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3 白雪姫の目覚め 〜Side 晶(アキラ)1〜

本日3話目です。

 僕がこの研究所の管理者になったのは5年前、20歳からだ。5歳で両親を亡くしてからここで暮らしてきたから特に生活に変化があったわけではないが、はっきりと管理者として委託されたことで他の煩わしさからは多少解放された。

 ここに住んでいたのは両親が亡くなるまでここで研究をしていたから。そして身寄りがなくなった僕に住む場所を提供し、教育を受けさせ、研究者として育ててくれたのはこの施設「YUKI」を作った白井正雪氏の子孫の一人で、両親の研究を支援してくれていた白井一族のコウ氏だ。当時管理者はコウ氏の孫のシュウ氏になっていたが、大きな権限を持っていたままだったコウ氏は僕にしっかり勉強するならここにいて良いと言ってくれた。親をなくして一人ぼっちになった僕はその提案を受け入れた。もちろん親がいない子どもも、当然暮らす場所はあるし教育も受けられる。ある程度の年齢になればマッチングで保護者を選び選ばれることで自分の適正に合った場所に移動することもできる。でも僕はここで生きていきたいと思った。ここで、なくなった両親と同じ研究者になりたいと願った。だから自分の居場所を作るために、死にものぐるいで勉強した。父親は天才と言われた人だったけれど、僕は努力で研究者になった。父の研究していた病気の治療方法をもう一度見直して、研究を重ねて、なんとか確立させた。彼女『雪』の病気だ。


 昔、白井の一族は正雪氏が小さな特許をものすごい数とって、その収入を元手に資産を増やし、財団を設立し、最終的にはこの施設を作るまでになった。天才ではなかったのだろうが、商才と情熱があった人物なのだろう。ここは正雪氏の願いである『研究者育成』の牙城であり、優れた人材を輩出してきたが、元々は彼女『雪』の病気の治療法を研究すべく建てられたのが始まりだと記録されている。多くの人物を育ててきたこの研究所だが、肝心の彼女の治療法は随分と長い年月がかかってしまったものだ。


 数ヶ月前から準備をして、ようやく彼女の覚醒が叶ったのが昨日のこと。目を開けた彼女のあどけない顔に、驚きと安堵の気持ちが混ざりあった。今では殆ど見ることのない黄みがかった白い肌に真っ直ぐな黒髪、黒目がちの瞳、丸い小さな顔…緊張を悟られないように落ち着いたフリをしながら簡単に事情を説明したが、1度目はまだはっきりと覚醒していないのか、ぼんやりと反応する彼女の様子にパニックを起こさなくて良かったと思った。しかし、2度目は頻脈と呼吸の増加が見られたので慌てた。記録によれば彼女はこう見えて20歳だし、成人なのだから大丈夫かと思ったが、寝て起きたら150年後で家族も知り合いも誰もいないとわかればあの反応も理解できなくはない。いや、自分が両親を事故で失った時のことを思えば…相当理性的だと言える。昔の記録をもとに祖先の話をして落ち着いてもらったのだが、彼女の記憶と相違なかったようで良かった。その後も僕が病室を出ようとしたら不安のためかモニタで異常が見られたので、一人にするのは心配で、そのまま病室に残って眠るまで観察した。

 ようやく眠った彼女を見て、ぼんやりと、『長い間眠って目覚めるっていうのは植物に…いや、何か道具に刺された姫だったか。でもここに眠っていた彼女は名前からいっても『白雪姫』か』…と思ったが、いつまでも寝顔を見ているわけにもいかないので、目が覚めそうになったら僕にアラートが送られるようにモニタをセットして静かに部屋を出た。

同時に投稿でも大丈夫でしょうか?

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