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学院での授業

9000PV突破しました。

20万字行きました。

ありがとうございます!

これからも頑張ります。

 入学式当日は、特に何もなかった。

 制服や教科書はあらかじめ支給されているし、授業もこの日はない。

 シルキー以外には知り合いと呼べる存在もいないピーターは、これと言って迷うこともなく帰宅。

 シルキーはまだ帰っていなかったので、食事を済ませる。

 シルキーが返ってきた後は、いつものように、全身を限界まで傷つけるトレーニングを行った後、倒れこむように就寝した。

 この日ばかりは、メニューもいくらか軽かった。

 明日が大変(・・)であると、シルキーもピーターもわかっていたからだ。

 これから一週間に一度は、こういう日を作らなくてはならない。

 いや、明日のことを考えると二日だろうか。


 ◇


 翌日、本格的に授業が始まった。


 最初の授業は、魔術史という科目だった。

 魔術や魔法そのものの発展の歴史、なのかとピーターは思ったが、別にそれだけではないらしい。

 ではそれ以外は一体なんなのかと言えば、このマギウヌス魔法魔術学院の歴史である。

 初日である今日は、その概要だ。

 まず元々、国の前身となったのはとある小国の魔術研究機関だった。

 しかし、国家によって魔法師たちは酷使されてしまっていた。

 とくに超級職への扱いがひどく、反発されぬよう魔法が使えないように呪具を付けられたうえでMPをブーストする代わりに命を削る薬物を大量に投与され――つまるところ魔力タンクにされていた。

 その扱いに耐えきれなくなった魔法師たちが魔術を使ってクーデターを起こし、当時の小国を滅ぼした。

 当時の王や貴族は討たれ、民衆は頭をたれた。

 クーデターを起こし、国を滅ぼしたはいいものの、別の問題があった。

 それは、外の国についてである。

 最悪、「クーデターから国を救いに来た」という口実(・・)で攻め込まれ、再び虜囚となるかもしれない。

 あるいは、それすらなく危険とみなされて滅ぼされるだろうか。

 いずれにしても、彼等に諸外国全ての攻撃を跳ね返すだけの力はなく、全滅することもあってはならない。

 ゆえに、彼等は第三の道(・・・・)を選ぶ。

 重力操作魔法で土を浮かして島を作り、諸外国から文字通り距離を置いた(・・・・・・)

 そののち、学院を設立し、国の方針を魔法魔術の研究と発展とした。


 

 そして、今の学院都市国家マギウヌスという国を設立した、というのが授業内容である。

 ピーターはシルキーからおおむね聞いていて、知ってはいたのだが。

 というか、ほとんど流れとしては絵本で昨日読んだところである。

 知らないはずがない。

 しいて言うなら、一般市民が生き残っていたことだけが違いであり、救いである。



 周りの反応を見ても、大半の生徒は退屈そうだった。

 最前列に女生徒が一名、男子生徒が一名だけいて、彼等だけは生真面目にメモを取っていた。

 担当の教授曰く、次回以降はより深く掘り下げるので予習をしておくように、とのことである。

 ピーターはざっくりとしか知らなかったので、予習はしておこうと心に決めた。



 二時間目以降の授業は、選択制である。

 この時間は自由だ。

 どの授業を取るも自由。

 取らずに自習や鍛錬に励むも自由。

 というか、そんな自習時間が学院のカリキュラムでは多かったりする。

 授業は多いものの、大半がピーターの適性の問題で受講できないか、そもそもピーターが興味を示せないかのいずれかである。

 そういう時は、シルキーによって出された課題をこなすことになる。

 そして、この二時間目は、そのどちらでもない、つまりはピーターの出る選択科目があるということである。

 その科目は呪術学。

 邪属性魔法の、他者を傷つけることに特化した学問である。


「はい、みなさん、よろしくお願いします」



 入ってきた、教師を見た時誰もがぎょっとした。

 その人物は、背の高い男性だった。

 服装は落ち着いており、髪型も平凡。



 だがその一方で、首から上は奇妙だった。

 黒い革製で、棘付きの首輪を装着しており、それによって首元がきつく絞めつけられている。

 おまけに目は、焦点があっておらず両目がぎょろぎょろと別の方向を向いている。

 口は半開きになっており、よだれが端からあふれている。

 

 

 見た目が奇抜、それはあるだろう。

 だが問題は、そうではない。



「あ、あの」



 誰か、とある生徒が手を挙げて質問した。



「あの、〈禁呪王〉ナタリア・カースドプリズン教授ですよね?」



 そう、時間割によれば、邪属性担当の教授はナタリアという女性(・・)だったはずだ。

 男性ではないはずだが。



「まず大前提として、ここにいるのはナタリア・カースドプリズン本人ではない」



 淡々とした、感情のない声が響く。

 目をぎょろぎょろとしている状態の人間の声ではではない。

 おそらくは、ナタリア・カースドプリズン本人の口調も同じものだろう。



「ええと、今本物の私は魔術研究で忙しい。したがって、あなたたちの指導をしている暇はない。時間が惜しい」


 ここにいるのは、本人ではない。

 しかし、今はなしているのは、彼女本人の意思である。



「ゆえに、呪術で操作した無魔を、傀儡を代行させる。そして、これから一年間、この調子が続きます。よろしいですね?」



 白眼を向いたまま、男性が淡々と話すのはシュールな光景だった。



「……どっと疲れた」



 傀儡による授業。

 内容自体は予習したこともあって、さほど苦痛ではない。

 だが、そのやり方が異常極まる。極まりすぎている。

 おそらく、彼女は後進の育成には興味はないのだろう。

 シルキーは非常に積極的な気がするが、それは例外的なものなのかもしれない。

 というか、傀儡化されている人はいいのだろうか。

 まるで意識が内容にピーターには見えた。

 アンデッドではない。

 みれば分かる。

 〈錬金術師〉が造るホムンクルスだろうか。

 人型ではないが、ピーターの故郷にも似たような存在はいた。

 農作業用のモンスターとして使われていたのだ。

 そういう部類だろう。

 そうであれば、眼がおかしかったことにも納得がいく。

 まさか本当に人間を操っているわけでもないだろうし。


「どうかしたの、リタ?」

「うーん、なんでもない!」

「次の授業は隠れとくんだよ、リタ。あとハルも」

「どうして?」

「奥様、次の授業のご予定を把握されていますか?」

「ぜんぜん?」



 次は魔法戦闘術。

 それ自体は、決して問題ではない。

 むしろ、冒険者時代での戦闘経験を踏まえれば、彼にとっては楽な曲でもあるといえるかもしれない。

 だが、問題はある。

 授業内容に問題がなくても、それ以外の要素に問題があれば、それはピーターにとって障害である。

 例えば、担当教員であったり。

 教員の名は〈教皇〉、フランシスコ・チャイルドプレイ。



「ハイエスト聖王国、教会最高責任者だよ」



 憂鬱な気分で、ピーターは教室に向かった。

 大丈夫だろうか、殺されないだろうか、とピーターは心から不安に思った。





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