表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/18

1. プロローグ

よろしくお願いします!

――私が生まれた(・・・・)時は、こんな時代になるなど思いもしなかった。


「先生っ!オレのピーが取れちゃった!」

「またかよ、これで何度目だよ」


今日も今日とて、カリノ診療所に悲痛な叫び声が響き渡る。

診察室に飛び込んできたのは、若い男。明るい茶髪に着崩した制服が今時の若者という感じの、いかにもなチャラ男だ。

だが、いつも軽薄なその顔は、悲しそうに歪んでいる。整った顔立ちなこともあり、事情を知らなければ同情してしまいそうだ。


事情を知っているこちらからすれば、冷ややかな視線を投げかけるだけだが。


「で、取れたブツはどこに?」

「ここっ!まさかこんなことになるなんて、思いもしなくてさ~」

「食べ物じゃないんだから、タッパーに入れてくるなよ……」


大事そうに抱えられたソレに、思わず顔をしかめてしまう。

大雑把でも料理をする方にしてみたら、毎日のように使用しているタッパーに、そんなモノを入れるだなんて信じられないことだ。

思わずチョップをすると、タッパーは派手な音をたててリノリウムの床に落ちた。

慌てて床を見るが、幸いなことに中身(・・)はこぼれていない。心の底からホッとした。

あんなもんの片付けなど、いくら医師を気取っている私とてごめんこうむる。


「あーっ、何するんだよ!?オレの命より大事なモノだよ、それ!」

「うるさい。次同じことしてみろ、消し飛ばすよ?」

「うう、なんてひどい……っ!」


よよよ、と泣く真似をする馬鹿男に、ため息をついて肩をすくめる。

隣についたベテランの助手が、苦笑しながらソレを拾った。


「……で、今度はなにした?」

「前回、綺麗に修復してもらったっしょ?見た目はもちろん、大きさも形も色艶も最高でさ、あまりにも()と同じだったから、感動しちゃって、つい」

「……あまり聞きたくはないけど、それで?」

「ひょっとして久々に男に戻れるのでは!?と思ってさ、こう、ちょっと強く握ったら」

「あ、もういい。……相変わらず馬鹿が馬鹿なことをした、そういうことだな」

「馬鹿じゃないよ!?男ならこう、当たり前というか、ほら、わかるでしょ!?」

「あいにくだがさっぱりわからん。そもそも私は男じゃないし」

「うう、男の本能なのに……!」

死人(ゾンビ)にそれが当てはまるかは懐疑的だな」


嘆く男にフン、と鼻を鳴らして、私は男の治療(・・)を開始した。

今日、この後も投稿予定です!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