41話 剣翼はスゴいらしい、知らんけど。
41話 剣翼はスゴいらしい、知らんけど。
聖堂は、雑に、華日の手を振り払い、
そのまま銃崎を睨んで、
「銃崎。質問の答えがまだ返ってきていないのだが?」
「あ、ああ、そうだな。すまない」
背後では、華日がぐしぐしと両目を拭っている。
誰もが、当然のように、気付かないフリをしている。
「……確か、さっき君が聞いてきたのは、『なぜ、ザコがアイテムをドロップしないのか』だったな。ザコは滅多にアイテムをドロップしないし、落としたとしてもクズアイテムばかり。有効なアイテムは基本的に宝箱から入手する。それが基本だと思ってくれ」
「では、なぜ、片っぱしからモンスターを狩っている? 無駄ではないか」
「迷宮内には時折『虹色』と呼ばれている『S級以上のアイテムを確定で落としてくれるレアモンスター』が沸くことがあるのだが、虹色は、ザコモンスターを狩れば狩るほど出現しやすくなるらしいのだ。まあ、ザコを山ほど倒しても、なかなか虹色とは出会えないのだがな。記録によれば、最後に狩ったのは五年前だ」
「五年に一回……ふざけた出現率だな。この迷宮を探索してきた期間はおよそ百年という話だから、これまでに二十匹程度しか狩っていないという事か」
銃崎たちの会話を聞き流しながら、
最後尾を歩いている才藤は、心の中で、
(百年……これに、最も引っかかっている。俺がこの迷宮を設計し始めたのは数年前。それより以前に存在するはずがない。時系列がメチャクチャだ。そういえば、俺に迷宮の設計を委ねてきた、あの『電波女』、時間について、何かを言っていたような、時間は『今』しかないとか何とか……クソっ、頭の中に妙な霧がかかっていやがる。完全には思い出せない。酒神終理に、俺が『真理の迷宮』の設計者だと伝えられたのは、あいつが自力で『それ』に勘付いていたからだというのは理解できた。あのバカ女との会話で、この謎状況について分かってきた事は多い。……だが、まだまだ、謎が多すぎる)
――と、才藤が悶々と悩んでいると、
そこで、銃崎が、
「ちなみに言っておくと、探索の最大目的は、『剣翼』の入手だ。いまだ、一つも入手できていないから、どんなものかすら分かっていないのだが、石版などに書かれている伝説によると、他とは比べ物にならない最強兵器らしい。剣翼さえあれば、サヴァーテも楽勝だろう」
「それは、どうすれば手に入る?」
「サッパリ分からない。だが、石版に書かれている以上、確実に存在はしている。ヒントの石板がウソをついたことはない。どうにかして入手したいのだが……本当にサッパリなのだ。これは、ずっと思っている本音なのだが……この迷宮は不親切すぎる」
(うっせぇなぁ、そもそも他人と遊ぶ事なんて想定していないんだから、仕方ねぇだろ。あと、七階までに剣翼は存在しねぇっての。剣翼を使っちまうと、サヴァーテなんか余裕だからな。最強すぎる『英雄の剣翼』に関してはチートすぎると思ったから、データだけは設定したものの、手に入れる方法すら、そもそも設定しなかった。手に入れられる剣翼の内の一つ『閃光の剣翼』は酒神が持っているから、残りは『白銀の剣翼』だけ。……いや、もしかしたら、あのイカれた女、閃光だけじゃなく、白銀も入手しているのか? ちゃんと聞いておけばよかったなぁ)
ゲーム設定について考えていると、
そこで、銃崎が、
「そうそう。忘れていた。――才藤」
「ぇ、はい、なんすか?」
「これを渡しておく。もしものときは、これで自衛してくれ」
受け取ったのは、全長五十センチほどの銃器。
銃口は直径十センチほど。
百円ショップで売っていそうな、子供のオモチャっぽい銃器。
重量は五百グラム程度で非常に軽い。
「LBブラスターという銃だ。非常に強力ではあるものの、一発撃つと五分以上の長時間リロードが必要な上、使用者はリロード中、全てのスキルが使えなくなるという厄介なペナルティがついている諸刃の剣……だが、スキルが使えないに等しい君なら、ペナルティを恐れる事なく使えるだろう」
「……ぁあ、どうも」
受け取ったブラスターの感触を確かめながら、
(これ、実は、デメリットなしのレーザーブレードとしても使えるんだけど……というか、そっちがメインの使い方で、エネルギーを圧縮して撃ちだすのは最後の手段なんだけど……どうやら、正しい使い方は知らないみたいだな……)




