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50話 全力疾走。


 50話 全力疾走。


 指示を出し終えると、

 才藤は、


「酒神華日! 右手の壁に向かって走れ!」


 酒神に呼びかけながら、

 ダっとその場から駆け出し、


「お前の役目が一番重要だ! 俺が8階への階段を下りるのを、回避タンクとして援護しろ! お前がエアダンスをやり続ければ、ヤツの攻撃は必ずそっちに向かう!」


 喉をからしながら、

 才藤は、


(当然! 『必ず』じゃねぇ! ここでの確率は、3割がいい所……だが、可能性はある! 頼む、頼む、頼む! 通ってくれ!!)


 扉を守っているセイバーの元へ、猛然とダッシュする。

 その無謀な背中を見た銃崎たちは、

 一瞬だけ、戸惑いをみせたが、



「《ダークブレイク・ランクD!!》」



 即座に、聖堂が、才藤の指示通りに行動を開始したのに触発されて、



「……ちぃっ! 《ドラゴンフィールド展開》!!」



 苦々しい顔はしているものの、

 ドラゴンランスを地面につきつけて、

 指示通りに行動を開始した。


 ――羽金も怪津も、納得をしている表情ではないが、

 この状況をどうにかできる方法など思いつかないので、

 考えるのをやめ、才藤の指示通りに動いた。


 思考放棄した訳ではない。

 けっして、そうではないのだが、

 しかし、自ら死地へと飛び込んでいった男の背中と言葉には、妙な説得力があった。

 それだけは事実だった。



(最初の関門はクリア! あいつらが俺の指示に従わなければ、そもそも確率もクソもなかったからなぁ!)



 才藤は、全力で駆ける。

 ほんのわずかなミスで死んでしまうという、

 このクッソとんでもない状況下でも、

 才藤の心は落ち着いたものだった。


 覚悟がきまると、

 心は、こんなにも軽い。


(最終的な成功確率は、マジで、泣きたくなるほど低い。だが、突破出来れば、可能性はある。……失敗したら? ――死ぬ。それだけの話。簡単でいいじゃねぇか!!)


 セイバーリッチ・シャドーは、

 自分に向かって走っている才藤に剣先を向けた。



[独ひとりで突っ込んでくるとは、愚か]



 《聖なる死の煌めき・ランクSS》を使おうとしたセイバーだったが、

 視界の隅で、華日が踊っているのが見えたため――



[ちっ。そこの貴様、クルクルと、鬱陶しいぞ!]



 そちらに向かって攻撃を放った。


 所詮はAI。

 定められたルール(本能)には抗えない。


 そのスキをついて、才藤は、

 サっと、足元に落ちていた『緑色に輝く護符』を拾い、

 そのままの流れで、堂々と、セイバーの横を駆け抜けて、

 地下8階へと続く階段へと飛び込んだ。



(よっしゃぁあああああ! 突破ぁあ! しょせんは、ゲームキャラだな、はっはぁ!! さらに、守護天使の護符も無事ゲットォオ! 第二関門クリアぁ! あとはぁ!)



 生命力バリアに全てを委ね、

 ゴロンゴロンと階段を転がり落ちていく。


 痛みはない。

 だが、ゴリゴリと削られたのを感じた。


 防御力が低すぎるので、階段から落ちるだけでも生命力バリアに大きなダメージを負ってしまう。


 ほぼ瀕死になったが、そんなことはどうでもいい。

 才藤は、即座に起き上がり、駆け出した。


 全力疾走。

 探究者になったことで、体力も多少は上がっているが、

 それでもカバーできないほど全力で駆けているため、息が切れる。


 喉が痛い。

 激痛がこみ上げてくる。

 それでも走る。

 走る。

 全力で走る。


 殺意が限界点に達しているセイバーが相手だと、

 銃崎たちが稼げる時間は3分が限界。


 休んでいる時間など無い。

 足を止めている余裕などない。



 ――長い廊下を駆け抜けた所で、広い回遊式庭園に出た。



 その中央には、立派な武家屋敷。

 才藤は、足を止めることなく、

 池を飛び越え、障子に向かって飛び込む。


 ダイナミックおじゃまします。


 すぐさま二階へと駆け上がり、

 書斎を見つけると、

 ふすまを蹴破り、中へと突入。



「酒神終理が見つけていたらアウトだな」



 そう呟きながら、奥に設置されている古めかしい金庫のダイアルをカチカチとまわす。


 73桁という、頭おかしいダイアル。


 本来ならば、地下八階を数百時間以上探索し、

 ダイアルナンバーを入手しなければいけないのだが、

 この迷宮のクリエイターは、当然、最初から解を知っている。


 おまけに、ここの仕様は、エレベーターとは違い、

 フラグをたてる必要がない。


「頼む……頼むぞぉ……」


 金庫を開くと、そこには――



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― 新着の感想 ―
[一言] 罠が仕掛けられていそうな気がしますね。 終理は、見つけた上で罠を仕掛けて また鍵をかけた、とかな気がします。何せ、 彼女はとんでもない天才ですから。 いよいよ、ここから才藤が中心人物とな…
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