を聞くことにした。

 4人が座ると閻魔様が話し始めようとしたのだが、なぜか突然桃香が手を挙げた。


 「はい、はーい。

  そのまえに、ききたいことがありましゅよ。

  えんまさまは、じごくにいるという、あのえんまさまですか?

  なら、ここはじごくで、じごくによばれたってこと?

  まだ、そんなにわるいことはしてないのに?」


 隣に座っていた桐葉は内心(ないしん)焦っていた。(桃香、人の話を(さえぎ)ってはならん。失礼だ。それに「そんなに悪いことはしてない」って何だ?どんな悪いことをしたんだ?それと勢い余って噛んだな。)


 「ほお、(わし)に向かってハッキリ物が言えるとは度胸があるのぅ。

  そうじゃ、儂が地獄にいると言われている閻魔じゃ。

  まあ、ここは地獄の中ではないがな。

  ここで地獄に行くかどうかが判断されるのじゃ。

  そなたたちは、まだ死んではおらぬから今回は関係ないのぉ。

  別のことで呼んだのじゃ。」


 「ふぅーん、そうですか。

  じゃあ、じごくってけんがくできるんですか?」


 「なんじゃ、地獄を見たいのか? 楽しい場所ではないぞ。

  それに、そこに行く者しか行けんな。

  さて、儂の話をしてもよいかな?」


 「はーい。」

 「妹が、閻魔様のお話を邪魔してしまって申し訳ありませんっ。」

 「んっ?・・・ごめんなさーい。」


 柊が桃香の代わりに謝ると、桃香もマズかった?と思ったのか謝っていた。

 桐葉は、後で指導が必要だなと思いつつ黙っていた。

 蓮は無表情で黙っていた(が、さっすが桃香いつもオモシロいね~と思っていた)。


 「まぁ、よいよい。では、なぜ今回そなたたちを呼んだかじゃが・・・


 閻魔様が今回呼んで話をしようとしたのは、まだ幼い柊と桃香を心配してのことだった。

 管理者として冒険者と巫女の才を持っているだけでなく、金環持ち金粉持ちであること。そのため、教育もほぼなされていないに等しい7歳と3歳の時に異世界に行くことになってしまったことにも心を痛めていた。

 導き手がいるとはいえ、幼い2人には自分の才能を上手くコントロールできないのではないか、何しろ神に代わって()り行うような役割なのだ。

 自分の持つ力を間違って使えば、被害も甚大(じんだい)なものになる。

 幼いから、よくわかっていなかったからでは()まないのだ。

 罪は罪となり、罰する対象となる。

 幼くとも自分の持つ力が大きなものであり、扱いには十分気をつけなければならないということを知っておくべきなのだ。

 理屈(りくつ)ではわからなくとも、実際に地獄はあるのだ。だから、悪いことをしたらダメなんだ、くらいは感じてほしい。

 少なくとも、何か行動に移す前に「これは正しいことなのか」と考えて行動してほしい。

 自分の持つ力に振り回されたり、(おご)ったりして間違った使い方をしないでほしい。

 罪を犯してほしくないのだ。

 (つら)い後悔がないように生きてほしい。

 毎日頑張って修行している2人を知っているからこそ、伝えておきたいことであった。


 ・・・・・・

 柊と桃香よ、大きな力を持って生まれた者は責任もまた重いのじゃ。

 力の使い方には十分気をつけ、安易(あんい)に使ったりしてはならんぞ。

 そして、正しく生きよ。」


 柊と桃香は神妙(しんみょう)(おも)持ちで話を聞いていた。


 「ただしくいきる・・・?」


 「ハッハッハッ。まだ、ちと難しかったか。

  そうじゃのう・・・

  いつもお天道様(てんとうさま)に見られていると思って()ずかしくないようにすればよい。」


 「おおぅ、おてんとさま、じだいげきできくことば。

  わかりましたよ。」

 桃香はフンスッと鼻息荒く返事をする。


 柊は桃香かわいいなぁと思いながらニコニコ顔で見ているが、桐葉はハアーッ(桃香ホントにわかってるか?)と小さくため息をついていた。


 話が終わると、来たときと同じように小野氏が送ってくれた。

 井戸のところに戻ってくると、小野氏が言った。


 「ここの井戸は、いつもあの場所に繋がっているわけではありません。

  今晩だけ繋ぎました。私が戻れば元に戻ります。

  何か私どもに用がある場合は、神楽山のお地蔵様に伝えてください。

  伝え方は導き手のお二方(ふたかた)御存知(ごぞんじ)でしょう。

  それでは、これで。」


 そう言うと、小野氏はまたフッと消えてしまった。

 井戸を見ると、元の塞いだ状態に戻っていた。


 「ほわぁーっ、もどってきましたよ。 ももかはもうねむいでしゅ。」

 そう言って桃香は大きな欠伸(あくび)をした。


 「うん。 早く部屋に戻って寝よう。」


 そう言うと、柊は桃香と手を繋いで勝手口に向かった。

 家に入ると、まだテレビを見ていたお祖父様が僕たちに「おお、お帰り。」と言ってくれた。続いてお祖母様とお菊さんが「お帰りなさい。もう眠いでしょうから早く寝なさいね。」と。


 僕と桃香は、「はい。お休みなさい。」(桃香は「はーい。おやすみなさーい。」だけど)と言って、サッサと部屋に行って寝ることにした。

 お父様たちは、まだ戻ってないみたいだった。

 時計を見たら、出かけて1時間くらい経っていた(もっと長かったように感じていたから意外だった)。

 あっちでの話は、桐葉と蓮がお祖父様たちにしてくれるだろう(多分)。

 僕たちはもう眠くて無理。オヤスミ・・・。


 翌日は休日だったのもあって、僕と桃香はいつもより1時間遅く起きた。

 家族もゆっくり休ませようと思ったのか、起きるまで起こさないようにしていたみたいだ。ありがたい。

 で、しっかり睡眠を取り、スッキリ目覚めた僕たちは朝食を食べると、腹ごなしのために蓮と桐葉を連れて散歩に出かけた。

 しばらく歩き、見晴らしのいい所まで来ると僕はストレッチをして体をほぐすことにした。

 辺りには僕たち以外、誰もいなかった。

 ふと桃香の方を見ると、どうも桐葉に説教されているみたいだ。

 桐葉の声は聞こえないが、桃香の声は時々聞こえてくる。「はい。」とか「これからはきをつける。」とか。

 多分、昨夜の言動を注意されているんだろうなぁ。

 しょぼくれて、ちょっと涙目になっている桃香もかわいいなぁと思いながら見ているけど、本人に言ったら怒るから言わないよ。ぷんぷん怒る桃香もカワイイけどね。


 家に戻る途中、昨夜から気になっていたことを桃香に聞いてみた。


 「そういえば、桃香は地獄に興味があったの?

  見学したいって言ってたけど。」

 「ううん。しのちゃんがみてみたいって、まえいってたからきいてみただけ。」

 「ああ、そうだったんだ。」


 どうも桃香ではなく、友だちの希望だったようだ。


 その日は、昨夜言われたことについて考えたり、疑問に思ったことを蓮に聞いたり、勿論、冒険者になるための修行や学校の宿題をしたりして過ごした。


 そして数年後、父様が導き手について話してくれたときに、「正しく生きる」って聞いて、この言葉、前にも言われたなぁ、って思って、改めて「正しく生きる」ってどう生きることなのかを考えるようになった。

 すぐに答えは出せなかったけど、考え続けることに意味があるのかもしれない、と思うことにしたんだ。

 蓮も「今はそれでいいんじゃない」って言うしね。

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