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42話 ワナワナボックス。


 42話 ワナワナボックス。


 ブラスターを装備しながら、

 周囲を見回しつつ、


(百年も探索していた割には『集まっている情報』が少なすぎる。虹色も『やみくもにザコを倒すんじゃなく、手順通りにモンスターを倒せば、多少の時間はかかるけど、確定で出現させられる』んだが……そのくらい、百年もあれば解明でき……いや、うーん……やっぱり、銃崎の言うとおり、いろいろと、難しくしすぎたのかなぁ? でも、しゃーねぇじゃん……調整とかデバッグとかやらせてもらってねぇんだもん……)


 と、その時、


「……おっ」


 全員が気付く。

 壁からレバーが飛び出ていた。

 最初に羽金が近づき、ジロジロと見回してから、


「こんなの、前にボクらだけで探索した時はなかったよね?」

「ああ、確実になかった。時間経過によるトラップの再配置だな」

「で、どうしますの、銃崎先輩」


 先輩たち三人がレバーを凝視して議論をしている。

 その光景を見て、

 聖堂が、


「こんなあからさまなワナを前に、何を悩んでいる?」


 その問いに対し、

 羽金がニコっと微笑んで、


「確率的には、五分五分なんだよねぇ。ワナの可能性と、宝箱が出現する可能性。これまで、何度か、この手のワナ臭い仕掛けを発動させた事によって、アイテムを入手しているんだよね。さっき、才藤くんに渡したブラスターとかも、そうらしいよ」


「この階層は、既に探索しつくしていますわ。もう安全な宝箱は皆無でしょう。わたくしは、どんどんトラップを踏んでいくべきではないかと考えますわ。たとえ、モンスター召喚系のトラップだったとしても、今のわたくしたちならば楽勝でしょうし」


「そうだな。では、全員、警戒態勢に入れ。――新入生各員。何が起きても、慌てず、冷静に、近くにいる上級生の指示を仰ぐこと。いいな?」


 新入生3人が頷いたのを確認して、

 銃崎はガチャっとレバーを引いた。


 すると、全員の体が光に包まれた。

 ――その直後、一瞬で、その場から姿が掻き消える。



 気付いた時には、6人とも、

 石の壁で囲まれた空間に閉じ込められていた。


「……ちっ。何もない。ただのワナか」

「転移系ですわね。閉じ込められてしまいましたわ」


 そこで、聖堂が、

 石の壁をとんとんと拳で叩きながら、


「こういう場合はどうする?」


「転移系は、私たちも実体験するのは初めてのパターンだが、先輩達の記録によると、こういう場合、基本的には、『何か』をすれば、道が開く」


「何かとは?」


「脱出方法は完全にランダムらしいから、ハッキリとは言えない」


「ちっ……鬱陶しい」


「とりあえず、いろいろとやってみるしかないな」


 銃崎の発言をきっかけに、各々、脱出の方法を探し始めた探究者たち。


 その光景を見ながら、

 才藤は、


(このパターンは、時間経過だな。二十分ほどで勝手に出られる。……まあ、もうひとつ、脱出方法があって、そっちは『すぐに出られるけど、かなりの貫通ダメージを負ってしまう』から、選択すべきじゃない。『脱出方法に気づいてはいけない』っていう、ちょっとひねったワナ……まあ、後者の方は、自力で気づくのは厳しい条件だから、後者の方法に気づいて無駄にケガをするってことはないだろう)


 脱出方法を探すフリをしながら時間を潰していると、

 才藤は、羽金の変化に気づく。


 縮こまってプルプルと震えている羽金。


「あれ……あの、どしたんすか、羽金さん」


 声をかけると、



「ぼ、ボク……狭い所……む、無理……」




「はぁ?」


「ん、どうした、才藤……ん、羽金?! どうした?!」


「こ、こういうところ……だめ……苦しい……」


「まさか、閉所恐怖……いやいや、羽金。一年の時からずっと、私と共に、この息苦しい地下迷宮を探索してきたじゃないか?」


「完全な密閉空間でなければ大丈夫……でも……こういう……」


 脂汗をダラダラと流しながら震えている羽金。

 容体はどんどん悪化している。


 時間の経過に伴い、単純な自律神経症状だけではなく、


「う……うぐっ……」


 内包されている魔力が漏れ出て、

 全身を締め付けだした。


「ひゅー……ひゅー……」


 顔が、みるみる青くなっていく。




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― 新着の感想 ―
[一言] そういえば、『ハッカー職で得たデータとして』 今まで終理が地下迷宮研究の他のメンバーに 広めなかったのは、よほど高潔な存在でない限り 世界の改変の権利は「恐ろし災禍を生む」から しなかったん…
[一言] 後者の方を選ぶしか無くなった感じですかね。 ワナワナボックスというと、センがウムルを 拷問したときに発動した、教室サイズの空間に 移動する空間魔法ですよね。確か、電動ノコギリの ようなも…
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