第二十六話 魔獣
気功術を行う訓練場でステファニーがブレインとフィルスを追いかけている。
「テメェこっち来んな、マジで来るんじゃねぇよ!」
「やめたまえ、ステファニー。本当にやめてください!」
「やめるわけないでしょ、待て〜」
苦笑いしながらキアラは毎日繰り返される三人の追いかけっこを眺めている。
「ふふふっ、逃げるならこっちにも考えがあるわ。強くなった私の精霊術を舐めないでよ。えい!」
気功術の訓練で擦り傷や痣を負ったブレインとフィルスの体が光に包まれた。
「「ぎゃああああぁぁぁ」」
叫び声と共に二人の怪我が治っていく。精霊学校に通う前は近くに相手がいないと治せなかったが、今は五メートルぐらい離れていても光の精霊術で治せるほど成長していた。
「ふっふーん。離れていても治せるようになったの。すごいでしょ」
「もうやだ……」
「わかるぜ、キツイよな……」
毎日の気功術の訓練が終わった後、ステファニーはみんなの怪我を精霊術で治していた。ブレインとフィルスは治療の際の痛みが嫌すぎて毎回逃げ回っている。無論、一度も逃げ切れたことはなかった。
「はははは、一瞬の痛みを我慢すれば怪我が治るんだ。そんぐらい我慢しろ」
気功術を教えているエイダンが声を張りげながら近づいてくる。
「あとステファニーに感謝しろ。今までいろんな生徒を教えてきたが、ここまで無茶な訓練をできるのはステファニーのおかげだぞ」
「それがツラいんだよ」
「そうですよ」
「何を言う? お前らはかなり強くなったんだぞ。ブレインももう少しすれば気功術使えそうだしな」
「そうよ、私に感謝しなさい!」
「恨み辛みしかねぇよ」
「全く持ってそうです!」
「何だと!?」
「はぁ、お前たちは仲良くできないのか? 明日は魔獣狩りをするんだぞ。チームワークの重要性を教えただろ、大怪我しても知らんからな」
エイダンが言った「魔獣」という言葉に四人が反応する。キアラ、ブレイン、フィルスの三人は緊張して、ステファニーだけが嬉しそうにしている。
魔獣、それは魔王が作り出したと言われている。精霊王の封印から逃れた魔獣を数千年前から五種族が排除しようと奮闘しているが、魔獣は野生動物と交配できるため、ねずみ程度の小さい魔獣を含めれば年々数が増えている。最近の調査によると、その数は数十億にもなると言われている。
魔獣が使う魔術は精霊術よりもはるかに強いと恐れられている。しかし、魔獣はあまり人里に来ないため、ほとんどの人は魔獣に遭遇したことがない。
そのため、ステファニーたち四人は魔獣を見たことがなかった。
その夜、キアラはステファニーの部屋にいた。個別の部屋を与えられているが、二人は一緒に寝ることが多い。
「ふぅ、魔獣か。うぅ、怖いな……。ステフちゃんは怖くないの?」
「うん、怖くないよ。早く明日にならないかな、楽しみだなぁ」
「やっぱりステフちゃんはすごいな。ねぇ、ステフちゃんって怖いものあるの?」
「えっ、う〜んと、怒ったお母様が怖いわ」
「そうじゃなくて、蜘蛛がダメとか蛇が苦手とか、そういうの」
「あぁ……その……あのね、あぅ……」
ステファニーが言葉を詰まらせ恥じらいを見せている。
「あ、その様子は何か怖いのあるんだね。何かなぁ?」
「う、うん。みんなには言わないでね。あのね、お化けが怖いの……」
「ああ、怖いよね。いい子にしてないとお化けとかシェイプシフターとか殺人鬼が来るぞってお父様によく言われて怖がってたなぁ」
「うん、殺人鬼やシェイプシフターは倒せそうだから怖くないんだけど、お化けは倒せなさそうだから……怖いの」
