17 日々成長中Ⅰ
「はぁ、終わらないなぁ。また怒られちゃう・・・」
「ちょっと!まだ終わってないの?(怒)」
「ホント、グズな子ねぇ~(嘲笑)」
「本当にできの悪い子ねえ。そのくらいもできないなんて。」
「お、お母様、申し訳ありません。」
「さぁ、あなたたちは出かける準備をしないと間に合わなくなるわよ。」
「「はーい、お母様。」」
「お前は、終わらせられないなら ・・・ 尼寺へお行きっ!」
「ちょっと桃ちゃん、台詞が違うわよ。
それじゃあ、別のお話になっちゃうわよ。」
「えへへ、そうでした。
ちょっと調子に乗りすぎましたよ。
ごめんなさい。大伯母様」
「ちょっと!大伯母様呼びは止めて!
薔子って呼んでって言ったでしょう。」
「はーい、薔子さん。」
皆様、お久しぶり(?)です。
神代桃香、6歳になりました~。小学部の1年生で~す。
今は、近付いてきた文化祭でのクラスの演し物の練習中。家で練習していたので私(継母役)以外はモチロン代役だよ。
因みに今日の配役は、シンデレラ(柊兄様)、姉1(母様)、姉2(お祖母様)だよ。
なぜ兄様がシンデレラって?何役でもいいからやりたいって本人が言うからだよ。それに兄様、長髪が似合う美形だから女役もいける!
私も兄様もストレートの黒髪、長さは肩甲骨ぐらいまである。兄様、昔は短かったんだけど母様が「1回長髪にしてみて~」と兄様に頼み込んで似合ってたから「もうちょっと見たい~」と言い続け、兄様が負けた。兄様、武術で鍛えてるから筋肉付いてるんだけど、着やせするのかな?ムキムキじゃなくスラッと見えるから長髪も似合うのー。
父様もやりたいって言ってたけど、秘書に引きずられて泣く泣く会社に行った。お疲れ様~。兄様はドヤ顔で見送っていた・・・。
大伯母様は、梅子お祖母様のお姉さん。現在帰国中で実家である神代家に戻ってきている。本名は神代松子。世界的に有名な女優さんで、芸名は松雪薔子。普段は米国に住んでいる。モチロン現役で今でも舞台や映画に引く手あまた。もう年だから仕事は選んでしないとね~とのこと。お祖母様の姉だけど、30代に見える(きゃ~スゴいわ~。怖いわ~)。梅子お祖母様も孫がいる年には見えないと言われるけど・・・。
梅子お祖母様は3人姉妹の末っ子だ。長女が松子、次女が竹子、三女が梅子だ。松竹梅で縁起がいい(?)。竹子大伯母様は建築家で世界中の古い建物を修復したり斬新だけど住みやすい(使いやすい?)建物を作ったりしてる。毎年数回は3人揃うようにしてるみたい。今回は帰国してないけど。
以前、薔子さんの映画を見た兄様が「薔子さん、スゴいです。」と絶賛したことがあった。薔子さんは「うふふっ、柊ちゃんありがとう。でもね、私がここまでになれたのは好きなことをさせてくれた家族がいたからよ。竹子もだけどね。」って言ってた。
3人姉妹だけど導き手がいるのは梅子お祖母様だけ。3人とも巫女の修行はしているけれど、上の2人には管理人としての才はなかったみたい。
薔子さんは長女だったから両親に申し訳ないという気持ちがあったそう。でも、両親、特にお父様(寅吉曾お祖父様)が「お前たちが幸せなら僕たちも幸せなんだよ。好きなことを見つけて思いっきりやればいい。僕たちは全力で応援するよ。でも1つだけ約束。感謝の気持ちは忘れないで。」って(曾お祖父様、カーッコイイわ~。流石だわ~)。
曾お祖父様のスゴいところは娘たちを支援するために会社まで作ってしまったとこよね。娘が女優になって世界で活躍したいと言い出すと、こっそり将来のためにと会社を作っていた。まあ、領民のためというのもあったみたいだけど・・・。
昔、我が家はこの辺り一帯を治める領主だったみたい。今でも我が家は、神社のある神楽山とそれに連なる山を管理してる。この神楽山の背後の山が、雷和神社の御神体になる。ただ、背後の山には一般の人は入れない。雷和神社の本殿の裏から登れる一本道があるけど、使用できるのは神代家の者だけ。険しい山で道は整備されていない。雷和神社の反対側は海に面した断崖絶壁になっていて登れない。それ以外の場所には樹海が広がっている。樹海の方から、勝手に山に入ろうとすると樹海の中でグルグル迷って結局入ったところに戻ったりケガしたりするんだよね~。死なないだけマシ?あっ、話がズレた?まぁ、御神体の山には勝手に入れないってことを言いたかったの(えへっ)。
それで、曾お祖父様がどんなことをしたかっていうと・・・・・・。
御神体の山の背後にある海には、無人島がある。雷和神社、御神体の山、無人島は同一直線上に並んでいるそうなんだけど、この無人島、火山なんだよね。しかも活火山で今も時々噴火してる(毎年じゃないよ!数十年単位ね)。けど、周囲への被害はほぼない。なんか、大昔、海の中から盛り上がってきて、噴火を繰り返して今の島になったみたい。この島、ここら辺に住んでいる人たちは昔から龍神がいる島って思っていて、「龍之島」って呼ばれてる。で、玄爺(黒龍)はココに住んでんの。神代家の者しか知らないけど。噴火の被害がほぼないのは、玄爺のお陰だよ~。上手く調節してくれてるみたい。
不思議なことに、御神体の山と龍之島の間は海なんだけど熱湯になってる。それもあって、海側から御神体の山には登れないようになっている。火傷するくらい熱いんだよね~。危ない!危ないっ!!
