終わりから始めて
引き際はわきまえているつもりだった。独りよがりなら一人でいい。二人もいらない。そんな当たり前のことを、あの子に言わせてしまった。そしてはらりと、紐が風に吹かれ飛んでいくかのように、彼女の細腕は私の腕を離れていった。もう取り戻せやしない「好き」だったあなた。私は太陽を失ってしまった。心は冷えていくばかりだ。
リー、リー。
陽も落ちてきて蝉の代わりに鈴虫がなき出す。季節も徐々に冷えていくばかり。独りさびれた椅子に座り海を眺めている。口の中にしょっぱい味が広がる。陽が沈むまで終わることはない。だからこそ私は地平線の彼方を暗がりに飲み込まれるまで、目を離さないでおこうと思う。それで終わり…そう、この物語は終わらせよう。それで全てなかったことになるから。