「ステフちゃんの怖いものって倒せない存在なだけな気がするんだけど……まぁステフちゃんらしいか」
二人は遅くまで会話を続け、そのまま眠りについた。
翌朝、髪が長いステファニーはキアラに手伝ってもらい髪を整えていた。激しい運動をしても乱れないように、前髪を編み込んで後ろで束ねた。
「私もキアラと同じように髪短くしようかな、毎日めんどくさくて」
「ダ〜メ、ステフちゃんは髪の毛長い方が絶対にいいの。ほら、もうそろそろ集まる時間だよ。行こう」
集合場所に行くともうすでにエイダン、アメリア、ブレイン、フィルスがいた。
みんな軽装で、ブレインとフィルスは水が入った革袋と小さめのナイフを腰に付けている。
「さぁみんな集まったわね。それじゃ行きましょうか」
魔獣が出る場所は帝都を抜けて三時間ぐらい歩いた先にある渓谷だ。城から出たことがないステファニーたちは帝都を物珍しそうに見ている。
町には活気があり、住民たちは城にいる人たちほどではないが全員体つきが良く、友好的な人が多い。エイダンたちに気軽に話し掛けたり、魔獣狩りに行くと知って食べ物を渡してくる人もいる。
「私の国よりも活気があるように見ます。素晴らしい国ですね」
「そうだろ、そうだろ。元気がいいのがフェルサ帝国の特徴だからな!」
「ブレイン君、誤解がないように言っときますが、エイダンは適当な発言が多いから無視してね。活気があるのはグレン様のおかげよ。グレン様は何よりも帝国の民を一番に考えてくれるの。城を立派なものに変えましょうという議題が出るたびに、グレン様はそんな金があったらまずは民のために使うって言うのよ」
「そうなんですね、勉強になります。私の父上も民がいてこそ国が成り立つと言っています。ただ、国は一枚岩ではないので父上は頭を悩ませております。獣人族の国々は、長が良識ある方だとこんなにも良い国になるんですね」
「ええ、そうよ。ブレインくんのお父様も良い国王なのね」
「はい」
ブレインは自分の父親が褒められて嬉しく、屈託のない笑み浮かべた。雑談をしながら街を通り過ぎ、目的地の渓谷にたどり着いた。
「ここがアーシム渓谷よ」
アーシム渓谷は高さ二百メートルを超える赤茶げた岩肌の断崖が入り口となっていて、そこから三十キロメートルほど続く広大な渓谷だ。
自然が作り出した美しい光景に四人は感動していた。
「見入ってしまうのは分かるけど、今日は観光に来たわけではないわよ。進みましょう」
「はい」
エイダンが先頭で進み、子供たちを挟むようにアメリアが最後尾にいる。エイダンは子どもたちのペースに合わせて歩を進めていた。
「お前ら魔獣の特徴は覚えているか」
「はい、金属で出来た牙や爪があると魔獣です。あとは血液に銀色の液体が混ざっています」
「うむ、弱い魔獣だと外見上動物と見分けがつかないこともあるから気をつけろ」
「はい」
「そして、強い魔獣は一目瞭然で魔獣だとわかるぞ」
「エイダンの言うとおりよ。いい、魔獣は強ければ強いほどこの世の生き物とは思えないほど醜い姿をしているの」
アメリアは昔のことを思い出し眉間にしわを寄せた。
「私が今まで見てきた中で一番強かった魔獣は未だにトラウマものよ。ねえみんなゲジゲジって知ってる? 足がいっぱいある虫なんだけど、それに似た魔獣だったわ。顔と胴体は狼にそっくりで、ゲジゲジみたいな金属の手足が何十本もあってワシャワシャ動くの。あの動きがもう気持ち悪くて……」
「うげぇ」
ステファニーたちはその姿を想像して気味悪がった。怖がったキアラはステファニーの腰に巻いた布を握りしめる。
「アメリア、子供たちを怖がらせてどうすんだ」
