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第37次大戦決戦、『魔槍』vs『魔腕』

-----風量、地形共にかなり良好。

他の戦場と比べればかなり平坦な地形と風の影響が殆ど無いという事が意味するのは、彼の能力にとってこの場所は独壇場とも言えるフィールドだという事だ。

今回の戦争領域(バトルフィールド)がかなりこちらに有利なのもあるが、それを加味しても今回の戦争で十分『魔王化』を目指せるレベルだろうと彼は思考を巡らせる。


蛇を思わせる細長いなだらかな黒色の身体と二枚で一対の小さい翼。手や足にあたる器官が存在せず、頭には二本の角が生えた仮面を被っている。


魔王化を夢見る者なら誰もが知るその一人の名を、

『魔槍』フォロといった。


<発見しました、座標を送ります>


フォロの生成した索敵用三級眷属が敵を発見した事が分かるや否や、「宜しい」と待ち望んでいたとばかりに返し、風の抵抗を受けにくい身体を最大限に活用して普遍的な魔族から逸脱した速度で敵陣へ向かう。


彼の能力は『魔槍捻出』

魔術により魔槍を構築した後に自らの身体を何度も円を描くように捻り、自らの身体で表現した加速術式を用いて魔槍をレールガンのように相手に撃ち出す、遠距離戦では敵無しの能力である。


この技で何人もの才能ある若人を打ち砕いてきたフォロは、この能力に絶大なる信頼を置いてきた。

しかし、フォロはこれまでに魔王大戦において優勝した事がなく、初参加の第4次から現在の第37次に至るまで、なんだかんだで敗退を繰り返していた。


敗北した時の理由は多彩に渡った。天から与えられたという他ない才能の持ち主、正確無比なる魔力操作の狂人、絡め手を用いて勝利を掴む執着、何千と張り巡らされた策略、『魔剣』『魔弾』『魔泥』『魔障』...思い出すとキリがない。


こんな事を戦闘前に考えるものではないな、と自戒し過去の敗北の記憶を頭から振り切ったあたりで敵陣が見える位置に到達した。

今回の一番の難敵になるだろう『魔腕』が前方に居る。


現時点で残っている魔王候補は此奴だけだ。

奴は大型の二級眷属を自らの前衛に二体ほど配置、尚且つ後陣には飛翔型三級眷属を多数配置していた。


(定石の隊列ではあるが、それ故に崩し手も何通りか確立されている。それが分からない奴では無いだろう)


最初は数十人居た魔王候補も現在は奴と儂の二人のみ。自らの今回の戦歴を思うと、奴の方が多く候補者を倒しているのだろう。他の参加者も決して弱者という訳では無かったのに奴が生き残っているのは、ひとえに天才的な戦闘のセンスがあるのが原因だろうな。


---『魔腕』ガンデンは最近名をよく聞くようになった戦士で、少し前に勃発した何度目かの魔樹戦争で百人隊長の首を取った事で名声を上げ、この魔王大戦の参加資格を得たと聞く。その黒い巨体に突然変異の六本腕、軽微なダメージを持ち前のタフネスで無視して距離を詰め、連打で打ちのめす。というのがガンデンの基本的なバトルスタイルだと聞いた事がある。単純ながら樹族の大隊長クラスを討ち取れる実力は馬鹿に出来ないだろう。


「よぉ、爺さん」

ガンデンが口を開く。既に此方の位置は筒抜けであったか。

「会うのは初めてだな...魔腕の」

気さくに話し掛けられた事に少し動揺しつつ返す。

「...俺、昔アンタのファンでさ、中継で見てて憧れたよ。何回も負けるけど、それでも諦めない所がさ、憧れだったよ」


敵を目前にして、少し気が緩む。しかし、


「気持ちは嬉しいが、今回こそ勝たねばならんのだよ」


何度目の挑戦になるかは自分でも明確には分からない。だが、彼は毎回の大戦に全霊を掛ける。それが相手への礼儀であり、夢を諦められない老獪の野望の表れであった。


「ま、やりますか」


魔腕が戦闘態勢に入る。複雑に見えるその六本腕の構えは受け流しに特化した型で、フォロを相手と見据えた上での判断だろう。

(迅速な判断だな、骨が折れそうだ)

要請:魔槍生成(Speerladen) 記述(schreiben):四連(Viermal)加速陣(Viermal)

フォロも詠唱を始め、魔槍が生成されようとしていた。

ガンデンが迅速に距離を詰め、戦いの火蓋が開かれ----





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