表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/17

ライバルがやってきた②

 おじさん品評会では、三つの項目が審査される。


 まずは見た目。頭部の禿げ具合や、腹の方など、よりおじさんらしさが高得点になるらしいが、そう単純でもないらしい。


 次にパフォーマンス。おじさんだけで特技を披露する。


 最後にトレーナーと二人で、従順さや仲の良さを見せるのだ。


 今回は練習という事で、おじさん単身での特技披露だけ。


「と、言われましても……」


 宴会芸の一つもできない。


「そうね、アレクはこちらにきたばかりだもの。ごめんなさい、私が……」


 申し訳なさそうなお嬢様の顔に、どうにか頑張ってみようとは思う。


 ホワリンも一緒に考えてくれた。


「過去の品評会から、アレク様と同じタイプだと……、雑誌の袋とじ開けとか。何も使わないで、綺麗に開けて、審査員の度肝を抜いていました」


「雑誌の袋とじを開けて、落胆するとかはできますが?」


 しかし、雑誌があって袋とじがあるのも驚きだ。


「うーん、せっかく覚えたスキルを使えないかしら」


「では、こういうのはどうでしょう、お嬢様」


 離れた場所からアンが声を張りあげてくる。


「まだですの。こちらはいつでも準備できていますわ」


 お嬢様が悩んでいる。


「いいわ、先にどうぞ」


 とは言ったが、


「これで、アレクが自信を失くさないと良いけど」


 と呟くのだ。


 マイウはそんなに凄い特技を持っているのか?


 喉が渇き、生唾を飲み込む。


 微風が枝葉を揺らし、緊張感が高まってきた。


 静まり返る中、マイウが前に出てくる。


 上着を脱ぐと、白のランニングシャツに黄土色のスラックスの姿になった。


「流石の貫禄ね」


 お嬢様が呟く。


「あれは!」


 ホワリンが驚愕に瞳を開いた。


 マイウがハンカチを取り出し、顔の汗を拭いていく。


「見て……、こんなに涼しいのに、もう汗だくだわ」


「ええ、お嬢様、これは高得点が狙えます」


 これ、ツッコミをしていいところ?


 ドヤ顔のアンだ。


「ふふ、それだけじゃないわ。マイウ、これを使いなさい」


 子爵令嬢が自分のおじさんに何かを投げた。


「あれは!?」


「おしぼりです、お嬢様。ま、まさか……」


 受け取ったマイウが、おしぼりを手に、顔を拭き、そして腋を拭くのだ。


「わ、腋まで……」


「あれが、地区代表の実力。あんな高難度の技まで」


「……」


 これ、戦慄くところ?


 ある意味、これは予想以上に恐ろしい品評会なのでは?


「ふふふ、この程度で驚かれても困りますわ。本当は、品評会まで秘密にしておきたかったのですが、特別に見せてあげましょう。マイウ、あれを」


 マイウが意識を集中している。


 それはまるで必殺技を放つ直前の表情だ。


「はぁあああ……」


 武道の呼吸法を見ているようで、気が練られているように見えた。


 瞳を瞑るマイウ。


 裏庭が静まり返り、


「燃えよ、俺の脂肪。メタボリックパワー全開! はあっ!」


 おじさんの瞳が開かれた。


 ポン。ズボンのボタンが一つ、飛んだ。


「…………はい?」


 カメハメ波でも撃ちそうな流れだったよね。


「凄い……。あれは、超難度のメタボアタック」


「あ、あれを使えるおじさんが、こんな近くにいたなんて」


 うん、まあ、初めてフィギュアスケートとか見たら、何が凄いのかきっと分らない。たぶん、そういう事だ。


 ガクッとマイウの膝が折れた。


「マイウ! ああ、無理をさせたわ。この技は危険な技。体に負担をかけてしまって……、今夜は全身、マッサージしてあげる。えっ、性感マッサージがいい? もう、マイウったら」


「腹、減った……」


「さあ、わたくしが肩を貸すわ。んおおお、重い」


「腹、減った……」


「ああん、倒れて。きゃっ、駄目よ、マイウ。そんな、わたくしの体に重なって、ほら、人が見てる」


「腹、減った……」


 どうやらマイウは性欲より食欲を満たしたいようですよ、アンお嬢様。


 いったい、俺は何を見せられたんだ?