「緊張感持たせようかと思ったんだけど、やりすぎちゃったのかしら」
「お前ら、この渓谷に強い魔獣はいないから安心しろ」
「よかったぁ。ね、ステフちゃん」
「私としては強い魔獣と戦ってみた……」
ステファニーのエルフ耳がピクッと動き、顔つきが変わる。それに気づいたキアラがステファニーに小さな声で問いかける。
「ステフちゃん、何か聞こえたの?」
「動物の争う声と悲痛な呻き声……。あっ、咀嚼音も聞こえるから何かが動物を殺して食べてるわ」
歩くのを止め、全員が緊張した面持ちでステファニーを見つめる。
「人……じゃないよね?」
「うん、人じゃなくて動物同士の争いっぽい」
「ステファニーちゃん、どの辺から聞こえてきた?」
二百メートルほど先で道は三つに分岐しておりステファニーは一番左の道を指差した。エイダンとアメリアは互いの顔を見て頷いた。
「よし、ステファニーが指し示した道を行くぞ。魔獣と決まったわけではないが、いつでも戦える心構えはしとけ」
全員が黙って頷き、左の道を進んでいった。しばらくすると獣人族のエイダン、アメリア、フィルスが血の匂いを嗅ぎとった。
慎重に進んで行くと、大地が血で赤く染まっている場所があり、そこから獲物を引きずって行った跡があった。血の跡をたどっていくと、途中から絶壁を登っているような跡がついている。
全員が赤茶げた垂直に近い崖を見上げると、腸がだらしなく垂れ下がったヒョウを咥えているヤギがいた。ヤギは器用にヒョウを咥えたまま崖を登っていたが、急に動きを止めてステファニーたちの方に顔を向けた。
赤銅色の捻れた角にヒョウの肉片と皮がへばりついて、赤い血が滴り落ちている。目は瞳がなく、赤銅色の金属のように見えた。
「魔獣だ! お前ら、行くぞ!」
エイダンが近くにある一メートルを超える大岩を持ち上げて崖にいる魔獣に投げつけた。岩が魔獣の近くにあたると、がけ崩れが起きて魔獣が落ちていく。
「あれで魔獣が死んだのでは?」
ブレインが希望を込めて聞くと、エイダンはかぶりを振る。
崩れ落ちた崖の中から魔獣が飛び出した。魔獣はエイダンを睨みつけて口を大きく開けて耳をつんざくような声を上げた。
「ギエエエエエエエェェェ」
口の下の長い毛にヒョウの血がべったりとこべりついている魔獣は叫び終わると、低い唸り声を上げ始めた。
「みんな気をつけて、魔術を使い始めたわ」
魔獣の口の前に魔の力が集まり、幾何学模様の魔法陣が作られていく。
「唸り声が終わって、魔獣が吠えると魔法陣から魔術が放たれるわ。タイミングを合わせば避けれるから、よく魔獣を見なさい」
直径十センチほどの魔法陣が完成すると魔獣は唸り声を止めて、叫んだ。その咆哮とともに魔法陣がまばゆく光り、魔術が放たれる。
「来るぞ!」
エイダンに向けて放たれた魔術は三センチほどの光弾で、エイダンは冷静に体を少し動かして避けた。
その様子を見ていたブレインは魔術は大したことがないと思ったが、その甘い考えは一瞬で打ち砕かれた。
光弾はエイダンの後方の大岩を貫き、断崖にぶつかると爆発が起きた。
「なっ!? 小さいのにあんな威力があるなんて」
ブレインが驚愕の声を放った。その声に混じって低い唸り声がする。魔獣が再び魔法陣を作り出していた。しかも、今回は五つの魔法陣が宙に刻まれている。
ブレインは恐怖のあまり体が固まり、その場から動けなくなった。心臓が脈を打つたびに体が揺れ、魔獣を中心に視界が歪む。
歪んだ視界の端に、猛スピードで魔獣に向かう何かが見えた。それからワンテンポ遅れて二つの何かが魔獣に向かって行く。
「キアラは左、フィルスは右から攻め込んで」
