10. 不死者の世界2
よろしくお願いします!
「まぁ、交尾以外ならできますし、必要であればそうしたレクチャーを受けられる機関を紹介しますが」
「結構よ!」
あ、そう。
怒っているのか恥ずかしがっているのか、真っ赤な顔をして視線をそらした麗華に、肩をすくめる。次に何を話そうかと考えを巡らせていると、麗華が若干戸惑うように私を見つめた。
「……不死者って、どうやって生活してるの?あなたは医師みたいだけど……他の、その私と一緒に来た人たちとか、これからどうなるの?」
「そうですね、ではまず流れを説明しましょうか。不死になった人は、防腐処置を受けた後、生活についてのレクチャーを受けます。今、あなたがしているようにね。その後、各自住処を与えられ、年齢によって学校へ行ったり、仕事に就いたりします」
「学校……って、そんな年齢の人がいるの!?ゾンビに子供はいないって聞いていたんだけど」
なるほど。彼女の言うことは、正しいようで少し間違っている。
「正しくは、16歳未満の子供はいない、ですね。あと、80歳以上の老人もいません。理由はわかりませんが」
「なんか、それだけ聞くと誰かに選ばれているみたいね……」
「実際、そんな説もありますね」
ウイルスのせいだとか、政府の陰謀だとか、色々な説があるが皆定かではない。
政府の陰謀論が飛び交うのは、不死者の中に、大人の手を借りないと生きられない子供や、心身を弱らせた老人がいないことが関係しているだろう。こちらにいるのは、一番若くても16歳、既に肉体的にも精神的にもある程度成熟している年齢だ。
「ある意味、選ばれているのは間違いないですね。こちらの世界には、犯罪者がいませんから。正確には、『あちらの世界で犯罪行為を行った者』、ですが」
「それは……どういうこと?」
「言葉の通りです。犯罪者については、亡くなる前に処置がされているので。不死者になることはありえません」
「処置……?」
驚いたように声を上げる麗華。
これについても、あちらでは公表されていない事実である。
「不死者は、死後を生きます。定かではありませんが、理論的には永遠に生きるとも。そんな中に、犯罪者がいたら……どういうことになるか、わかるでしょう?」
「……世紀末が始まるわね」
「永遠の地獄ですね。死という概念があまりない分、より悲惨なものになるでしょうね」
悪人が死んで悔い改めるだなんて、夢物語でしかない。
実際には生前と同じ趣味嗜好を持った犯罪者が、死後も同様に犯罪を繰り返すのが関の山だ。
どんな綺麗ごとを言ったところで、隣に殺人者やレイプ犯が住んでいたら人は恐怖する。
まして、普通の手段で死なないとなれば、恐怖もひとしおだ。
たとえ不死者であっても。
三大欲求がなくなっても、それで死ぬことも痛みすらなくなっても、受ける恐怖や衝撃は生前とさほど変わらないのだ。
死というある種明確な終わりがない分、心的苦痛はなおひどくなる可能性がある。
さらに、生者側の制度や感情の問題もある。
悪人が死後を生きるということは、死刑などの罰が意味をなさないということだ。
その結果、悪を助長するようなことや、死後も罪を重ね、万が一にでも生者に迷惑をかけるようなことがあってはならない、という現実的な側面もある。
だからこそ、不死者になる人間の中に犯罪者はいないのだ。
犯罪をした者は、生前に脳に処置を施され、死んだ後に不死者にならないようにされる。
この処置については、倫理的な問題があるため、生者の世界では決して表には出せない情報となっているが、不死者は皆知っている事実である。
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次回は明日の更新となります。
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