〜「さぁっ、早く貴様の思い出の品をよこせ!」「いやいや…とりあえず落ちつこうね…?」〜
“チュンチュンチュンチュンっ…”
小鳥が鳴く声が響き、暖かい日差しが窓から差し込む。
この時期の日差しは心地よく、窓辺にいたら眠くなったしまうほどだ。
窓からゆっくり差し込まれた光は部屋の中を満たすように広がっていく。
そしてゆっくり…この部屋の住人達にも…
「…暇じゃぁ〜…」
「…さっきも同じことを言ってなかったかい?」
どうやら、あまり関係ないようだ。
中にいたのは、落ち着いた雰囲気の青年と、妖艶な美女…
青年の顔立ちは整っており、メガネがいい感じにかっこよさを引き出していた。
対して美女の方もとてつもない…なぜなら、銀色のロングヘアーに綺麗な顔立ち…いわば容姿端麗だ。
さらに言えば、ボッキュッボンな体型の上に、乱れた衣服…
童貞を仕留める要素がこれでもかと詰まった存在がそこにいた。
そんな女性が、ソファに寝転がりながら青年の方を見ている店員…
普通の男なら意識して仕方ないような状態なのに、青年は特に反応することなくただ相槌を打つばかりだった。
「暇じゃ暇じゃ暇じゃぁ〜…はよう客はこんのかぁ〜」
「…何事も焦らずゆっくり待つものさ」
「ムゥ〜、そうはいうが…客が来んと困るのはお主も同じじゃろ?」
「…それはまぁ…でも、これまでやってきた分の蓄えもあるし…まぁ何とかなるでしょ」
「…呑気じゃのぉ〜…」
「いや、ほんと…焦ったっていい物は見つからないしね……ルーシェだって、美味しい“モノ“を食べたいんでしょ?」
「…にひひッ、まぁのぉ〜」
妖艶な笑みを浮かべながら、ルーシェは体を起こした舌なめずりする。
「…そういう意味でも待つことは大事だよ…せっかくこういった場所にお店を出してるんだから…」
「そういう意味では、確かにそうかもしれんが…じゃが、暇なものは暇じゃ〜」
「…こらこら、ひっつかないひっつかない」
「…お主…本当にアレじゃ…枯れておるのぉ…相変わらずつまらんやつじゃわ…」
「…いやぁ…慣れって怖い物だねぇ…」
「それは慣れなのかえ…?」
慣れたものは仕方ないじゃないかと苦笑いを浮かべるラルク。
退屈で暇な上、悪戯もうまくいかなかったルーシェはぷくぅと頬を膨らませながら、足をバタバタさせていた。
何気ないやりとり…
事情を知らない者がみれば、恋人同士のじゃれあいにも見えるが…
この2人は恋人同士でもなく…ルーシェに限っては“人”ではない。
「…ん…」
「おっ?♡」
そんな中、ラルクは何かを感じ取り、ルーシェはラルクの反応を見て嬉しそうな声を出した。
ルーシェは知っていた。
ラルクがこういった反応したと言う事は…
“カランコロン…”
自分にとって良い食事…つまり、お客様が現れたという事を表すのだと…
「…ようこそ、“終いの買取屋へ”」