「大丈夫、アレク。あんな凄いものを見せられたんだもの、意気消沈しても仕方がないわ。でも、きっと貴方なら、と私は思っている」


「お嬢様……」


 混乱しているんですけど。


 マイウの下からアンが這い出てきた。


「さ、さあ、今度はそちらの番ですわ。何を見せてくれるか、楽しみですわ。ふふ」


 不敵なアンの笑みに、レリリイは少しムッとしたが、


「ええ、見せてあげますとも」


 愛おじの手を強く握るのだ。


 そういえば、先程、レリリイとホワリンで何かを話し合っていたが、いったい自分に何をさせる気なのだろう。


 緊張していたのか、お嬢様が一つ深呼吸をする。


 その後、驚きの行動に出た。


「お、お嬢様!?」


 ブルマを脱ぎ始めたのだ。


 片手で股間を隠しながら、片手でブルマをずらし、腰を揺らしながら、それを下げていく。


 真っ白な生尻が眩しい。きめ細やかな素肌のお尻は、特に大きな訳ではなかったが、球状に肉付き、ぷるんと可愛らしく、それでいて淫靡に盛り上がっていた。


 お嬢様はしっかりと片手で股間を覆いながら、脱ぎたてのブルマを向けてくる。


「さあ、アレク。この匂いを覚えて」


 変態行為を命じられる。


 お嬢様の命令だしな。拒むわけにはいかないよね。


「すー、はー、くんか、くんか」


 ほんのりと脱ぎたての生々しい体温が感じられ、どことなく湿っていて、それから微かに甘酸っぱい。


「そ、そこまで。何だか恥ずかしいわね」


 それからレリリイは、脱ぎたてブルマをアンに渡した。


「わたくしにも嗅げと?」


「違います! それを何処かに隠してください」


「ああ、そういう事。分りました。お手並み拝見といきますわ」


 子爵令嬢が動きだすと、レリリイが戻ってくる。下半身丸出し。手で股間を隠した状態で。


 これ、何ていう着エロ?