海沿いなんだけど、ここ(神楽山。正面に龍之島。)から右手は温泉街として栄えている。海沿いに温泉宿やホテルが建ち並んでいる。温泉の効能もいい!お肌もツヤツヤになるし、冷え症も改善される。体の内側からしっかり温められる。湯治場もある。愛用者には「病気知らずの湯」とも言われてる。
旅館やホテルの温泉は、それぞれお風呂の作り方が違うし、建っている場所によって効能も違っていたりするから楽しい。ああ、外湯めぐりもできるから試してみてね~。
この辺りに来たら、ぜひとも温泉に入るのをオススメするよ!
ちなみにわが家のお風呂も温泉よ。
そして~、温泉街の後方は神楽山に連なる山がある。樹海があるから直接神楽山には入れないけどね。で、この後方にある山、登山(頂上はめっちゃ景色がいい!)もできるけど、散歩道はあるわ、フィールドアスレチックはあるわ、キャンプ場もあるレジャーランドになってま~す。温泉以外でも楽しめるの~。
それと~、もう一方の左手側は、漁場と海水浴場になってるの~。
地元の漁師さんは、どの地点から先が熱湯になっていて危ないかは分かっているからねぇ。ここの海はとーってもいい漁場なの。美味しい魚がたっくさん捕れる。大漁旗もよく見られるよ。海に大漁旗を揚げた船がたっくさんの風景は一見の価値はあると思うし。
右手側は海の一部が(モチロン陸地側)温泉になっているところがあって景色のいい露天風呂になっている。でも左手側にはないんだよね~。 左手側の漁場と海水浴場はしっかりキッチリ分けられていて、漁場のさらに左側が海水浴場になっている。境目辺りには堤防があって、そこは釣り人に人気の場所みたい。
海水浴場の方には、サーフィンするのにいい波が来るみたいで一年中サーファーがいる。
そして~、こっち側の後方にも神楽山に連なる山がある。こっちの山は畜産に力を入れている場所なの。
つまり、左手側は美味しい魚や肉が捕れるのよ~(あっ、考えただけで・・・ぐーっっっ。ありゃっお腹がっ!?えへっ健康な証拠よっ)。
山では日当たりや地質も考えて果樹栽培も行われている。当然、林業にも力を入れている。
あっ、そうそう食品加工も行っているから肉・魚・果物、どれも無駄なく活用するようにしている。
だから、缶詰工場や冷凍食品を作る工場だけでなく、地元の食材を美味しくいただけるレストランなんかもあるよ~。
海水浴場に来て温泉街に宿泊する場合は、海沿いの道なんかないから(御神体の山があるからねぇ)、2つある方法のどちらかを選択することになる。
1つ目は、海を船(車も積めるものもあり)で行く方法。
龍之島を海側に大きく迂回して行くんだけど、周辺に小島もあるから景色はいいし(地平線に夕日が沈む頃なんかめっちゃキレイよ~)、船の中で景色を見ながらコース料理を食べるってこともできる(夜景もキレイ)。
2つ目は、陸地を車(自家用車やバスなどね)で行く方法。
こっちは神楽山の麓の町を通っていくルートと雷和神社の前(駐車場の所)の道を通っていく山道ルートね。一応、町側に麓の町から神楽山に行く道路だけでなく、神楽山と左右の山に行ける道路もあるよ。
ただし、御神体の山には繋がってない。無理に行くと樹海に出るからね。
説明が長くなったわ~~。
でも、ついつい長くなるのよね~。
んーと、温泉街やレジャーランド(観光産業?)、畜産業、漁業、農業(山での果樹だけでなく麓の町でもやってるの)、林業、外食産業などなど(あっ、伝統産業もよ)、・・・結構多かったわ~。
曾お祖父様は、どうせ娘たちのために会社を作るなら、地元の人(元の領民)たちが外に出て行かなくても働ける場所を作ろうと考えたみたい。その結果、自給自足できるようにまでなってるけど。
まあ、曾お祖父様が現在の形の大本を作り、梅子お祖母様が資金を投入して個別のものだった産業をまとめ、お父様たちと総合商社まで成長させた。
ああ、でも独占ではなく、個人でもできるようにはなってるよ。
曾お祖父様がやったことの土台にあるのは、娘に対する大きな愛情だった・・・と。ねぇ、すごいでしょ~。どうよ!(フンスッ)
「おい、桃香。急に黙ってどうしたんだ?