プラチナブロンドの髪をなびかせながらステファニーが一直線に魔獣に近づいていく。魔獣まであと五メートルほどになった時、魔獣の唸り声が止まった。ステファニーは口角を上げて魔獣を睨みつける。
「ギエエエエェェェ」
魔獣が叫ぶと五つの魔法陣から光弾が放たれた。全ての光弾がステファニーに襲いかかる。
近距離にもかかわらず、ステファニーは光弾を全部避けて魔獣の目の前まで進んだ。勢い良くステファニーは魔獣の顔面を右手の拳で殴った。
赤銅色の歯が砕け散り、魔獣は血を噴き出しながら左側に吹き飛んでいく。赤い血に混じっている銀色の液体が空気に触れて蒸発している。
吹き飛ばされた魔獣の先にキアラが回り込んでいた。キアラが手袋をした拳に火の精霊術を纏わせて魔獣の腹を殴った瞬間、爆発が起きて魔獣がフィルスのいる方に吹き飛ばされた。血肉が四散し、魔獣の赤銅色の肋骨があらわになっている。
フィルスは吹き飛んできた魔獣の首めがけて伸ばした爪を食い込ませて、そのまま地面に叩きつけた。魔獣は銀色の液体が混ざった血反吐を吐き、うめき声にもならない小さな声を出している。フィルスは首に食い込んだ指を引き抜き、手を横に振って指についた血を落としている。
「ちっ、汚ねぇな。雑魚が」
「やったぁーーー! ステフちゃん、魔獣倒せたよ!」
喜びのあまりキアラはステファニーに駆け寄り、飛びついて抱きしめた
「ちょっ、キアラ!? まだっ、ああぁ」
急に抱きつかれたため、ステファニーはキアラを受け止められずに倒れ込んでしまった。
「ったく、何やってんだ。あとブレイン、テメェはまだダメなのか。強えくせによぉ」
フィルスがブレインの方を向いてそう言うと、キアラに抱きつかれて倒れているステファニーが焦りながら叫んだ。
「フィルス、避けて!」
「はぁ?」
フィルスがステファニーの方を向くと、視界の端に光が見えた。
その光は、死に際の魔獣が最後の力を振り絞って作り出した魔法陣だった。
「ギィオエェエェオェェェ」
魔獣が断末魔の如き声を上げると、歪で不完全な魔法陣から魔術が放たれた。
「なっ」
「フィルスーーーー」
大きな爆発が起き、煙が広がる。
ステファニーは直ぐに立ち上がって走り出した。煙の中、ステファニーは息も絶え絶えの魔獣の頭を拳で叩き割った。血と蒸発していく銀色の液体が飛び散る。ステファニーは顔を上げてフィルスを探した。
煙が完全に散ると、淡い青色に輝く薄い円形の膜に覆われたフィルスが驚いている様子で立っていた。
「何が起きたんだ? オレは……」
「フィルス無事だったんだねって、何これ」
ステファニーは円形の膜を軽く叩いた。
「それは精霊術よ、精霊の障壁って言うわ」
六つの水の精霊がアメリアにまとわりついている。アメリアはその一つを優しく撫でながら近づいてくる。
「そのうちあなたたちも使えるようになるわ。それにしても、良く魔獣を倒し……」
「はっきり言って全然ダメダメだ、お前ら!」
アメリアの話を遮ってエイダンが普段と違う厳しい口調で言った。
「言い方ってのがあるでしょ、エイダン」
「いや、はっきり言わないとダメな時もあるだろ。まずはフィルス、何油断しているんだ! アメリアが助けなきゃ死んでたぞ。魔獣の微かな息遣いがあったこと気づいていただろ、とどめを刺せ」
「ちっ、うっせぇな」
フィルスは痛いところをつかれて悪態をつく。
「キアラ、お前もだ! 戦闘中は敵から目を離すな、はしゃぐな!」
「はい……ごめんなさい」
「ステファニー、お前が一撃で魔獣を殺してればこんな事にならずに済んだんだ。もっと気功術を鍛えろ!」