「アレク、アンが隠した私のブルマを見付けてちょうだい。もし、見付けられなかったら、その時は、今日はずっとこの格好で過ごすわ」


 見付かりませんように。


「信じている。きっと、貴方は探しだしてくれるって」


「お嬢様……。ぐ……」


 不埒な俺を許して。


 暫くしてアンが戻ってきた。


「隠してきましたわ。範囲は、この裏庭の中。ふふ、果たして、昨日召喚されたばかりのおじさんに見付けられるのかしら」


 裏庭の中、とはいえ、かなり広い。


 それに地中に埋められていたら、匂いは届かないかもしれない。


「いきます」


「ええ、頑張って、アレク」


 瞳を瞑る。嗅覚に意識を集中させる為に。


 何処だ? お嬢様のブルマの匂い。いや、これはそこに染み付いた、お嬢様のマンマンの匂い。


 これは……見えた! 意外と近い。


 膝を地に着け、匂いの源へと顔を寄せていく。


 ここだ! ここに、間違いない。


「くんくん、すはぁ……」


「ちょ、アレク! やあん、そこは違うってば!」


 瞳を開く。


 お嬢様の手が見えた。股間を隠している手だ。


「……」


 立ちあがった。


 やっぱり、ちゃんと周りは見て確認しないと危険だよね。


 スキルを解放。嗅覚向上により、情報が格段に多く入り込んでくる。


 世界はこんなにも匂いと臭いで溢れていたのか。


「はっ、お昼は、スープパスタ」


「正解ですよ、アレク様。その調子で、お嬢様のブルマの匂いを探して」


 ホワリンも応援してくれている。


「お嬢様のあそこに匂い。あそこの匂い。あそこの……。これは!?」


 濃厚なチーズ臭があった。


 発生源へと顔を向ける。アンがいた。


「……」


「な、なんですの」


 リセット。目標はお嬢様のそれ。


「お嬢様は剃毛をなさっているから、もう少し薄め……。それに、同じ乳製品でもバターに近い。そう、バターを温めたような……」


「言わなくていいから!」


 真っ赤になっているレリリイがいた。


 もっと精度を上げなくては。


 焦るな。スキルはちゃんと機能している。


 アンがそれを手にしたところは見ている。予測もできるはず。


 最初に彼女がいた位置に、ほんの僅かだが、ブルマの匂いを感じ取った。


「こっちか……」


 歩きだす。


 レリリイとアン、ホワリンもついてくる。マイウはもう立つのも面倒な様子だ。


 ゆっくりと、だが、確実に近付いているのが確信できた。


 木製のアスレチック具を越えて、奥へ。


 そんなに長い時間をかけていないはず。感覚的にも近い。


 だが、ここで迷った。


 足が止まってしまった。


「む……」


「どうしたの、アレク? 見付かったの?」


「いえ、これは……」


 もっと強い臭いがこの辺りには充満して、他の匂いを消してしまっていた。


 これは――おしっこか!


 犬? 猫? いや、これは、ついさっき放尿されたものだ。そして――。


「アンお嬢様、ここで用を足しましたよね」


「な、な、何を言って……」


 じとっと他の皆で見詰める。


「うう、我慢できなくて。ここなら、見付からないかな、と、つい」


「し、信じられない。人の家、侯爵家に来て、庭で放尿するなんて」


 これはレリリイは怒っていい。


「けど、これではブルマ探しは無理です。女のおしっこの臭いは、おじさんを惑わせます」


 流石はブリーダー免許を持っているホワリン。よく分かっている。


 実はちょっと興奮していた。


「ん……、ここまでにしましょ。アレク、ここまで辿り着いただけでも立派だわ」


「いいえ、お嬢様。まだです」


「え……」


 ホワリンがレリリイの肩を叩いた。


「どうやら、アレク様はまだ諦めていないようです」


「アレク、貴方……」


 この近くに、必ずお嬢様の使用済みブルマがあるはずだ。


 必ず見付けてみせる。


 スキルだけに頼っては駄目だ。感じるんだ、男の本能で。


「お、お嬢様、あれを!」


「アレクのもっこりが震えている!?」


 周囲に全神経を集中し、微かに肉棒がピクッと跳ねた。


「こっちか……」


 まだだ。


 もっと……、もっと深く、意識を強め、お嬢様を求める欲求を繋げば――。


 ――アレクの所有するスキル「嗅覚向上」が変質します。「嗅覚向上レベル一」は「妄執の追跡者」に変わります。


 言葉からして、ストーカー的なスキルにしか聞こえない。


 が、その時、見えた。


「これは!? 匂いが、色になって見える」


 桃色と黄色を混ぜたような淡い色を見付け、それを手繰り寄せるように寄っていった。


「ここだ……」


 枯葉をどける。その下に、恋してやまない脳紺色が見付かった。


 埃を払い、お嬢様に手渡した。


「間違いない……。私のブルマだわ。ああ、アレク」


 レリリイに抱き付かれ、いつもと逆にこちらが彼女の頭を撫でた。


 けど、お嬢様、その前に穿いてくれませんか。今、下半身丸出しですよ。


 抱き付かれているので、肝心の部分が見えないけど。


「まさか、この状況で見付けるなんて」


 どうやら地区代表のトレーナーを驚かせる事ができたようだ。


 ――――


 レベルも三に上がっていた。


「ホント、変わったスキルね」


 昼食後、子爵令嬢を半分追い出す形でご退場を願い、午後のトレーニング前の時間だ。


 先程起きたスキル変化の事実をレリリイに伝えたところ、鑑定で見てくれている。


「スキルって、変化するものなんですね」


「うーん、あり得ない事はないんだけど、例えば、嗅覚向上ならレベルが徐々に上がって、超嗅覚とかになる事はあるわ。けど、こんなスキルは初めて」


「そうなんです?」


「ユニークスキルってやつかしら? ちょっと実験をしてみましょう」


「実験ですか?」


「うん。嗅覚向上の時から、考えてはいたんだけど、ちょっとメイドたちに協力してもらうわ」


「はあ?」


 裏庭のトレーニング場に、三人のメイドが集まった。


 せっかくなので、ここで彼女らを紹介する。


 まずはメイド長。


 長い金髪を後ろで結わえ、眼鏡をかけているので、第一印象は生真面目なベテラン。しかし、ご存じのように露出狂であるらしく、パンストの下に下着はなく、見せる事に躊躇いはない。ギャップが素敵な三十路だ。


