15. 第六味
よろしくお願いします!
「……そうね、私、ゾンビになったんだものね」
「わりと落ち着いていますね」
正直、少し意外だった。
これまでの彼女の様子から、また大騒ぎするのではないかと思っていたのだ。
「そういうものだって知っていたもの。だから最初は信じたくなくて、散々暴れたんだし」
「そこは暴れないでほしかったですが」
あの後、政府の人間から連絡がきた。彼女が暴れた後の諸々の処理が終わったのは真夜中だったと言う。
彼女を押し付けてきたことは迷惑だったが、さすがに少し気の毒に思えたものだ。
「人肉フレーバー、ね。初めて聞いたけれど……それが、味を良くするの?」
「ええ、そうらしいです。この成分が、衰えた我々の嗅覚と味覚を鋭敏にするらしいですよ。その結果、美味しくなるのだとか」
「……でも、あまりその、……そういう匂いを感じなかったけど」
「フレーバーと言っても、香りがついているわけではないですからね。ただ、その成分に似たものが入っているというだけで。生者には感じられないらしいですけど。ほら、味覚には五味……甘味、酸味、塩味、苦味、旨味というのがあるでしょう?それにプラスした六味を感じるということで、第六味、と呼ばれているんです」
これも、あちらの世界では知られていないだろう事実だ。
ただでさえ、不死者の存在に抵抗感を感じる人が多いのに、そんなものがあると知られれば、より拒否感を示す人が増えるだろう。
「なるほどね……。でも、待って?そんなものがあるのなら、わざわざ世界を分ける必要はないんじゃないの?ほら、これがあれば――」
「残念ながら、これはあくまでフレーバーなので。……本物に勝るものではないんですよ」
この成分が作り出された当初、彼女と同じ意見はこちらでも出された。
すぐにとはいかずとも、生者と不死者が一緒に暮らせる、そんな世界になるのではないか、と。慎重に議論を重ね、ついに実験されるに至ったが、期待された結果は、しかし残念なものだった。
「まぁ、そんなわけで、初めは少し抵抗あるかもしれませんが、こちらでも飲食は楽しめますから」
ポケットからバナナと調味料を取りだし、バナナに調味料をかけた。
こうして第六味をふりかければ、生の果物でも美味しく食べられる。
「……なんか、マヨラーとか、ケチャラーとか、そんな感じね」
その様子を見ていた麗華は、呆れたように、そしてどこか懐かしそうな表情でそう呟いた。
「では、無事朝食を終えましたので、全裸になってくれます?」
「朝っぱらから意味不明なこと言わないでくれる!?」
少しでもお気に召した方は、是非ブックマーク・評価等して頂けるとありがたいです!
他作品もUPしておりますので、よろしければこちらもお願いしますm(_ _)m
・貧乏ぼっちのモブロード→ https://ncode.syosetu.com/n9310ed/
・腐女子ゾンビの異世界スローライフ→ https://ncode.syosetu.com/n0984fw/