「うぐっ、剣さえ……両親から貰った剣さえあれば一撃で首を斬り落とせてたわ!」
「甘ったれたことを言うな! 鍛え上げた体と気功術があれば、手刀は剣よりも強くなるんだ」
エイダンが右手を手刀にして横に振ると、少し離れた岩が切断された。ステファニーは目を見張り、何も言えなくなってしまった。
「ブレイン、模擬戦はできるようになっただろ。実戦もそう変わらん! 気合入れろ」
「……」
「エイダン! 言いすぎよ、まったくもう。皆、初陣にしては良くやったわ。本当よ。ステファニーちゃんは魔獣をよく見て魔術を避けてたし、キアラちゃんの一撃は凄かったわ。フィルス君も以前より気功術を使いこなせていて偉いわ。ブレイン君、あなたはゆっくりと自分に向き合っていけばいいわ。大丈夫よ、そのために私たちがいるんだから」
「アメリア先生」
ブレインは泣き出しそうな顔でアメリアを見つめる。
「危ないと思ったらさっきみたいに手助けするし、ちょっとした怪我ならステファニーちゃんが治してくれるわ」
その言葉にフィルスとブレインが条件反射のようにビクッと震えた。
「ちゃ〜んと治してあげるからね、ふ・た・り・と・も」
二人はそっぽを向いてニヤついているステファニーを見ないようにした。
「バカなことしてないで魔獣の死体の処理をするぞ」
全員が魔獣の死体のもとに集まり、エイダンが小さなナイフで魔獣を解体していく。体内に溜まった銀色の液体が空気に触れて蒸発していく様子は、ステファニーには魔獣の体から魂が抜けていくように見えた。
「魔獣の死体はな、放ったらかしにしてると他の魔獣が食いに来る。いわゆる共食いってやつだ。血に混じった銀色の液体が魔の力って言われててな、魔獣は共食いすればするほど強くなるんだよ。普通は死体を焼いて処分するんだが、今回はお前らに魔獣の構造を見てもらおうと思ってな」
エイダンは魔獣の内蔵を掻き出して、皆に見せた。
「まぁ、見りゃわかるが動物と変わらないんだよ。違いがあるのは……ほれ、この赤銅色の骨を見てみろ。これが魔骨だ」
エイダンは魔獣の肋骨を掴んで剥ぎ取った。
「魔骨は鉄のように硬いんだが、あまり需要がないんだ。魔の力が混ざっているせいか、精霊の力を流せなくてな。ここまでで分からないことはあるか、無ければさっさと燃やしてしまうが」
「エイダン先生、魔獣って食べれないの? 見た感じ食べれそうだけど」
ステファニーが質問すると、エイダンは大笑いし始めた。
「あははははははははは! 食い意地張ってんな。ちょっと食べてみるか?」
「やめなさい! エイダン何考えてるの?」
「すまんすまん。あまりにも面白いこというからさ」
「まったくもう。ステファニーちゃん、魔獣のお肉は不味くてお腹壊してしまうの。だから、絶対に食べちゃだめよ」
「は〜い、残念」
「アメリア、すまんが魔獣を燃やしてくれないか」
軽くため息をついたアメリアは火の精霊術で魔獣の死体を燃やした。魔獣の死体を覆う円形の炎は凄まじい火力で、そこまで時間もかからず全てを灰にした。
「アメリア先生は水の精霊に愛されたんですよね、なのにこの威力……凄いです」
「あら、そんなこと言ってくれるなんて嬉しいわ。でもブレイン君なら数年でこれ以上のこと出来るようになるわよ」
「そうだぞ。だが、強くなるためには日々の鍛錬が必要だ! 今日中に魔獣十匹は狩るぞ」
エイダンの指示のもと、ステファニーたちは一日で十六匹の魔獣を殺した。最後の方はブレインも精霊術を少し使って戦闘に参加していた。若干ではあるが、ブレインは自分のトラウマに少しずつ向き合っていた。