 彼女はレリリイお嬢様の担当でもあって、アレクも顔を合わせる事が多くなるだろう。


 その度に、初日の透ける恥毛を思い出すんだろうな。


 続いて、メイドA子。


 短めのツインテールにして、愛嬌のある顔立ち。そばかすもポイントだ。


 年齢はレリリイより一つ上で、同年代という事で、比較的に仲が良いらしい。新しい化粧品などの情報は共有しているとか。少し背は低めで、胸の膨らみは平均的だ。


 アレクの肉棒を見て、ニヤニヤしていた事から、興味津々なのかもしれない。


 それからB子。


 緑色の髪って、まさに異世界だね。それをショートカットにしてボーイッシュな印象もあるが顔は可愛らしい。


 二十歳でメイド服の胸元が垂直なので、おそらくお嬢様よりも小さい。


 男の娘かと疑いたくもなるが、間違いなく女子。


 アレクの肉棒を見た反応は、顔を赤くしていた。


 A子とB子は、レリリイやローロンの担当、メイド長とホワリンが休みの時に代わりを行う。それ以外の時は、侯爵や夫人の身の周りの世話をしている。


「はい、ここに誰の使用済みパンツがあります。アレク、これを嗅いで、これが誰のか当ててみて」


「メイド長のではないのは分ります」


「凄いわ、見ただけで」


 いえ、彼女、普段から穿いていませんよね。


 お嬢様の持っている黒いレースのそれを嗅いでいく。しかし、これシースルー。こんなセクシーなのをどちらが穿いていたのか。


 途端に、匂いが色となって見えた。


 それからメイドらに向き直って、くん、と鼻を鳴らすと微かに流れてくる匂いがあって、それが確かな色となって見えるのだ。


 後は同じ方を選ぶだけ。


「B子さん」


 ボーイッシュな雰囲気なのに、意外と大胆なのね。


 顔を赤くしながら、彼女が頷く。


「正解だわ。でも、今のは二分の一だものね。アレクは私の匂いは覚えている?」


「はい」


「なら、何処に隠れても直ぐに分かるわね。それじゃあ、メイド長とA子の匂いを嗅いで、かくれんぼをしましょ」


 立っている二人に顔を近付け、メイド服や首筋などの匂いを嗅がせてもらった。


 結果から言おう。


 スキルが発動しなかった。


「どういう事かしら? もう一度、スキルの詳細を見てみるわ」


 自分でも確認してみる。


 妄執の追跡者――女性の体の最も濃い匂いを記憶し、その僅かな痕跡も感知できる。色として認識できて、追跡が可能となる。


「……ま、まあ、確かに、お股の匂いは強いかもしれないけど。そ、そんなに臭くなかったでしょ?」


「臭くないと言うか、エロいと言うか……」


「そ、それならいいでしょう。そうね、他に濃い匂いなら、腋の下とか?」


 メイド長とA子を見ると、二人はスカートを捲り上げた。


 そんなに腋の下を嗅がれるのが嫌? 股間よりも?


「失礼します」


 まずはA子の前で、膝をつく。


 ガーターベルトがセクシーで、白いショーツのクロッチが微かに食い込み気味になっていた。


 顔を近付けると、そこは一段体温が高く感じて、蒸れが鼻先を湿らせてくる。


「やぁん……。ど、どう、アレク、興奮する?」


 彼女は比較的にエッチな事への理解が高いのか、嗅がれる事にも興奮しているよう思えた。


 嗅ぎ終える。


 問題は次だ。


「さあ、どうぞ」


 メイド長のストッキングに包まれた足を見る。大人びた官能的な脚線とむっちり感。


 膝をついたままで、そこから顔を上げる。


 パンストの中にはモズクがあった。そこから僅かに肉裂が覗けて、濃く香ってくる。


「あっ、アレクの鼻息が当たって。荒々しい鼻息が当たってぇ!」


 この世界にAVは無いが、自分的には必要性を感じない。


 検証の結果がどうなったか?


 直ぐに見付けましたよ。


 けど、そんなことはどうでもいい。


 モズクが脳裏から離れない。


 そして、オカズだけは豊富にあっても、お嬢様の目がある限り、肉棒を弄る事はできないのだった。

読んでいただいた皆様、ありがとうございます。

明日も更新する予定です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