ドヤ顔で、誰に何を自慢してるんだ?」
「えっ?
やだなぁー、桐葉にはわかるでしょー。
皆さんに桃香の家族愛と地元愛の自慢だよっ。」
「だから『皆さん』って誰のことだ?」
「ふー・・・(困ったもんだ)」
今は桐葉と念話はしていないけど、桐葉のことだから私の考えていることくらいはわかるはず。頭の中で考えていることをスラスラと話せるならいいんだけど、まだそこまでは無理だからしょうがない。
だって私はまだ6歳なんだもん!
「『ふー・・・』って何だ?『ふー・・・』って。
はぁ~、吾の方こそため息が出るぞ。
劇の練習が終わったら、舞の練習をするんだろう。
移動するぞ。」
「はーーい。」
どうせ桃香のことだから「薔子さん」と話して寅殿のことでも思い出したんだろう。
薔子さんは重度のファザコンだからな。
まあ3姉妹ともだが、やはり一番は薔子さんだ。
桃香は彼女に会うたびに、寅殿の話を色々聞かされているからな。
桃香も柊も楽しそうに聞いている。
特に、寅殿との思い出が少ない桃香にとっては知らない話が多いだろうしな。
寅殿が亡くなったのは、柊が7歳、桃香が3歳の年、2人の導き手が決まった後すぐだった。まるでそれを見届けて満足したかのようであったな。
導き手が決まった柊と桃香に「よかったなぁ。これで少しは安心だよ。」と言いながら2人の頭を撫でていた。
その数日後だった。
朝から具合が悪いと起きてこなかった。医者はいいからと部屋で休んでいたな。
昼過ぎに吾と蓮が呼ばれた。その時の寅殿は、縁側で椅子に座り庭を眺めていた。ああ、具合がよくなったんだなと吾らは思ったが、部屋にいた菊様に「話は短く!」と小声で言われた。
寅殿は吾らを近くに呼ぶと「柊と桃香のことを頼んだよ。」と。吾らが「はい。」と頷くと「うん。大丈夫だとは思うけれど、直接頼んでおきたかったんたんだよ。安心したよ。」と。
それだけ言いたかったということだったので吾らは退室することにした。
その後、横になった寅殿は、寝る前に櫻様たちと少し話をして眠りにつき、目覚めることはなかった。傍には、櫻様、菊様、寅殿の導き手である琥珀殿がついていたが本当に眠るような最期だったそうだ。
稽古場への移動中に、吾は気になっていたことを桃香に聞くことにした。
「なぁ、桃香。
劇では主役の候補にもなってたんだろ?
なのに、なぜ継母役を希望したんだ?」
「えっ、それ聞く~?
決まってるじゃな~い。
役であっても、色々勝手なこと言われたりさせられたりするのがイヤだからだよっ。
役だとわかっていても言い返したくなるの!
桃香の性格わかってるでしょ~桐葉。」
「はあ、やはりそのような理由か。
そんなことだろうと思ってはいたが・・・。」
予想していたとはいえ呆れた桐葉であった。
その後、桃香のクラスの演し物は大成功で幕を閉じた。
よかった。がんばった甲斐があったよ。
その日、見学に来ていた薔子さんは、地元の知り合いに次から次に声をかけられ面倒になったのか、彼らを引き連れて温泉宿を貸し切り、久し振りの親交を大いに楽しんだそうだ(これも「故郷に錦を飾る」ってことなのかなぁ?)。
ん?桃香たち?
桃香と柊兄は普段通り家に帰ってご飯食べたよ。ざ~んねんっ!
まあ、いつもより私たちの好きなメニューが多かったけどね。
「そういえば・・・
桃香、柊のクラスの出し物はどうだったんだ?」
桐葉は、ふと気になったことを聞いてみた。
「んー?
兄様のクラスの出し物? ・・・ 何だっけ?」
「えーーっ、ヒドいよ桃香ぁ~。 僕のクラスは迷路だったよ。」
「あーー ・・・ そうだった、そうだった。
まあまあオモシロかったよ。」
「うっ・・・まぁいいけどね。
僕もアイデアは出したけど、直接関わってはなかったからね~。
来年リベンジするよ。」
「ふーーん。ガンバってね。」
気のない返事をする桃香であった。
そういやぁ兄様は児童会の副会長をやってたなあ。
動きがイマイチの会長を助けて走り回ってたもんねぇ。文化祭の運営の方で忙しかったから自分のクラスまでは無理よねぇ。オ・ツ・カ・レ。
まあ、今のままだと来年は会長だろうから、来年も自分のクラスのリベンジは無理じゃないの~ぉ、と思う桃香である。
そして、柊を気の毒そうに見る桐葉と蓮・・・。
神代家の日常(?)の風景であった。
第2章を投稿します。
しばらくは毎日投稿する予定です。




