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全国へ①

久しぶりの更新です。

 全国に向けての最後の関門。地方大会には、八人の精鋭が集まっている。


 ジュピタル侯爵の領地がこの辺りでは最も栄えているとあって、レリリイやリーシャからすれば、地方大会も会場は同じだ。


「皆、強力なライバルだけど、自分たちの力を発揮するだけね」


 控室の一角で、リーシャは資料を捲る。


 クマキチ号。野獣おじさん。巨躯。

 レベル=四十。

 加齢臭=四百十三。渋み=三十三。精力=三百六十二。キモさ=二百三。毛根耐性=七百六十四。スケベ=百十二。

 HP=七百七十五。MP=六十。

 忠誠状況=主人。

 主人との相性=八十八パーセント。

 愛され値=六百十五。


 トーマス号。変顔おじさん。中肉中背。

 レベル=三十七。

 加齢臭=五百。渋み=四十七。精力=百六十二。キモさ=七百三十六。毛根耐性=二十七。スケベ=二百六十七。

 HP=二百三十二。MP=六百三十八。

 忠誠状況=ただ可愛い。

 主人との相性=六十七セント。

 愛され値=四百三十七。


 テツジ号。仮面おじさん。中肉中背。

 レベル三十二。

 加齢臭=二百四十六。渋み=五百三十七。精力=百七十二。キモさ=百二十二。毛根耐性=零。スケベ=七百四。

 HP=五百五十二。MP=三百六十八。

 忠誠状況=妹扱い。

 主人との相性=六十九パーセント。

 愛され値=五百四。


 ルンルン号。乙女おじさん。メタボ。

 レベル=四十。

 加齢臭=六百四十六。渋み=七十七。精力=二百二。キモさ=八百八十九。毛根耐性=二百三十一。スケベ=三百三十七。

 HP=三百六十六。MP=二百八十一。

 忠誠状況=親友。

 主人との相性=七十六パーセント。

 愛され値=四百三。


 ブラッド号。クイズおじさん。小太り。

 レベル=二十二。

 加齢臭=二百十八。渋み=五百十一。精力=九十七。キモさ=九十一。毛根耐性=百十三。スケベ=三百四十四。

 HP=百三。MP=六百二。

 忠誠状況=可愛い後輩。

 主人との相性=七十一パーセント。

 愛され値=三百十二。


「ふう……、やっぱり、地区大会より、全体的にパラメーターが高いわ。どう影響するか、未だに謎だけど」


 レリリイとアレクはまだやってきていない。


 ジュピタル侯爵家の使いから聞いた話では、修行の合宿所から直接会場入りするらしい。


 いったい、どんな修行をしていたのか、気になる。


「ねえ、ケン、私たちだって、強くなっているものね」


 ケン号。ガテン系おじさん。長身、逞しい肉体。

 レベル=二十三。

 加齢臭=六十三。渋み=九百三。精力=三百五十二。キモさ=三十二。毛根耐性=二百三十三。スケベ=百七。

 HP=四百三十一。MP=百八十七。

 忠誠状況=家族。

 主人との相性=九十四パーセント。

 愛され値=六百十七。


 そのケンが、呆然と前を見て、表情を強張らせている。


 紫の体のラインがよく分かるイブニングドレスを身に着けた令嬢がいた。


 ――確か、シャイレーン伯爵家のユリマナ嬢。


 赤みのかかった少し癖のある金髪を膝下まで長く伸ばしている。かなり気の強そうな顔立ちの美女だ。


「あら……」


 こちらに気付き、近付いてくる。


 リーシャは頭を下げたが、どうも無視されたようで、ユリマナの顔はケンに向けられていた。


「まさか、貴方が品評会に出てきて、しかも地区代表になるなんてね。貴方程度でも代表になれるなんて、かなりレベルの低い地区だったのかしら」


「ん……、お久しぶりです、お嬢様」


 ケンの緊張が伝わってくる。


 それに、馬鹿にされたままでは、黙っていられない。


「あの、私、ケンの主人のリーシャといいます」


 冷めた視線が向けられる。


「ふーん、貴方が。私が捨てたおじさんを拾って、品評会にまで出てくるなんて、卑しい平民の娘ね」


「ぐ……」


 きつく拳を握り締める。


 ――捨てた!? この人が、ケンを捨てた前の飼い主なの?


