百人戦争
3000年以上昔の太古より、魔王は100年~200年に一度のペースで復活し、配下を率いて人間界を襲った。
襲われた人々もまた魔王配下の魔物にされ、魔物は99体まで膨れ上がる。
その度に人間側は100人の勇者を集め、100体の魔王軍と戦い、配下となった人々を救って魔王を封印してきた。
その戦いを『百人戦争』という。
人間側は魔王復活に備え、その戦いを古文書や歴史書に記し後世に伝えてきた。
――――そしてまた今回も魔王復活の時。
「はぁ……っ……はっ……」
「大丈夫か!!」
100回以上にわたる長時間の戦いに、体力を削られた人間側の一人の男が膝をついた。
彼は先程から徹底的に魔王に狙われ、攻撃されている。
周りもサポートしようとするが、魔王の攻撃から逃れる術はない。
「いや、大丈夫だ……もう少しでこの戦いに決着がつくんだ。ここで負けていられるか」
魔王の配下はあとわずか3体だけ。人間側の勝利は目前と思われた。
しかし魔王は余裕を崩さない。
「ハハハハ。その意気だ。またお前を指名してやろう。……この遊びは実に楽しいな!」
「いざ尋常に……勝負!」
配下の魔物と男の一対一の勝負。しかし男は負けてしまう。
「そんな……ああ、せっかく人間にもど……れ……たの……に」
アッという間に男の涙が凍りつき、その皮膚は黒く染まり、口は耳まで裂けた。黒い蝙蝠の様な翼が背中に生える。
男は魔物に姿を変え、魔王側の陣に加わった。
「ああ、まだ続くのね……」
「くそう……!!待ってろ、きっとお前を取り戻す!!」
人間側の仲間は、ある者は涙し、ある者は歯噛みする。
『百人戦争』の恐ろしいところはここだ。血は流れない。
しかし、仲間と配下を一人ずつ奪い合う。
長い戦いの中で人は疲弊し、仲間の裏切りに傷つき、やっきになって取り戻そうとする。
それでも、どちらかが全滅するまでは戦いを止めることはできないのだ。
今や195人になった人間側は、しっかとその両手を全員で繋ぐ。
皆の心をひとつにして、腕を振り上げ、歩を進め、もう100回以上唱えた呪文を全員で詠唱する。
「せーのっ」
「勝~ってうれしい 花いちもんめ~!!」
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