18. 輝ける少年
よろしくお願いします!
「先生っ!俺のピーが輝いちゃった!」
「帰れ」
今日も今日とて、カリノ診療所に悲痛な叫び声が響き渡る。
入ってきたのは若い男。自称永遠の17歳、風間龍太朗だ。
ほんの数日前に診たばかりの彼が、何故かまた診察室にいる。
ズボンの上から、股間を押さえるようにしながら。
はっきり言って、非常に情けない姿である。
心もち、へっぴり腰に見えるのだが気のせいだろうか。
「先生ひどっ!大変なんだって!」
「……はぁ。とりあえずソレ、見せてみろ」
見たくはないが、見なければ始まらないので、うんざりしながら言うと、龍太朗はいそいそと脱ぎ始めた。
「じゃじゃーん!」
「…………」
見せられたモノに絶句した。
輝いている。
確かに輝いていた。
光の具合できらっと輝くのは、幾つもの宝石――ではなく、プラスチックでできた模造品だろう。シールのようにぺたぺたと、ソレに貼り付けられている。
「お前……、なにしてんだ……?」
「いやその……ほら、この間、綺麗に修正してもらったっしょ?強化もしてもらったし、どうせならもっと綺麗にしてみない?って女友達に言われてさ~。宝石シールってのをつけてみたんだよ」
「……それで?」
「つけてみたら、結構いい感じでさ~!でも、シールだからすぐにとれちゃって。落ちないようにって、女友達がこれくれたんだけど、今度はとれなくなっちゃって……」
「お前は馬鹿か、馬鹿なんだな?知ってはいたけど本当に馬鹿だ……!」
これ、と接着剤を差し出してきた龍太朗に、私は思わず声を上げた。
渡されたのは強力接着剤。それも工業用だ。
渡した女も女だが、これをあんな場所に使用するとか馬鹿を極めている。
「そんな馬鹿馬鹿言わないで~!俺も焦ってさぁ、接着剤とろうとしたんだけど、うまくいかなくて……」
「当たり前だ、この馬鹿が。ったく本当に碌なことしないな?……もういっそこのままでいいんじゃないか?」
「ごめんなさい、勘弁してください!さすがにずっとキラキラは嫌ですっ!っつか、パンツ履く時引っかかって邪魔なんだよぉ!それに、無理やりシールとったら、その部分の皮までとれて、見た目もやばいし……!お願いですから治してください!」
土下座する龍太朗に再度ため息をつくと、私は助手に指示を出して準備を始めた。
これは少し時間がかかりそうだ、麗華にも手伝ってもらおう。
「失礼します――きゃあっ!?」
鈴木さんに言われ、診察室に入ってきた麗華は、龍太朗を見て悲鳴を上げる。
「おおっ!?えっ、なに誰!?めっちゃ可愛い!」
「ええい、興奮するのはいいが、動くな!」
「ちょっ、なっ、ええっ!?」
「はいはい、麗華さん、こちらへどうぞ。私は薬品の準備をするので、先生に道具出しをお願いね」
狼狽する麗華を置いて、さっさと出ていく鈴木さん。見慣れぬ綺麗な女性に興奮する龍太朗と、押さえつける私。診察室の中は軽いパニック状態だ。
「えっ、新しい助手さん!?わ~、初めまして!俺、風間龍太朗って言います!享年17歳で、彼女常時募集中――」
「麗華、こいつのことは無視していいから。そこのピンセット取ってくれ」
「え、ええ……」
「麗華ちゃんって言うんだ!名前も綺麗で可愛いね!」
麗華は、衝撃を受けながらも、私の指示に従って動いている。あられもない格好の龍太朗から目を背けつつも、やはり気になるようで時々ちらちらと見ていた。龍太朗は全く気にした様子もなく、明るく麗華に話しかけている。
……こいつ、すごいな。というか、こんな状況でよく口説こうと思うな。
精神ミスリルでできてるんじゃないか。半分呆れながらも手は止めない。
そのうち鈴木さんも戻り、本格的な処置へと入った。修復は二時間もかかった。
当分こいつの顔は見たくないと思う。……おそらく、願いはかなわないだろうけれど。
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