 ケンが間に入った。


「お嬢様、リーシャさんを馬鹿にするのは止めてください」


「へえ、この私に口答え?」


 ぶるっとケンの体が震えた。


「自分は、何を言われても構いません。ですが」


「あはは、よっぽど、この平民娘の体が良かったのかしら?」


 リーシャは真っ赤になる。


「し、していません、エッチな事なんて」


「そうよね、こいつ、自分から女の体に触れる事もできないし、何をやらせても不器用で、まったく物にならなかった」


「それで、ケンを捨てたって言うんですか? 酷い……」


「酷い? ふん。どうせ死ぬ運命だったおじさんを召喚して救ってあげたのよ。それだけで、感謝して欲しいわ」


「こっちの都合で召喚したおじさんに、最後まで責任を持つ、そういうものではないのですか?」


「あら、平民の分際で……」


 控室が騒然としている。


 周りの視線が集まって、そこはユリマナも気にしたようだ。


「まあ、いいわ。どうせ、うちのマーズが、地方代表に選ばれるのですから」


 ユリマナの背後から、一人のおじさんが近付いてくる。


「紹介するわ。徹底的に鍛え上げた、うちのマーズよ」


 マーズ号。ロボットおじさん。痩せ形。

 レベル=六十七。

 加齢臭=八百。渋み=八百。精力=八百。キモさ=八百。毛根耐性=八百。スケベ=八百。

 HP=八百。MP=八百。

 忠誠状況=絶対服従。

 主人との相性=十二パーセント。

 愛され値=二。


 まるで精気のない虚ろな瞳をしているおじさんだった。感情が見えない。


 ――けど、なんて、パラメーター。間違いなく強敵だわ。


 どんな特技を隠しているのか、それも不気味だった。


「完膚なきまでに叩きつぶしてあげる。他の皆さんも、お覚悟を」


 宣戦布告。


 おじさんを捨てた――その発言だけでも他の令嬢らはユリマナを睨んでいる。


 しかし、ユリマナは不遜なままで、誰をも見下した目で見ていた。


「大した自信ですね」


 その声に振り返ると、少しだけユリマナの表情がきつくなる。


 自分よりも爵位が上の令嬢が現われた。


 レリリイ・ジュピタル侯爵令嬢。そして、傍らには彼女のおじさん、アレクが控え、もう一人、女性がいた。


「な……っ!」


 驚いたのは、アレクの雰囲気と姿の変貌ぶりだ。


 全体に少し筋肉がついているのは修行の成果か。それよりもシャツが汚れ、ボロボロになっていて、股間のモッコリした膨らみがやけに目立つ。髪はボサボサで、しかし、瞳はギラギラと強烈な精力を感じさせた。


 アレク号。解放おじさん。中肉中背。

 レベル=八十一。

 加齢臭=二百十六。渋み=三百三十二。精力=千四百三十三。キモさ=二百七十二。毛根耐性=百六十三。スケベ=千七百三十六。

 HP=七百七十三。MP=四百六十九。

 忠誠状況=孕ませたい。

 主人との相性=百パーセント。

 愛され値=二千五十七。


「ブーッ!」


 吹きだした。


 ――い、いったい、どんな修行をしたら、こんな数値になるの!?


 アレクの視線がユリマナを捉えると、


「いや……」


 可愛らしい声で、真っ赤になり、自分の身を守る仕草をした。


「お久しぶりですね、ユリマナ嬢」


 そして自身の漲っているレリリイだ。


「え、ええ、お久しぶりです、レリリイ嬢。そちらが貴女様のおじさんで?」


「そうです。アレクといって、私たち、とっても愛し合ってます」


「いや、異常でしょ。しかし、どうやって、精力、スケベ、共に千オーバーだなんて」


「紹介します。サブトレーナーのゼアアダ・ローパス公爵令嬢様です」


 後ろにいた地味そうな――喪服のような黒いドレスを着ている長い黒髪の女性が、おどおどとペコリと頭を下げた。


 令嬢らがざわつく中、おじさんたちは、何故か興奮を高めている。


「ゼアアダ・ローパスって……、あの、伝説の!?」


「彼女の指導を取り入れ、ギリギリまで最終調整を行っていた為、ここに来るのは最後になってしまったようですが、色々な意味で、間に合ったようです。どうも、私の友人であるリーシャを虐めようとする冷酷な女がいたようで」


