表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/18

16. 死後のお仕事

よろしくお願いします!

「――だから、昨日の薬がちゃんと効いているかの確認をしたいんですよ」


再びぎゃんぎゃんと騒ぎ出した麗華に、げんなりしながら説明をする。


「だったら初めからそう言いなさいよ!いきなり全裸になれとか、どんな変態発言かと思ったわよ!」

「失礼な。そんなことして私になんのメリットがあるんですか」


言いつつ、彼女の身体をじっくりと診察していく。

ふむ、特に問題はなさそうだ。

昨夜ふさいだ点滴の穴も、綺麗に修復されている。

これなら今日から普通の生活ができるだろう。


「これなら大丈夫ですね。もう退院できますよ」

「そうなの?で、私、これからどうすればいいわけ?」

「今後の生活拠点となる、アパートへご案内します」


住民登録等諸々の手続きは、空港に着いた時点で済んでいる。

あちらの世界からこちらに来る際に、その人間のデータは全て移管されるのだ。

そのため、こちらで特別な手続きは必要はない。

彼女の住むアパートの鍵も、昨日政府関係者から受け取っている。

ざっと片付けをすると、私は彼女を促し、診療所を出た。


「……診療所は、開けなくていいの?」

「もともと、今日は休診日なので」

「水曜日が休診日?」

「あと土日と祝日もですね」

「……休み、多くない?」

「こっちは、完全週休三日制のとこが多いですよ」


よく働くと言われる日本人だが、死後は割とそうでもない。

むしろ、生前働きづめの人も多いせいか、死後はできるだけ楽をしたいという人がほとんどだ。

税制の優遇や、生活費が生前と比べてかからないこともあり、のんびり働き、ゆっくり休むという文化が定着している。

働き方も各自自由なので、週休四日の人もいれば、最低限、生活を維持する分しか働かない人もいる。

それでも社会が成り立っているのは、生活必需品などの減少などもあるが、やはり日本人だから、という理由もあるのだろう。

働く時間が少なくても、真面目にしっかり働く人が大半だし、最初は休みを多く設定していても、暇を持て余して、なんだかんだ稼働日を増やす人も多いからだ。


この辺りが、勤勉で真面目な国民性と言われる所以かもしれない。

たまにだらける分には極楽だが、それが続くと苦痛になるのだ。

私もまた、例外ではない。

それでも働きづめは精神的に疲れるので、週休三日くらいがちょうどいいと感じている。


「ふぅん、その辺は、あっちよりも進んでるわよね。向こうは、ようやく完全週休二日制度が定着したくらいだし」

「まぁ、そもそもの社会の成り立ちが違いますからね。私たちだって、あっちにいた時はその制度に沿って仕事していたでしょう」


そもそも、私がこちらに来た時、あちらではまだ完全週休二日制度は成立していなかった。

当時から議論はされていたし、外資系やIT系など、進んでいる企業は、週休三日制度を検討していたというのに、社会全般ではなぁなぁにされていた。

中には、昭和と同じように週休一日がデフォという会社もあったので、格差社会も極まると思ったものだ。


こちらに来てから一気に休みが増えて驚いたのも、今は懐かしい過去だ。

話をしながら、やってきたバスに乗り込む。ほんの5分ほどで目的地に着いた。


「バスも無料なのね」

「あと電車もね。タクシーは有料ですが」


市内にはレンタサイクルもあって充実している。

こちらも無料であり、市内の定められた場所なら乗り捨て可能なので、とても便利だ。


「あ、着きましたよ」

「へえ、ここが……」


よくあるタイプのアパートメント。

オートロックがついているので、カードで解除して中に入る。

中に入ってすぐに、管理人の部屋があり、窓口で管理人が顔を出していた。

管理人は中年の女性で、知り合いでもある。


「あら先生、久しぶりね」

「山本さん、どうも。新人さんをお連れしましたよ」

「桐生院麗華です。よろしくお願いします」


麗華は丁寧にあいさつし、綺麗に頭を下げる。

……おい、ずいぶん態度が違うじゃないか。ジト目で見ていると、山本さんがにっこり笑った。


「管理人の山本です。なにかあったら、いつでも言ってちょうだいね」

「はい、ありがとうございます」

「じゃ、後は山本さんが説明してくれるから」

「わかったわ。……その、ありがとう」

「どういたしまして。山本さん、よろしくお願いします」

「ええ、連れてきてくれてありがとね」

「それじゃ」


手を振って、アパートから出る。

無事依頼された仕事を達成できたことを携帯メールで報告した。

この後は自由だ、今日は何をしようかな。

やっと解放された喜びで、足取り軽く帰途についた私は、その後に面倒ごとがやってくることになんて、ちらりとも気づかなかった。

少しでもお気に召した方は、是非ブックマーク・評価等して頂けるとありがたいです!

他作品もUPしておりますので、よろしければこちらもお願いしますm(_ _)m


・貧乏ぼっちのモブロード→ https://ncode.syosetu.com/n9310ed/

・腐女子ゾンビの異世界スローライフ→ https://ncode.syosetu.com/n0984fw/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