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囚人が好きな人向け

囚人アベルとテェレーヌ

作者: リィズ・ブランディシュカ




 囚人アベル。


 その男は、大罪を犯して牢屋に入れられた人物だ。


 しかし、アベルはただの濡れ衣だった。


 罪を犯してもいないのに、間違いで投獄された人物だった。


 そんなアベルの支えは、いつも牢獄になってくる女性テェレーヌだった。


 罪、暴力、地獄。


 そんなものであふれたその場所に、彼女は似つかわしくない女性だ。


 囚人たちからからかいの言葉や失礼の言葉を投げかけられることがある。


 しかし彼女は、牢獄へ通うのをやめない。


 濡れ衣をおった者達の元へ通うのをやめない。


 アベルはそんな彼女に惹かれていた。


 だから刑期が終わった後は、彼女に会いに行こうと思っていたのだ。





 そしてそれから何年も経った。


 アベルは出所することになる。


 ある時を境にテェレーヌはぱったりと牢獄にこなくなった。


 だから、彼女を探し出して再会することが彼の第二の人生の目的だった。


 しかしどれだけ探しても、そんな女は見つからなかった。


 まるで最初から存在しなかったかのように。


 人々はアベルに言う。


 きっとストレスで幻を見たのだろうと。


 アベルはそんなことはないと否定したが、同じ牢獄に入っていた者達も誰一人テェレーヌを見つけることはできなかったことから、真実は知れていた。


 アベルは彼女を探すのをやめる。


 アベルは絶望し、生きていくための力をなくしてしまった。


 おかしくなったというのなら、それで幻を見ていたというのなら、どうして最後まで見せてくれなかったのだと。


 彼はずっと、そう嘆きながら、生き続けた。


 胸の中央に空いた穴は、彼女の存在に支えられていた分だけ、酷く傷んだ。



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