「く……、大した魔力も持たない癖に……」


「何か?」


「いえ……。どうもここは空気が悪いようなので、別の部屋で準備します。では――」


 ユリマナが控室を出ていくと、げんなりしたような顔をレリリイが見せた。


「誰のせいで、空気が悪くなったのやら」


 すると、ゼアアダが焦る。


「ご、ご、ごめん。私の臭いのせいで」


「違いますって、師匠。あ、でも、ここにいると、他のおじさんたちに迷惑が……」


「う、うん。外に行ってる」


 伝説のトレーナーも控室から出ていった。


「えっ、トーマス、急にエッチな気分に? もう、しょうがないわね」


 他のトレーナーとおじさんも次々に出ていった。


 残ったのは、リーシャとケン、そしてレリリイとアレクだけだ。


「レリリイお嬢様、先程は……」


「いいのよ、リーシャ。ここからはお互いにライバル。正々堂々と頑張りましょうね」


「はい!」


 ただ、ケンが心配だ。


 堪えてはいるが、リーシャには彼の心の震えが見えていた。


 ――――


 八人のおじさんが審査員に向かって並び、最初の競技、ルックスが始まる。


 今回も審査員は五人で、地区大会と同じなのは、モールスナット伯爵夫人だけだ。


 王女ミュウサリアも参加したかったようだが、王宮に呼び戻されている。


「ルックスは、大きな差は出ないと思っていましたが……」


 グラウンドの端からアレクを見詰めるレリリイ。


「そう。でも、その小さな差が、命運を左右する」


 コミュ障のゼアアダもレリリイにはもう慣れている。


 だからこそ、それぞれがおじさんの個性に合わせた服装を用意し、視覚的なアピールに余念がない。


 例えば、野獣おじさんのクマキチ号だが、上半身は裸で、逞しい体に体毛がびっしりと詰まっている。知性を感じさえないのも、見た目と一致すると、高い評価を受けそうだ。


 トーマス号は普通のスーツ姿だが、変顔おじさんとあって、常に面白い顔を作り続けている。その豊かなバリエーションで勝負だ。


 強烈なのは、テツジ号。目元を隠した仮面の姿で、真っ赤な軍服姿だ。


「あれは、大佐ね」


「知っているんですか、師匠?」


「赤い大佐は、おじさんのいた世界では有名。そのコスプレなのに、禿げ散らかった頭が破壊力抜群」


 ルンルン号に至っては、ピンクのフリルのドレス姿である。


「髭とのギャップが凄いですね」


「ただの女装ではない主張を感じるわ」


 ブラッド号は黒いマントを羽織っている。


「あの帽子はいったい?」


「クイズおじさんなら、答えが分かった時に上が開くはず」


 精彩を欠いて見えるのは、ケン号だ。


「何だか、元気がありませんね。やはり……」


「精神的にまいっている。自信のない顔は、マイナスに評価になるかも」


 個性的なおじさんらの中で、異彩を放つのはマーズ号だった。


 ごく当たり前の貴族の服装なのだが、殆んど瞬きがされなくて、じっと一点を見詰めている。醸し出される不気味さが、審査員を威圧していた。


「何だか、怖い」


「そう思われるのが狙い。けど、私は好きじゃない」


 ゼアアダに同意だ。


 自分の意思でそうなっているなら構わない。たが、マーズ号には心が感じられなかった。


 そして、アレクである。


 ブーメランパンツ一枚きり。そして、背中には「レリリイお嬢様、命」と書かれていた。


「きゃ……、やっぱりアレクが一番、カッコいい」


「その感性はどうかと思うけど、あのモッコリには、審査員の度肝を抜いたはず。とにかく、デカい」


「精力とスケベが千を超えると、あんなにチッポが大きくなるって、知りませんでした」


「そうでなくては、チン圧技の全てを覚えるなんて、できなかった」


 審査員から、アレクに質問が飛ぶ。


「アレク号、その股間は本物ですか?」


「勿論、本物です。脱いで見せましょうか?」


 その堂々たる佇まいに漲る自信。


「い、いえ、結構。その逸物に、飼い主であるレリリイ嬢はなんと?」


「アレク、凄い。こんなチッポ、壊れちゃう、と」


「ほ、ほほう」


 レリリイは自分の注がれる多くの視線を感じた。


「も、もう、アレクったら」


「恥ずかしい。けど、嫌じゃない?」


「へへ……、師匠が、もっと自分の正直な思いに素直になるように言ってくださって、覚悟が決まったのです」


 それが、アレクが我慢おじさんから解放おじさんに変化した要因だ。


 地方大会からは、競技ごとの点数は発表されない。


 だから審査員の反応を確認して、自分のおじさんがどの位置につけているかを予測しながら、次の一手を考える。


「本番はこれから」


「はい、師匠」


 強く突き刺さってくる視線があった。


 ユリマナだ。


 どうやら、彼女はレリリイのアレクが一番のライバルになると考えたようだ。


 次のパフォーマンスで、更に度肝を抜く。

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