2. こんな世界になったワケ
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西暦、2XXX年。
あるウイルスのパンデミックで、世界は大きく二つに分かれた。
生者と死者、それらが住まう世界へと。
死んだ人間が、ウイルスにより死者となって蘇る、そんな誰もが一度は見たようなありきたりなB級ホラー、それが突如として起こった。
本来なら、初めにそれが起こった時点で事態は決していたはずだ。
蘇った死人を殺し、生者のみ生かす、そういう方向で。
ただし、幸か不幸かそうはならなかった。いや、できなかった、が正しいか。
最初にパンデミックが起こったのが、米軍内部だったのが大きな理由だ。
それも不死者になった当人は米軍最高幹部の一人。
その実力と人柄からかなりの人間から慕われていた彼が不死者となったからさあ大変。
あっという間に軍を掌握した彼は、仲間とともに生者不干渉地帯を発足した。
折しも同じようにパンデミックが起こった日本でも、彼の指示により同様に在日米軍地帯を中心に、不干渉地帯を作り、不死者が守られることとなった。
こうして、通常なら一掃されていたはずの不死者たちは、はからずも死後も生きていくことになったのだが、当然、これまで通りとはいかなかった。
その大きな理由の一つが、不死者の持つ特性にあった。
悍ましいことだが、不死者は生者の肉に対し、非常に強い執着を見せるのだ。
つまり、放っておくと不死者が生者を襲う、まさにB級ホラーの幕開けとなってしまう。
それ以外の知識、感情面といったものについては、生前と全く変わらないのに、ひとたび生者の匂いを嗅ぎつけると、まるで獣のようになるのだ。
そのため、生者と不死者の住処は確実に隔てる必要があった。
初めは米軍基地の一部のみ開放されていたが、不死者が増えるにつれ、土地が足らなくなった。
そこで、不死者と政府が話し合いを重ね、数ある無人島の幾つかを不死者の島として開放させたのだ。
もちろん、賛否両論――というより、むしろ批判しかなかった。
なぜ、日本の土地を不死者に開放しなければならないのか、と。
だが、なら「生者と不死者が同じ場所で住まうことになるがいいか」と問えば、生者の誰しもが黙った。
自分たち生者を襲う不死者と、柵もなしに隣り合って住みたい人間など存在しないのである。
一掃することができれば、そうしたいというのが政府の本音であろうが、既に世界最強の軍部である米軍が不死者に掌握されているのである。そこからの要望ともなれば、いかに政府とて無視することはできない。議論を重ねがらも、不死者は生きる権利を獲得したのだ。ただし、定められた場所においてのみ、だが。
そうして、不死者の、第二の生が始まることとなった。
今からおおよそ、半世紀以上前のことである。
この後数本、更新予定です。
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