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第三十六話 集合

「キアラ!」


 ステファニーは馬車の窓から身を乗り出してキアラに手を大きく振っている。


「ステフちゃ〜ん」


 キアラはステファニーと違って上品に手を振っている。


「お嬢様、はしたない振舞いは控えて下さい」

 

 執事のリアムが注意をしながらステファニーを馬車の中に引き戻した。

 

「むぅ、久しぶりに会うんだよ。邪魔しないでよ」

「はやる気持ちは分かりますが、もう少し品位ある行動をして下さい」

 

 不貞腐れた表情をしているステファニーを見て、リアムが頭を抱えた。

 

「お嬢様、これから一年間過ごすエイジス大帝国は一番規律が厳しい国と言われています。そんな調子では先が思いやられます」

「大丈夫だって、お母様のシゴキに耐え抜いた私よ! あれに比べたらへっちゃらだわ」

「はぁ、そういう意味ではないのですが……あっ、お嬢様!」

 

 馬車が停まるや否や、ステファニーは馬車を飛び出していった。ステファニーはキアラに近づいて両手を握りしめ、二人で再会を喜び合った。

 

「ステフちゃん、会いたかったよ!」

「私も! 本当に会えてうれしい」

 

 二人がはしゃいでいると、荷物を持ったリアムが近づいてきた。

 

「親交を深め合うのはよろしいですが……何度もお伝えいたしますが淑女としてふさわしい行動をして下さい」

「リアムさん、あぅ……恥ずかしい。あの、お久しぶりです」

「はい、ご無沙汰しております。以前お会いした時より身長が大きくなりましたね。そして……強くなりましたね」

「あ、ありがとうございます!」

「でしょでしょ~、キアラはすっごく強くなってるんだよ」

「ステフちゃんのほうがもっと強くなってるよ」

「にへへ~、もっと言ってもっと言って」

「はぁ、ステフお嬢様……」

 

 三人は話し合いながらエイジス大帝国の帝都エイシェント・エイジスに向かうための集合場所である屋敷に進んでいく。


「随分と遅い到着だな、ステフ」

「まぁテメェらしいな、どうせギリギリまで家で訓練でもやってたんだろ」

 

 屋敷の前で腕を組んで立っているブレインと屋敷に入り口の階段に座って頬杖をしたフィルスがいた。


「おお、相変わらず生意気だねブレイン。フィル、久しぶり」

「お、お嬢様! ブレイン様になんて言葉使いを!」

「いいのいいの、ブレインだし」

「まったく君がいうことですか。リアムさんでしたか、彼女の言葉使いを気にしていませんのでお気になさらずに」

「ほら、ブレインがいいって言ってるから平気だよ」

「ですが……」

「なぁ、爺さん。当の本人が言いっつってんだからいいんじゃねぇのか」

「そうです。リアムさん、確かにステファニーの言動は酷くて……いや、日常生活の態度も酷いですが、私たち四人の間に上下関係はないし遠慮とかは必要ないと思っています」

「ブレイン様……ありがとうございます。ステフお嬢様……本当に本当に失礼のないようにお過ごしくださいね」

「大丈夫だって、私だよ」

「ハッ、こいつはいつもこんな感じだぜ。爺さん、何言っても無駄だぜ」

「そんな……」

 

 リアムは屈んでキアラの手を取った。

 

「キアラ様だけが唯一の救いです。何卒、何卒ステファニー様が変なことをしないように管理してください。あなただけが頼りなんです」

「え、ええ!? ステフちゃんはそんな、あの……そんなには酷くないと思いますよ」

「キアラの言う通りよ。もうリアムったら心配性ね」


 そのあとリアムは屋敷の中でしばらくの間ステファニーに淑女がなんあたるかを教え続けた。説教ともいえる話が終わった後、ステファニーはキアラ達のもとに行った。


「ふぅ~、大変だった」

「自業自得じゃねぇか」

「そうですよ、ステフ。君はもう少し品位というものを身に着けたほうがいいです」

「あ? 十分あるわよ」

「あはは、ステフちゃん。大変だったね」

「ああ、私の味方はキアラだけだよぉ」

 

 久しぶりに会った四人は話に花を咲かせた。

 

「そういえばさぁ、フィルってブレインの家で過ごしたんだよね。どうだった?」

「どうっていわれてもよぉ、城だぜ。あれしちゃダメこれしちゃダメってよう、マジで窮屈で息苦しかったぜ」

「フィル、それはちょっと傷つくんですが」

「あぁ、まぁそれでも変な目で見てくる奴は少なかったから……まぁまぁ居心地よかったかもな」

「ふふ、よかったね、フィル君」

「……まあな」

「ふ~ん、ところでさ、フェルサ帝国で過ごしてたせいか、家でも下着姿でいることが多くなってめちゃくちゃお父様とお母様に怒られたんだけど皆そんなことなかった?」

 

 ステファニーの問い掛けにキアラが顔を真っ赤にした。


「あれあれ~、キアラ、もしかして私と同じことしたのかなぁ」

 

 ステファニーがニヤついた笑みを浮かべた。


「あああ、ステフちゃん。あの、そのね、何度か下着姿で出歩いちゃって、私もすごくお母様たちに怒られたの」 

「やっぱりしちゃうよね」

「そういやぁ、ブレインも寝起きに何度かやらかして大目玉食らってたぞ」

 

 フィルはステファニーと同じようにニヤついた笑みを浮かべてブレインを見た。


「フィルっ! それは言わない約束ですよね!」

「あはははは、いいじゃねぇか。全員同じことやってんだからよぉ」


 顔を真っ赤にしたキアラとブレインを見つめながらステファニーとフィルスが大きな声を出して笑った。

 その時、四人がいる部屋の扉をノックする音が響いた。


「ん、だれかな?」

「きっとフィーリーさんだと思いますよ。どうぞ」

 

 扉が開くとそこには軍服を着た男がいた。彼の服装は濃紺色の乗馬ズボンと黒のロングブーツ、詰襟の濃紺色のジャケットに短めのケープを着ている。そのケープの折襟は長く、ケープの左右を止めている金色の飾緒が目に付く。彼は鍔付きの帽子を整えてからステファニーを見つめた。


「君がステファニーか、初めまして。私の名前はフィーリーという。君を、いや、諸君を帝都エイシェント・エイジスに連れていくまで護衛する任務を受けている。諸君は明日のまるはちさんまるに出発して明々後日のひとはちさんまるにリプロ・エイジスに到着。そこで宿泊して翌日のまるななまるまるに出発。同日のふたまるよんごにニュー・エイジスに到着。翌日、馬車を変更してまるななまるまるに出発。同日のひとにごまるに帝都エイシェント・エイジスに到着。そこで諸君を案内する係を私から他の者に変更する。短い付き合いだがよろしく頼む」

「あぁ、はい。よろしくお願いいたします」


 ステファニーはキアラに近づき耳のそばでつぶやいた。


「キアラちゃんなんかよくわからない数字をぺらぺら喋ってたけど、あれ何?」

「エイジス大帝国独自の時間の言い方らしいよ。あとで出発時間教えるね」

「うん、ありがとね」


 フィーリーはステファニーが小声でしゃべっている姿を見つめ、わざとらしい咳をした。


「んん。ステファニー、ここではまだよいが……帝都エイジスではそのような行為は控えたほうがいいぞ」


「え、あ、はい」


 気の抜けた返事をしたステファニーは一抹の不安を感じながら、帝都エイシェント・エイジスに向かうこととなった。



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