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 ある日突然、エリカ王妃殿下の訃報と第一王女アンジェラ発見のニュースが流れた。


 第一王女アンジェラは前王妃であったコーデリアの唯一の娘でありコーデリアが亡くなった馬車の事故では死体が見つからずに行方不明になっていた少女だ。


 彼女はとても聡明でコーデリアのひくエルフの血を強く引継ぎ、この国を長い安寧へと導くだろうと言われていた王女だけに、行方不明のニュースが流れた時には国全体がどんよりとしたらしいという話は伝え聞いている。


 王宮には肖像画も飾ってあったが、なにせまだ幼い少女の姿だったのでこんな若さで死んでしまうなんて不憫だと思っていた。


 貴族たちも同じように思っていただろうと思う。


 あの幼さで行方不明になったらまず助からない。当たり前のようにすでにこの世にはいないものだという認識だった。


 しかしそんな王女が帰ってきた。そのニュースは国が沸き立つほど素晴らしい事だが、エリカの訃報とセットになっているこの状況に、誰もが困惑していた。


 ヴィクトアは交流会に加えて、そちらの王族がらみの葬式や儀式への参列や出資についての仕事が増えて酷く忙しそうであったし、フォルクハルト様も、親族にあたるアンジェラの帰還について様々手続きがあるようだった。


 しかし、彼らは忙しくしているというだけで、驚いたり困っている様子ではなかった。


 もしかするとすでに裏で何か情報が明かされていたりしたのかもしれないが。それは私にはわからない事だった。


 そんな中でも一番気になっているのは、やっぱり一番身近にいた人間であるカイの事である。


 ……あの人、エリカ王妃殿下にべったりだったから……。


 母親に子供が懐くのは当たり前の事だと思うけれど、彼らはそれ以上に深くかかわりを持っていた。


 エリカ王妃殿下は常にカイに何かしら干渉をしていたし、それをカイも受け入れていて、他人が入れる隙間は一切ない二人だけの世界が彼らにはあった。


 だからこそ、そんな母を失ってカイは何を思うだろう。エリカ王妃殿下の死の詳細な情報についてはいまだ明かされていない、しかし、タイミングよく戻ってきたアンジェラという王女が無関係とは思えなかった。


 そしてそんな彼女とカイ、ノルベルト国王陛下、三人がいる王宮はどんな事態になっているのか想像もつかないが、きっと混乱状態であることは確かだろう。


 しかし、今の私は完全に他人だ。


 何かをできるわけではない。心配ではないと言ったら嘘になるがそれでも、私は今いるこの場所を守るためにも自分の問題を解決するために動くしかないのだった。





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