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45話 レイントラッパー。


 45話 レイントラッパー。


 才藤の制止などシカトして、上級生三人はレイントラッパーに向かって突撃していく。

 気付けばナチュラルに才藤の背中をさすっていた聖堂が、


「おい、クズ、どうした? 色々と、どうした?」


「聖堂、酒神……あいつらを止めろ……あれは虹色じゃない……」


「あ? どういう――」


「くっ……くそっ……説明している時間はないっ、つぅか、説明できねぇ!」


 仕方なく、才藤は、ブラスターを片手に三人の元へと駆け出す。

 喉が死ぬほど熱く、頭もガンガンしているし、体も鉛のように重い。


 だが、このまま放っておくわけにはいかない。


 今、まさに、

 レイントラッパーにトドメをささんとしている三人に、

 才藤は、ブラスターの銃口を向けて、




「動くな、てめぇら!!」




 声を荒げてそう宣言すると、

 三人は振り返って、


「……どういうつもりだ、才藤」


「動くなっつってんだ……そいつを殺すな……」


「……理由は? 聞かなくても分かるが」


(聞かなくても分かる? ……ぁ、ああ、なるほど。俺が、虹色を横取りしようとしていると思ってんのか。……ぶははっ、好都合の勘違いだぜっ)


 『先ほどの件』のせいで、

 銃崎は、才藤に対して、過剰に不信感を抱いている。


 不信感は嫌悪感を呼び、

 嫌悪感は疑心暗鬼を呼ぶ。


「邪魔をするな、才藤。これ以上、君の自己中に付き合ってやれる余裕はない」


「うっせぇよ……とにかく、虹色に手は出すな。そいつは俺の獲物だ。――ここで生きのこるには力が必要だってことが、よくわかった。俺は俺の命だけが可愛い。というわけで、強力なアイテムは全て俺の手元に置かせてもらう。反論はみとめねぇ」


「本当に、君は最低だな。嫌われすぎて、海星中学から追い出されたという話を、私は、どこかマユツバものだと思っていたのだが……今は、さもありなんと思える。君のような性格では追放されても仕方がない。君の性根は本当に下劣だ」


「光栄な評価だねぇ! 涙が出るほど嬉しいぜぇ! ――まあ、それはともかく、虹色を殺すな。俺の虹色を殺したら殺す!! ハッタリじゃねぇぞ! マジで殺すからな!」


「出来ると思うか? たかがDランクの村人風情が、私たちのような高ランクの上級職を殺せると本気で思うか?」


「出来るか出来ないかなんざ、どうでもいい。現状だと、やるしかねぇんだよ」


「美しい言葉だな。口にしているのが君でさえなければの話だが」


 才藤を無視して、いざ虹色を貫かんと、ドラゴンランスを構える銃崎。

 その光景を見て、才藤の頭が沸騰する。


(ダメだ! ヤバい! くっ……こうなったら……っ!!)


 気付いた時、才藤は、その銃口をレイントラッパーに向けていた。


 極限の集中力が、

 この距離でも、正確に敵を捉える。


(……っ……)


 ――いつでも、レイントラッパーを殺せると理解した瞬間、

 魂の叫びが、才藤の心をついた。



 ――やめろ、レイントラッパーを殺すと、

  『道連れ』のワナが発動する可能性だってあるんだぞ―― 



 心がわめいた。

 『引き金をひくな』『やめろ』と全身が悲鳴を上げている。



 最高位のワナ『道連れ』は、文字通り、

 『レイントラッパーを殺した者を道連れにする』という、

 絶対に死んでしまう最悪の即死罠。



 ――最悪の場合、死ぬんだぞ。

   たのむ、やめろ、やめてくれ――



 生存本能が大合唱している。



 ――やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ――



 才藤を構成するすべてが、

 才藤の行動を止めようと必死に喚く。


 だが、しかし、才藤は、

 魂の声に背を向けて、




「ちくしょぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」




 迷いを断ち切って、引き金を引いた。


 その結果――



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― 新着の感想 ―
[一言] (バカか……落ちつけ。出て行ったって、死体が三つになるだけだ。もし、シグレを哀れに思うってんなら、ここは退いて、あとで、あのホルスドとかいうムキムキ野郎に代償を払わせてやればいい。俺はこれか…
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