5話 ヤベぇ女、三人目!! 何人、サイコパス出てくんの?!
5話 ヤベぇ女、三人目!! 何人、サイコパス出てくんの?!
色々と悩みはしたが、
『無視するほうが怖そうだから、とりあえず、行くだけ行ってみようか、タルいなぁ。二秒以内に、地球、終わればいいのに』
と『勇気ある決断』をした才藤は、
放課後、指定された場所へと足を運んだ。
夕焼けが照らす多目的室のドアをあけると、
「……ん」
「……ぇ」
そこでは、一人の美少女が机に腰掛けてスマホをイジっていた。
才藤は、彼女の容姿を見て、これほど、妖精や天使等の幻想的な比喩が『似つかわしくない』美少女は珍しいと思った。
(おぉ……こいつは、しんどい女だな。前髪パッツンの銀髪に、プラチナアイズとか、攻めすぎだろ。メイクも服装も、なんつーか、妙に仕上がりすぎていて、逆にキモい)
時代に適合し尽した完璧なメイク。
流行の半歩先を行く百二十点のファッション。
金の匂いをギリギリ感じさせないラインの、しかし仄かな高貴さを漂わせる装飾物。
美しさを『力づくで平服』させているような、
過剰といっても過言ではないほど時代に合致しすぎた、
『完璧』をやりすぎている美少女。
――その『人間味を失ったような美少女』は、
五秒ほどかけて、
才籐を観察すると、
「あんた、誰?」
ナチュラルミディの銀髪をかきあげながら、そう言った。
凍てつく瞳と、斬るような口調。
――瞬時に理解。
彼女は、才藤に対して何の興味も抱いていない。
(なんだ、この女……態度、悪ぅ……)
純粋にイラっとした才藤は、
だから、ほんの僅かな抵抗として、
常識という名の脆い武器を片手に口を開く。
「人に名前を尋ねる時は、まず――」
「誰かって聞いてんだけど」
銀に輝く三白眼で睨まれて、才籐は思わず息をのむ。
(そんな、ハラペコのサーベルタイガーみたいな顔で睨まんでも良かですやん)
結果、素直。
「……才籐零児です。一年です。はじめまして」
「バカ? この学校の制服、ネクタイ見れば学年わかるんですけど? バカ?」
どうでもよさそうにそう言うと、
その美少女は、才藤という存在そのものを意識から完全に消し去って、
文明の利器に集中しなおした。
どうしたものかと少しだけ悩んだが、
「いや、あの」
別に毛ほども知りたくはなかったが、
名乗らされるだけというのが癪に触ったので、
「そっちは?」
尋ねると、美少女は目を丸くして、
「は? あたしを知らない? ウソでしょ?」
「いや、普通に知らんけど」
「……ふーん、なるほどね。そういうタイプか」
「はい?」
「あれでしょ? 『自分、テレビ見ないんで、有名人とか知りません』ってヤツでしょ。いるのよねぇ、肥大化した自意識の操り人形になっている痛いバカ」
「俺のテレビを見る頻度は普通だと思う。なに、あんた、テレビに出ている人?」
「一言でもそんな事言った?」
(うわぁあああ! こいつ、うざぁぁぁい!)
「あたしは酒神華日。ここまで言えば、流石に、もう分かるわね?」
(酒神ぃ? どっかで聞いたことあるような……あ、今朝か。クラスの死んだ方がいいアホ共が、なんか言っていたな。ん……でも、詳細は忘れたな。なんつってたっけ?)
「なに、その顔。もしかして、本当に知らないんじゃないでしょうね。嘘でしょ。なんなの、あんた。情報に触れると死ぬ病気にでもかかっているの? もしかして、原始人? タールなの? ピテクスなの?」
「所持している端末のOSを常に最新バージョンにしている知的生命体を仮に原始人だと定義するのなら、そう呼ばれても仕方がないとは思うが、しかしだな――」
「もういいわ。だいたい分かったから。ようするに、スマホさえ持っていればそれで神になれると信じている愚かな類人猿ってことでしょ」
「それは、類人猿ではなく、ただの、危ない薬をやっている人だ」