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導き

ここは最果ての楽園

ここには人も動物も国も国境もない

あるのは、一面に広がる花とそこにポツンと立つ一軒家


「おや、今日も鳥たちが導いたお客さんが来るようだね。」


白髪で白いパーカー、だぼだぼの黒いズボンを穿いた青年が、膝に白くて小さい狼をのっけながらそうつぶやいた。



「よう、キャスト!準備はできたか?」


一人の冒険者が、ひ弱な荷物持ちキャストに話しかけた。

キャストは冒険者の荷物をしているが、別に仕事に不満は無く、冒険者とも良好な関係を築いていた。今日も彼らはギルドのクエストを受けていて、初心者ダンジョン攻略というとても簡単で普通のものだった。


「ボルザードさん、ゴブリン3体発見しました。」


「よくやったエルメスフィール!さっさと倒してこのまま突き進むぞ!」


荷物持ちの少年がついてきている冒険者は3人。

リーダーのボルザード。

弓使いのエルメスフィール。

魔法使いのアイリーンである。

彼らは荷物持ちのキャストを拾い、一緒にダンジョンに連れて行ってくれている良き冒険者たちである。

彼らは着々とゴブリンを片付けていき、ついに目標の五階ボスの間をクリアしていた。


「はぁー、やっとここまで来たな。」


「ええ、1年目にしてここまでたどり着くことができたわね。」


彼らはここで帰るべきだった。

でなければ、あんなことにならずに済んだのに・・・

彼らは帰りのために使う、帰還の魔法陣を探していた。


「おい何だこれ?」


ボルザードが見つけたのは未登録の隠しダンジョンだった。


「こんなところに隠しダンジョン?」


「おいおい、隠しダンジョンてことはまだ誰にも見つかっていない宝がごっそりあるんじゃないのか!」


「だったら行くしかないわね、」


「でも、クエストは達成したんですし一旦戻った方が・・・」


キャスト君の言い分は正しい。

でも人間というのは欲深い生き物だ。


「おいキャスト。

ここで行かなかったら次々と冒険者が入っていってあっという間に宝を取られちまう。

それでは俺たちが見つけたのに損しちまう。

おかしいと思わないか?

それならば見つけた俺たちに最初の権利があるだろう。」


ここで引き返そうと貫けばよかった。

しかし彼は今まで共に進んできた仲間を裏切ることはできなかった。


「うぅ。

わかりました。行きましょう・・・」


「よし決まりだな!」


彼らは隠しダンジョンへの扉を開けた。


「中はずいぶんと暗いな。」


「警戒しろ、何が起こるかわからん。」


彼らは暗い中を進み続けた。

これから起こる惨劇も知らずに・・・

やがて彼らは奥の方にきらきらと輝くものを見つけた。

彼らは近づくと、そこに広がっていたのは金銀財宝、宝石の山であった。


「うっひょーこりゃスゲー!?」


「本当にすごいわねここにこんなものがあるなんて。」


「私たちこれで億万長者ね!」


冒険者3人は喜んだ。

人間というものは己の欲するものを前にすると、周りが見えなくなる。

唯一見えていたのは、財宝の山に目もくれなかったキャストのみであっただろう。


「おいどうしたキャスト?

お前もこっちに来いよ!」


「おい・・・

あれ・・・」


彼らの前にいたのは、邪龍ボーレガス。

この世の終わりを見届けるものの異名を持つ、最強の龍種であった。


「なんでこんな奴がここに・・・」


「ここは初心者ダンジョンじゃなかったの・・・」


あるものは絶望し、あるものは尿を垂れ流しながら座り込んでいた。

本能で察したのであろう。彼らには絶対に敵わぬと・・・

邪龍ボーレガスは口から炎ブレスを吐き出した。

鉄をも溶かすその威力は、リーダーのボルザードを一瞬で黒焦げにした。


「いやぁぁぁぁ!」


「早く逃げましょう!」


キャストは必死に残ったメンバーを連れて脱出しようとした。


「エルメスフィールさん!

アイリーンさん!

早く立ってください。逃げますよ!」


「腰が抜けて・・・立てない・・・」


「わたしも・・・」


女性二人は立って逃げることができない状況にある夜であった。

その時、邪龍ボーレガスはまたもや炎ブレスを吐いた。


「まずい危ない!」


そのブレスは一気に3人を焼いたのであった。


・・・


「はぁはぁ・・・」


ダンジョンの中を歩くのは、先ほど邪龍ボーレガスに焼かれたキャストであった。

半身は焼け焦げそれでも彼は歩き続けた。

ならば彼らが導くのは必然であったのだ・・・


「なんだ・・・これは・・・」


目の前には光り輝く鳥たちが飛んでいた。

この暗い中を飛び続けるそれは、俺にはまるで天国にいざなわれる前の現象にしか思えなかった。


「ついてこいと言っているのか?」


体が焼け焦げ、もう死にそうだった。

でも俺は藁にも縋る思いで鳥について行った。



どうやらもうすぐ着くらしいね。


「さぁ、そろそろかな。」

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